対話



2007年 正月



年が明け、実家に一旦帰ってから暁美の母の墓参りに来た3人の夫婦。



「お母さん、命がけで私を産んでくれてありがとう。私、もう1人のお母さんの産んでくれた人と結婚したつよ、それにもう1人、その子と同じ誕生日の女の子、冬未ちゃんも私と一緒に・・・びっくりしたかな、ばってん私達はこれが幸せだけん、これからもずっと見守っててね」



「そのもう1人の葛西冬未です。あなたが命がけで産んだ娘さんは今、私達と一緒に元気に、幸せに暮らしています。あなたが愛した旦那さん、孔さんも立ち直ってます・・・だから、何も心配しないで大丈夫ですから・・・」




「お義母さん・・・て呼ばせてください。僕はあなたが命をかけて残してくれた暁美と、冬未と2人と一緒になる決断をしました。暁美も言ってたようにこれが僕達の幸せな形です。多分あなたが一番心配しているであろう僕と暁美のお父さんも、あなたの事をふとした時に思い出しつつも、前を向いて、僕を産んでくれたお母さんと一緒に僕達をちゃんと育ててくれました、だから本当に心配せんで、ずっと見守ってくれたら嬉しいです」



暁美の実母へ、それぞれの思いを伝えた暁美、冬未、隼瀬。隼瀬が言い終わったところで、3人は同時に不思議な感覚に襲われ、彼らの前には、写真でしか見た事のなかったその人が立っていた。



「ごめん、びっくりした?あなた達と直接話してみたかったから・・・暁美、大きくなったね。こんな可愛い旦那さんできて、もう1人の奥さんも、仲良く幸せにやっとるようで何よりよ」



「お母さん・・・」



そして、その暁美の実母、恭子の霊体は娘の弟であり夫、隼瀬に声をかける。



「隼瀬ちゃん、よね?」



「なんでさっきも名乗ってない僕の名前・・・そっか、ずっと見てたんですね」



「うん、冬未ちゃんとの事もね。まさか暁美も冬未ちゃんも2人とも選ぶなんて」



「びっくりさせてすみません・・・」



「いえいえ、逆にあなたも暁美も、冬未ちゃんも、私幽霊なのに驚かんの?」



「驚くというより、会いに来てくれて嬉しいの方が強いですよ。ね、暁美、冬未」



「「うん、本当にありがとうございます」」



「あなた達・・・」



隼瀬と冬未も自分を見て目に涙を浮かべるのを見て、あぁ、本当にこんないい子達と一緒にいれて、あの時命をかけてまで暁美を産む事ができて、この子達に出会わせる事ができてよかったと改めて思う恭子。そして、隼瀬と冬未は気を回して、暁美と母を2人きりにする。



「あの時、あなたを産む決断をして本当によかった。それにさっきお母さんて呼んでくれたね」



「だってお母さんだし、お父さんから話聞いてからずっとこうして話せたらって・・・そうだ、私達の結婚式もしかしたら見てた?」



「もちろん、隼瀬ちゃんの事もずっと見よったしやっと結ばれたんだって。だけん今日の報告も全部知っとった。たかちゃん、お父さんのスピーチはちょっと心配だったけど」



「ふふ、ずっとお父さんの心配しよっとね」



「当たり前たい、あん人は私が生きとる時も1人じゃなんもできんで・・・美香さん、今の暁美達のお母さんと結ばれた時よかった〜て思ったもん」



「そうだったつね・・・ねえ、私の花嫁姿どうだった?」



「いやあもう感動よ・・・あん時死んでまで産んだ娘が無事に育って、好きな男と結婚できたってそれだけで親としたらもうこれ以上ないけん」



「・・・改めて、私を健康に産んでくれてありがとう、私や家族、隼瀬、冬未ちゃんもずっと守ってくれてありがとう、そしてこれからもずっと私達を見守っていてください」



今伝えられる分、全部の伝えたい言葉を告げて、溢れ出る涙を拭い、隼瀬と冬未の待つ現世へ戻される暁美。



「暁美、ちゃんと話せた?」



「うん、産んでくれてありがとう、守ってくれてありがとうて言えたし、結婚式も見てくれとったて」



「そっか、ずっと見てくれとっとだもんね」



「うん、ずっと隼瀬とお姉ちゃんと一緒だったけんか私ん事まで・・・なんかやっぱお姉ちゃん似とるよね」



「そう?ばってん私はお母さんのごつ強くはなかたい」



「んねんね、そぎゃんこつにゃあよ、昔から私達お姉ちゃんに助けられてばっかだんね、隼瀬」



「うん、色々と僕達迷惑かけよるしねえ」



そんな時いつも真っ先に手を差し伸べてくれる暁美だから大好きなんだよと微笑む2人であった。

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