新居



年が明け2008年の正月。健軍東町の新居での生活をスタートさせた隼瀬達。今日は新年の挨拶と新築祝いも兼ねて両親達を招いていた。



「こぎゃん綺麗なキッチンならはあちゃんもご飯作りがいあるね」



「うん、IHだけん温度調節も楽だし。まあたまには冬未と暁美にもしてもらうばってん」



「うん、ほんでこれ祝儀ね」



そう言って、他の皆から隠すように熨斗の付いた袋を隼瀬に渡す亮。



「なん、よかて。それにこの家建てたの暁美なんだけん」



「ばってんあきちゃんもあんた達ん為に建てたっだけん。少ないもんだけんへそくりにどんしときね」



「お義父さん・・・ありがとうございます」



「いえいえ」



隼瀬は自身の両親からもらったものと合わせ、暁美があった方がいいと言って付けた神棚に置いておく事にした。そして、皆でワイワイとお祝いで取った特上寿司を食べる家族。なお、佳代は隼瀬や暁美にとっては他人の自分に2人とその両親が気を使いそうだからと今回来ていない。



「あきちゃんもだいぶお腹大きなったね」



「そらもう来月の18日予定日だけん。一応隼瀬も赤ちゃんの時から見よったばってん、初めてのわが子で女ん子だしおばちゃんも色々教えてね」



「うん、もちろん」



それから親達と暁美は隼瀬と冬未の産まれた時などの事を話して、親達はあまり邪魔しちゃ悪いからと帰っていって、3人で話す夫婦。



「お姉ちゃん、この家建ててくれてありがとう」



「僕からも、ありがとう暁美」



「んねんね、将来とか考えても我が家のあった方がよかしね。2人とも気に入ったごたんね」



「うん、和室もあるし」「そして和室もあるし」



「あんた達若っか世代にしては珍しかよね・・・しゃんむり和室作ってくれ言うたのあんた達だし」



「「だって畳は日本人のその、なんか、アレよ」」



「アレてなんね・・・」



それにしてもこの子達しどろもどろな感じでもぴったり息合うんだなと新たな発見をする暁美である。そして、新居にも少しずつ馴染んできて正月の松も取れて、冬休み明けから卒業までは車で通学する隼瀬と冬未。



「いつも思うけど、なんか隼瀬達の車っておじいちゃんとか乗ってそうよね」



学校の生徒用駐車場に止まる隼瀬達の車を見て、忌憚のない意見を述べる充希である。

ちなみにその車を現実の車でイメージするなら11代目コロナ(コロナプレミオ)の車体を3ナンバーサイズにした感じである。いわばその「The乗用車」みたいなフォルムが隼瀬と冬未のお気に入りなのだ。



「いやいや、あれがよかったい。車の絵描いてて言われた時に描くごたあの形がよかたんねえ、冬未」



「うん、無骨そうと思うどばってん、結構可愛く見える時あるし。みっくんはあんま車に興味ないと?」



「まあ俺は動いて止まって、ライトもウインカーもちゃんとつけばよか、ワイパーも動けばよかって感じよ」



「私は結構冬未達寄りばってん充希がこぎゃん言うけんあの軽にしたつよね」



「「あーね」」



なんか奥さんの意見で本当に欲しい車諦めるパパみたいな事になってんな、逆だけどと心の中で同じ感想を言う隼瀬と冬未であった。















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