第60話 次のステップ

 猪鍋を四人でいただいた。

 味噌を使う事で獣臭さは和らいで、美味しくなった。

 残りの肉を店で出して、しばらく休業するとお知らせを出した。



 修行の為だ。


 * *


 そして修行の日、四人で森に来た。


「いいか、まずライと俺が出て来た魔物にダメージを与えるから、トドメを刺せば、その人に一番ボーナス経験値が入るみたいで、安全にレベル上げ出来る」


「え? ライ君は美味しいとこ持ってかれているって事?」

「急いで強くなる必要があるんだよ、多少ズルくても仕方ない」

「ごめんねえ、ライ君、今度ケーキ食べさせてあげるからね」

「よし、よし」


 ライ君の頭を撫でる紗耶香ちゃん。


「俺ハ、大丈夫デス」



 そんな話をしていたら、急に! 猪が突進して来た!


 ライ君がショートソードで両足をズバッと斬り上げた!

 ズザザッとつんのめって地面に倒れ込む猪! 


「今だ! 武器で首を狙え! 振り下ろせ!」

「南無三!!」


 ザクッ!! 私は思い切り、首に斧を振り下ろした。


「カナデ! まだ浅い!」

「ごめんなさい!!」



 再び斧を降り下ろした。斧の重も乗って今度はしっかりと致命傷。



「一撃でやらないと、逆に苦しませるぞ」

「はい……」


「じゃあ、次は水木さんがトドメ刺すんだよ」

「おけ」


 ピロリロリン!


「あ、私、レベルアップ音聞こえた!」


『鑑定眼』


 コウタが鑑定眼で私の能力が上がったのを鑑定眼で見た。


「筋力、攻撃力アップ、素早さも上がったな、おめでとう、カナデ」

「よし!」


 紗耶香ちゃんは槍を装備した。


 そこで、ふいにガサガサと茂みから音がして、全員警戒体制に入った。

 黒くてでかいのが出現!


「ひっ!」

「きゃあ──っ!!」


 紗耶香ちゃんは装備していた槍を反射的に投げた。と言うか、思い切り投げつけた。

 突如現れたのは大きな蜘蛛だった!

 その蜘蛛の魔物に、槍投げ!


 偶然なのか、槍の先端は見事に、頭部、蜘蛛の急所に刺さった。

 蜘蛛は槍の刺さった頭から青い血を吹き出している。


「キモいいいいいいい!! 嫌あああああッ!」



 紗耶香ちゃんはあまりのキモさに絶叫してるけど! ちゃんと倒せている!



「紗耶香ちゃん! お見事!」

「水木さん! 蜘蛛倒してる!」

「サヤ様、落チ着イテ……」



 あれ、ライ君、私達の事は様付きで呼ぶんだ。普段無口だから今、気がついた。



「ああっ! 本当だ! ピロリンて! レベルアップしたっぽい!」



 ライ君が蜘蛛に刺さったままの槍を引き抜いて来た。



『鑑定眼!』

「あれ? 水木さん、凄い! 仲間のステータスを増幅するってスキルが増えてるよ!」



 コウタが紗耶香ちゃんの鑑定をしたら、そんな結果が。



「マ!? それって結構仲間の役に立つやつじゃん!」

「助かる〜〜! 紗耶香ちゃんのマジ天使のスキルでは!?」

「あはは、役に立つなら良かった!」


「あの、次は、どなたの番ですか?」


 ライ君が回収した槍を誰に渡すか悩んでいるようだ。

 


「じゃあ、もう一回カナデ、行くか?」

「うん。蜘蛛じゃないといいけど……巨大蜘蛛は私も怖キモいから」



 私が槍を受け取った。

 これはナタより長くて獲物から距離を取れる。



 次に現れたのは、骨だった。


「アンデッド!!」

「嘘おおおお!?」


 ライ君の言葉に私は思わず叫んだ。

 初心者相手になんて容赦ない敵が来るのよ!? 

 普通スライムとかからでしょ!? 可愛げのカケラも無い!


 ライ君が素早く動いて、ショートソードで理科室の骨格標本のような動く骨の足に攻撃! 

 倒れる骨!

 

「彷徨う骨えええええ!? 嫌ーーっ! 来ないで! 成仏して!

神様ああああああっ!」

「きゃああああ!!」



 涙目で錯乱しつつ、絶叫する私と紗耶香ちゃん。


 私は槍先を骨に向けたまま、ぶんぶんと振り回していた。

 でも敵は槍先が届く距離では無い。

 骨は5メートルは先にいる。



「成仏して!! 南無阿弥陀仏!」



 私がそう叫ぶと槍先から謎の光が伸びてビームのように骨に突き刺さった!



「え!?」

「骨が……崩れていく!!」

「こ、これは……み、ミホトケパワー?」

「知らん、カナデ、お前、僧侶系だったのか?」


 ピロリロリン! 脳内に嬉しい音が響いた。



「あ、またレベルアップした!」


「カナデっち! 鑑定したらクレリックのジョブついた! 凄い!」

「ええ!?」

「カナデ! 南無阿弥陀仏って祈ればクレリックのジョブつくのか!?」

「知らない!」


 森の中でぎゃあぎゃあと大騒ぎする私達。


「アノ、アマリ騒ぐと、敵に見つかりマス」



 !!


 ライ君の言葉にハッとなる私達。

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