邂逅



2007年 8月



今年は全国的な酷暑となって、いつも元気な隼瀬と冬未も流石に応えていた。



「「あーあつか〜・・・」」



「あんた達がそぎゃんグデンてなるて今年ん夏はやびゃあね・・・まあ今日な2人ともバイトも休みだけんよかばってん。ちゅうか隼瀬も冬未ちゃんも夏休みの課題した?」



「「そら7月中にバッチリやっとるけん大丈夫」」



「ほう、流石ね。ほんでせっかく私も夏休み入ったて、あんた達どっか行きたいとことかにゃあとね?」



「「じゃあ涼しいとこ」」



「そらまたざっくりね・・・なら菊池の渓谷行く?あそこなんか食べれるとこもあるし」



「「行く行く」」



多少バテていても、やっぱりずっと家にいるのも嫌でそそくさと出かける準備に取りかかる隼瀬と冬未を暁美もまだまだ可愛いなと微笑ましく見つめる。そして、ちょっとしてから準備を終えて忘れ物チェックしてから出かける。



「あんた達免許取ってまだ3ヶ月くらいばってん、隼瀬もだいぶ慣れてきたね」



「普段冬未のバイトの送迎とかしよるけんね。今ん時期車多なるけんあんなら途中で暁美に代わってもらうかもしれんばってん」



「うん、無理はすなよ。てか冬未ちゃん、後ろ暑くない?あんなら席かわる?」



「んね大丈夫。ばってんほんなこつ車多かね」



そして途中コンビニに寄ったりしながら、結局最後まで隼瀬が運転して水前寺の家を出発して1時間30分弱で目的地に到着した。



「「おお、やっぱ涼しい」」



「ほんとねえ、やっぱ違うばん」



渓谷を歩いて水の多い場所特有の冷気に当たってすっかりリフレッシュして、ヤマメ釣り体験を楽しむ3人。



「あ、来た!やばいこの子だっご動く!」



「隼瀬、私が支えるけんそんまま!」



「まだ泳がせた方がよかよ・・・そう、まだまだ・・・まだ・・・隼瀬、冬未ちゃん今!あげて!」



そして最終的に3人で5匹ほど釣り上げて、その釣った分を塩焼きと唐揚げにして、他にも鮎の塩焼きなども注文して食べる。



「「魚美味っ」」



「あんた達こまか頃から川魚とかあんま食べたこんにゃあけん大丈夫かなて思いよったばってん、そぎゃん喜んでくれたならよかった」



そして美味い美味い言いながら幸せそうに魚を食べる隼瀬に周りの視線が集まるのを感じ、普通に可愛いでしょと自慢する冬未と暁美。



「おばちゃん、この子私の旦那さんなんです」「私の弟なんです」



話をややこしくしないため、本当の事は言わない暁美。



「あらほんと、指輪しとんね。ほんで貴女の顔どこかで・・・」



そのおばちゃんはどこかで見たような顔・・・と冬未の顔をまじまじと見る。



「なんかうちの親と昔の知り合いとかですかね?私、葛西冬未って名前で親はお父さんが亮、お母さんが春美って言うんですけど」



その冬未の両親の名前を聞いて、そのおばちゃんは一瞬ハッとした表情で黙ってしまい、隼瀬がもしかして・・・と語りかける。



「あの、もしかしておばちゃん、お義父さん・・・あ、冬未のお父さんの・・・・・・」



「話は聞いとっとね・・・そう、私が亮の姉の佳代です。冬未ちゃん、お母さんそっくりね」



「よく言われます・・・あの、こぎゃん人のおるとこじゃあれだけん、あっちに私達の車ありますからそこん中で話しましょう」



「そ、そうね・・・」



つづく

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