第64話 おいしい誘惑

 さて、私の方にもレベルアップによる特別な、何かが入荷しているかな?


「紙と鉛筆と消しゴム! お絵描き好きは紙の高さが辛かったから、オタク的にこれは嬉しい!」

「いいじゃん! おめでとうカナデっち!」

「手紙にも使えるから良かったな!」

「うん!」


「あ! 俺の方はトイレットペーパーとティッシュだ!」


 何ですって!?

 おお神よ!! 感謝します!



「買える限界まで買って!」

「おう!」

「やったね! 文明人として葉っぱで拭くのは辛いもんね!」



「あ!」

「何だ、どうしたカナデ?」

「何と肉まんが安い!」



「食べたい!」

「食いたい! 俺のショップの方に……蒸し器……あ! 

フライパンでできるフタみたいな形のやつが1700円くらいである! 

これ買うから、肉まん買ってくれ!」


「分かった、買うわ! あ! サツマイモも安い!」

「それも食べたい」

「サヤも。落ち葉集めて焼き芋しようよ」

「うん、じゃあこっちも買うね」



 *


 早速届いた商品をチェック。

 どうやらステンレス製だ。



「フライパン用蒸し調理プレートかあ、これお手軽で嵩張らなくていいね」

「へー、サヤは日本じゃマグカップの上に乗せて、マグの中には1センチくらいの水入れてレンチンで肉まん食べてたよ」


「マグカップとレンチンで……紗耶香ちゃん、賢いね。

うちには普通にセイロがあったけど、出すのに決心がいる大きさだった」


「サヤのアイデアじゃなくて、友達の家で教えてもらったやり方だよ。ちな、下の紙剥がさずレンチンだよ」

「まあこっちレンジ無いから試せないけど……」



 オーブンはあるんだけどね。



「ああ、ちょっと残念だが、プレート買えたし、まあいいか」


 早速ゲットしたばかりの蒸し調理プレートとフライパンを使って、コウタが肉まんを四人分作った。

 被せていた蓋を取るとめっちゃ美味しそうに湯気が立つ。



「ふっくらほかほか! やっぱ肉まん美味しーよね〜〜」

「コータと紗耶香ちゃんはピザマンとあんまんと肉まん、どれが一番好き?

私は肉まん」

「俺も肉まん」


「うーん、どれも好きで選ぶの難しいけどぉ、やっぱ肉まんかな」

「皆肉まんか。ライ君、どう? それ美味しい?」

「ハイ、外側は柔らかくて中のお肉も美味しいデス」


「焼き芋は明日のお楽しみにしよ」

「なんなら森で落ち葉集めて焼く? あ、

でも敵に見つかるか」


「逆に考えるんだ、誘きだす」

「ええ、マジデ?」

「凄い緊張感で焼き芋を食べる事になるよ」

「探す手間が省ける」



 ずいぶん強気だ。

 せめてラルフさんかリックさんがいる時ならいいけど。

 まあライ君がいるから前よりはマシかもだけど。


 大丈夫かな?

 


 ちょっと心配になりつつも、女子組は翌日市場に仕事に行った。


 レースをいい値段で売りたいから、リックさんを待つけど、来るかな?

 来ない場合は直接ソフィアナお嬢様の所に行く。


 しばらくしたらリックさんが来てくれた。

 串焼きとハンバーガーを売って、レースの事を相談した。

 

「たまたまとっても綺麗なレースを入手したので、貴族のお嬢様に買っていただきたくて、継続入荷は無理ですけど、本当に素敵なんで」


「へえ、レースか、男の俺にはよく分からないし、直接ソフィアナ様のとこに行ったらどうだ?

鳩を使って手紙だけ出しておく。貴族ってのは会うのに通常は予約がいるからな」


 鳩だって! レトロ可愛い通信手段!


「分かりました。じゃあお願いします」

「ねー、リックさん、鳩持ってるんですかぁ?」


 紗耶香ちゃんが興味深々だ。


「ギルド所属の魔法師が使ってる優秀な鳩なんだ。これからギルドに寄るし、ちょうどいい」

「へー、ギルドってお抱え伝書鳩がいるんだ。面白〜〜」


「じゃあ。またソフィアナ様から連絡きたら折り返す、鳩がそっちに行くかもしれん」

「わー鳩が来るんだ!? 楽しみ!」


 紗耶香ちゃんが喜んでる。私も伝書鳩なんて初なので何気に楽しみ!


「鳩が手紙届けに来るなんて可愛いし、なんか嬉しいね」


 私もつい、ウキウキしながらそう言ったんだけど、


「鳩に期待してるなら、俺が直接知らせに来たらガッカリしそうだな?」


 あらら。


「え!? そんな事ないですよ! 

今度の森行き修行もラルフさんかリックさんが予定がつくなら、一緒に来て欲しいですし、その時は焼き芋食いつつ敵を誘き寄せようかとか思っていたんで〜」


 私はフォローを入れておいた。


「焼き芋?」

「ええ、甘くて美味しい芋です」

「それは……気になるな。甘くて美味しい芋か……」

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