あなた、できたよ
隼瀬が暁美にそう言われたのは、梅雨明け直前のジメッとした時期であった。
「え、やったね暁美!」
「うん!この前半休取って産婦人科行ってきてね、今10週目で順調に育っとるって」
「じゃあ本当に計画通りに・・・よかった」
そしてバイトに出かけていて帰ってきた冬未にも報告して、彼女も暁美を祝福する。
「ほんとよかったね、私も嬉しい。隼瀬とお姉ちゃんの子は私の子でもあるわけだけんね。私の産む子もお姉ちゃんの子でもあるし」
「ふふ、そうね」
「暁美もこの頃調子悪そうで心配しよったらそういう事で安心したばい・・・ご飯とかあんなら僕も気ぃ付けてするけん」
「まあそぎゃんつわりもひどにゃあけんよかよ隼瀬、あんたも大変だろ」
「んねんね・・・」
「本当に大丈夫だけん」
そうは言うても・・・と思う隼瀬はこの日より一層普段の料理に頭を使い、力を入れる事となる。して、翌日学校が終わってから隼瀬と暁美は2人きりで実家へ両親に報告しに行く。
「「おめでとう、楽しみね」」
報告を受けた両親は純粋に初孫に期待を膨らませつつ、親として暁美の体も、それを心配するであろう隼瀬と冬未の事も慮る。
「暁美、初めてだけん色々大変だろし、隼瀬も自分で暁美ん為になんでんしようとせんでいつでんお母さん達とか春ちゃん達ば頼んなっせよ」
「お母さんの言うたごつ隼瀬も気負いすぎんで、冬未ちゃんにもあんま心配すんなて言うとけよ」
「「うん、ありがとう」」
そう言って、アパートへ戻る我が子達を見送って、2人きりで話す孔と美香。
「あん子達ももう親んなっとね・・・隼瀬も孔ちゃんに似て心配性だし本当大丈夫だろか」
「大丈夫、あん子は昔の僕とちごて、ちゃんとなんかあったら僕達とか周りに甘えられる強さも持っとるけん」
「おお、さすが親バカね。よっと理解しとる」
「いや、冬未ちゃんに言われたつの受け売りたい」
「あはは、まああん子な隼瀬ん事も暁美ん事もよう見とらすけんね」
「ほんなこつね、僕達親の知らんごた2人ん事まで知っとったりするし」
本当にあの子凄いよねと義理の娘を褒めまくる2人である。そして、アパートへ帰った隼瀬と暁美は親の反応を冬未に話す。
「そっか、お義父さんもお義母さんもそぎゃん喜んで、心配してくれたね」
「うん、隼瀬にも冬未ちゃんにも私ば心配して気負いすぎんなて」
「そうね・・・隼瀬、私達も分からん事あったら親に甘えさしてもらお」
「そうね。僕も男ん子で分からん事だらけだし」
というわけで暁美のお産のためのサポート体制はこれで番端となったのであった。
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