あと少し
ここで時系列は飛んで2007年の12月。冬未の就職内定も無事決まり、これを機に彼女と暁美に言われ、隼瀬も高校入学からずっと続けていたバイトをやめ完全に専業主夫となったが、彼もこれは年が明けて2月には暁美の出産が控えているからとの理由で、自身の持っている夢を完全に諦めたわけではなかった。そしてその暁美のだいぶ出てきたお腹をさすって、無事に産まれてくれよと語りかける隼瀬と冬未。
「ほんとねえ、まあ結構お腹蹴られるし元気っぽいけん大丈夫とは思うばってん」
「そぎゃん元気ならなんか冬未に似た子んなるかな」
ちなみに赤ちゃんの性別は結構見間違いもあったりするが、今回に関してははっきりと女の子ですと産科医から告げられている。
「いやいや、あんたとお姉ちゃんの子がなんで私に似るね」
「ははは、たしかに。ばってんずっと一緒におるし赤ちゃんもお腹ん中で僕達の話とか聞きよっどたい」
「だけんて私の遺伝子は物理的に入っとらんとだけん・・・まあほんで2人の子だけんだっごかわいかろね、想像つくわ」
「隼瀬に似ればね」「暁美に似ればね」
「あんた達なほんなこて・・・あー私もはよ隼瀬の子産みたいな」
「うちん会社産休とか育休とか1年目の新人でも取りやすいけん、そろそろあんたも授かってよかっじゃないと、どうせ学校も卒業式な3月1日で後2ヶ月くらいだし」
「そうね・・・なら隼瀬、ちょうどクリスマスくらいがよか日だけんそん時に」
「うん、僕も冬未との子も欲しいけん頑張る」
ちなみに今年のクリスマスは3人がこのアパートで迎える最後のクリスマスである。暁美が将来も見越して実家近く旧健軍町エリアに20年ローン3500万で建てた家に年明けには移り住む事になっており、今月いっぱいで1年半ほど(暁美は1年ちょっと)過ごしたここの部屋とはお別れとなり、この狭い部屋を気に入っていた隼瀬は少し寂しそうだ。
「自分達の家がでくっとは嬉しかばってん、ここも僕気に入っとったけん寂しかね」
「隼瀬が最初に家電とかも付いとるしここにしよて言うたんだんね」
「そう、大家さんもようしてくれたし。僕と2人の関係もここの誰も知っとって言いふらしたりせんで」
「ほんとよか人達よね。私が2人と一緒に住み始めた時も歓迎してくれたし」
「今度住むとこのご近所さんもよか人達だとよかなあ」
「「そうねえ」」
でもそんなよか人達が集まるのは隼瀬と冬未自身もそういう性格だからと、だから今後どこに行っても大丈夫だろうなと思う暁美であった。
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