発表



2006年 12月初旬



いよいよ結婚式の日が目前まで迫る中、その主役の一組、隼瀬と冬未にある計画を相談された芙美子はこの子らまじで言ってんのかと困惑しつつ、結局それを認める。



「ほんで隼瀬ちゃん(教え子達につられて芙美子もこの呼び方になった)、お姉ちゃんも娶るくらいだけん、私もって言うたら入れてくれる?」



「は?」



「サーセン」



冗談で言ったのに、冬未に本気の目で威圧され萎縮する芙美子である。そして改めて咳払いして、私が全部責任持つから多少予定を変更して、隼瀬は冬未と暁美2人とのお祝いしにしようと決める。



「「さすが芙美子先生」」



「まあ、先生もあんた達が1番喜ぶ形のよかしね。そん事について今日の放課後皆ん前で話そうか、他ん子達も多分引きはせんばい」



そうは言っても不安ではあるが、当日事情を知らないクラスメイト達が混乱するよりいいかと、ドギマギしながら授業が終わるのを待つ2人。



放課後 特別HR



他のクラスや学年には結婚式の事すら内密のため、その主役達含む自らの生徒達を教室から密閉性の高い視聴覚室へ集め、カーテンも閉めて話しだす芙美子。



「よし、全員集まったね。今日は皆にもう今月25日に控えた三森咲良さん、充希くん、葛西冬未さん、隼瀬ちゃんの結婚式について、多少予定の変更があったので・・・その主役の一組、冬未ちゃん、隼瀬ちゃんお2人から皆に話があります。2人、前来て」



「「はい・・・」」



隼瀬も冬未もいつもと違う雰囲気で何やら不安そうに皆の前に立って、優しいクラスメイト達はどうしたのかな、体調悪いのかなとか心配しだす。して、なんだかんだこういう時は冬未より覚悟を決めるのが早い隼瀬がふぅっと息を吐いて、口を開く。



「皆よく聞いて、僕は冬未ともう1人、妻として迎え入れる決断をしました」



そこでやはり多少ザワつくが、このクラスの子達はすぐに黙って、友達の覚悟の話の続きを真剣に聞く。



「いいんちょ、充希、広海、なっちゃん、あおちゃんなんかはもう知っとるばってん、他の、このクラスの友達皆にちゃんと言うときたかったけん・・・ほんで、そのもう1人って言うのは、僕の異母姉、暁美です。気持ち悪いと思うもんもおるかもしれません、ばってん僕も、冬未も、これが僕達の望んだ形です。ね、冬未」



「うん・・・私達は何を言われようと、この関係を続けていくつもりです。だからどうか、その、暁美お姉ちゃんの事も祝ってもらえるようよろしくお願いします!」



そう言って、頭を下げる隼瀬と冬未。この話を聞いたクラスメイト達は一瞬戸惑いつつも、まあお前らがそう選んだんなら応援するしかないわと、2人が予想していた反応とはいい方向に真逆のもので、そんな友人達のぬくもりのこもった盛大な拍手に2人して双眸を崩す。



「はは、やっぱ泣いた」「2人ともすぐ泣くけんね」「隼瀬、俺は気持ち悪いなんか思わんばい」「俺も!隼瀬優しかしモテるけんね」「冬未とお姉さん隼瀬ちゃんば2人じめして羨ましか〜」「隼瀬ちゃん、私も娶って〜」「私も、冬未とお姉さんの次でよかけん!」「冬未、私にも隼瀬ちゃんシェアさせて!」



後半の女子達は若干おかしいが、冬未も怒る気にもならないほど、彼ら彼女らの好意的な反応が何より嬉しかった。そして、当日の予定を改めて練って解散となった後も、冬未と隼瀬の周りには友人達、主に色恋沙汰大好きな女子陣の輪ができる。



「冬未、隼瀬ちゃん、お姉さんてたまに2人ば学校迎えくる隼瀬ちゃんば女子にしたごた人?」



「そうそう、似とるけん分かるよね」



「えー、冬未はよう言うばってん、紀子ちゃんもそぎゃん思う?」



「うん、そっくりよ。隼瀬ちゃんは似とるて言わるっと嫌?」



「うーん、なんかそぎゃん思いたくにゃあて言うか」



「そう思うと、変な事できんくなるけん?」



「変な事てなんね」



「そらこぎゃ「やめろバカ紀子」



指でそういうジェスチャーをする紀子を慌てて止める冬未。



「こん子なそぎゃんと好かんとだけん!ほら、顔真っ赤にしとっども」



そのジェスチャーに顔をだるまを逆配色にしたごとく真っ赤にする隼瀬を指す冬未。



「あら、男ん子てかわいかな隼瀬ちゃん。なるほどね、どっちかっちゅうとあんたとお姉さんが隼瀬ちゃんば娶ったてわけね」



「「まあそういう事」」



そう言って、恥ずかしそうに冬未の肩に顔を埋める隼瀬に可愛いすぎるなこの子と、紀子も周りの女子達も思った。























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