第31話 色んなお客様
次の売り物を考えるよろず屋のミーティングタイム。
「やっぱりまた串焼きもやらないと、あの味が忘れられない人もいるだろう」
「でもぉ、串刺し作業があるから、またハンバーガーと半々にする?」
「……病気から免疫力を上げる……病気に効く……天然の抗生物質、蜂蜜。
串焼きのタレに蜂蜜多めに入れるか、蜂蜜ケーキ、蜂蜜マフィン……」
健康に良さそうな食材を考えて、ぶつぶつと思考を垂れ流す私。
「あ、カナデっちはまだ病気の人の事を考えてんだね。
深刻な人は医者なり神官の治癒魔法に頼ってると思うよ」
「まあ、それはそうだと思うけどね」
「ともかく、次の胡椒は金貨貰おうな!」
「ああ、胡椒で金貨貰うのが一番楽だね、でもその場合、ガラの悪いのが来ると怖いから、冒険者の人とかの護衛無くても平気かな?」
私は一人一限って言ったのに、しれっと買い占めようとした男を思い出して言った。
「ああ、確かに胡椒で目の色変えてたのがいたな、安全第一でしばらく胡椒は封印するか」
「じゃ、在庫聞かれた時の対策として、たまたま安くちょっとだけ仕入れてましたって顔しとく?
サヤ達は狩人のジョブが増えても、まだそこまで強く無いしィ」
「そうだね、串焼きと蜂蜜のカットケーキで良い? ホールで焼いて、カットして売るとか」
「蜂蜜ケーキくらいなら、こっちにも有りそうで浮かないかもな」
「ポルトガル風にレモンの皮やシナモンパウダーを使っても美味しいと思うよ」
「あ、美味しそ~~スイーツ系良いよね、食べたくなって来た。
でもせっかく買ったきな粉はどうすんの?」
「きな粉と言えば、きな粉揚げパンやおはぎ? 大豆に栄養があるからな、イソフラボン、食物繊維、カルシウム、鉄、タンパク質……が取れるはず」
「サヤ、揚げパンはもう食べて満足したよ。蜂蜜ケーキがいいな」
「いや、水木さん、今考えてるのは売りもんだからね」
「へへへ」
「おはぎなら米だからそこそこ腹にも溜まるだろうね」
「でも一度に出す甘いスイーツ系は一種でよくない?」
「きな粉はまた次に出そう、まだコウモリウイルス騒ぎが怖いから、私は健康の為に蜂蜜料理を使いたい」
「蜂蜜あんまり安くないけど、大量に使う訳じゃないなら大丈夫かな。
焼き鳥のタレに蜂蜜、ニンニク、醤油か麺つゆ、水、酒ってレシピがあるし、ニンニクもパワーありそうだし、良くないか? これに生姜を足しても良い」
「免疫強化素材っぽくて、いいね! 蜂蜜生姜ニンニク!」
「強そうで良い、その免疫強化味の鳥の串焼きと、元の鳥の照り焼き串と、豚バラ串に万能スパイスの味と、蜂蜜ケーキでオケ?」
「じゃあ、串焼き用の串打ちを頑張るか……」
「う、はい……」
「ともかく今から材料を揃える為に買うね、鶏肉と豚肉はこっちでまとめ買いしたのまだ有るよね。レモン、シナモンパウダー、蜂蜜生姜ニンニク、薄力粉、ベーキングパウダー、グラニュー糖、お酒とかを買うよ?」
「りょ」
「ああ、よろしく」
*
本日は晴れたので、お店開店!
「本日健康に良い素材をふんだんに使った、強化タレで焼いた鶏肉の串焼きや、蜂蜜のカットケーキがございます!」
私はお客様の免疫アップのために健康に良いとアピールをした。
「胡椒は!?」
──あ、またあの男だよ。今日も胡椒狙いで朝イチで来たのか。
「先日の雨の日の胡椒はたまたま安く入手したのを雨の日特価として、お出ししただけで、本日はもう売る分はありませんが、串焼きの万能スパイス味に胡椒は多少入っておりますよ。
それともう雨の日営業は基本的に致しません。
途中から雨なった場合も胡椒が出る訳ではありません」
コウタがにこやかな笑顔を崩さずに対応してくれた。
「チッ」
この野郎、舌打ちしやがった……。感じ悪!
「じゃあ万能スパイス味の串焼きを10本くれ」
「ありがとうございます。万能スパイス串焼き10!」
「はい!」
万能スパイス味10本! 串焼きの温め作業に入る。
ケーキはもう見本以外は包んで来てる。
「蜂蜜ケーキ2つと強化タレ?というのを五本ちょうだい」
「かしこまり!」
「全種類、一個ずつくれ」
「俺にも全種類一個ずつ」
「あ! ラウルさんとリックさん! お元気そうでよかった! 全種類一個ずつですね!」
推し来た──!!
「例の雨の日には本当に世話なったな、俺で何か力になれる事があれば言ってくれ」
「じゃあ、あんまり高く無ければ、森に素材採集や狩りに行く時護衛付き添いをお願いするかもしれません」
「ああ、特別に格安にしとくよ。
そっちから美味い飯が出るなら無料でも良い。どうせ森には行くし」
「え!? 本当ですか!? それはお得!」
やったわ!
「あ、ラウル狡いぞ、お前だけ美味しい物を無料で食うつもりか?
俺も飯がつくなら無料で良い!」
「マ!? 凄いお得じゃん、もはやウケる」
「それはとても心強いです、その時はお声かけしますので、どうぞよろしくお願いします」
「やたらと礼儀正しい坊主だな! そこまで畏まらずにゆるくていいぞ」
リックさんは頼りがいの有る兄貴系の雰囲気が有る。
「串焼き上がりました!」
「おう」
コウタは話を聞きつつも、しっかり手は動かしている。
「ん、今日のも全部美味しいな!」
「お母さん、このケーキすごく美味しい!」
「良かったわね」
「うーん、この新しい生姜ニンニク味がすげえ美味しいな」
好評で本日も完売が早そうだった。
「どうも~、ケーキと新しい味の串焼きをそれぞれ2個ずつ下さいな」
あ!! 女性客がうちの商品着てくれてる! 嬉しい!
「わあ! お客様、とってもお似合いです! その口紅と巻きスカート!」
「マジかわたん!」
「ウフフ、今日は晴れたから、下ろして着てみたの。これから恋人にも見せに行くから」
「あざます! あざます! きっとかわたんッって思ってくれますヨ!」
「かわたんはかわいいって意味かしら? ありがとう」
「そうです! そうです! とてもかわいいです!」
私はかわいいの意味だと肯定した。
あ~~やっぱ女性客は癒し系の方が多い気がする。お優しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます