歳の差の真実


冬未と隼瀬が暁美を迎え入れて3人での奇妙な生活が始まった。そして、暁美はやはり本当の事を言っておこうと親に事情を説明する事にした。



「なるほど・・・あん子達よう許したね」



「2人とも優しかけん・・・私も自分で気持ち悪いと思うばってん隼瀬ば好きな気持ちは冬未ちゃんと同じだけん」



「そっか・・・まあよかたい。あんた達半分血ぃ繋がっとらんし」



「は?どういう事?」



初めて聞かされる事実に動揺する暁美に、父の孔が事情を説明する。



「実はね、お父さん若い時に一回結婚して、その人との間に暁美が生まれたとばってん、その人は暁美ば産んだ後にね・・・」



「亡くなったと?」



「うん・・・元々体の弱い人だったけんね。ほら、お父さん達ん部屋に写真あるど?」



「あ、ばってんあん人な早くに亡くなった親戚て・・・私のお母さんだったつか」



「そう、ほんでね、2年くらいして今のお母さんと出会って再婚して、ばってん子供はそんときの記憶があって、またその子供の母親ばなくしたら嫌だけんて作りたくない言うてお母さんも理解してくれて・・・」



「そっから隼瀬ば作ったのはお母さんが説得して?」



「うん、何年かかけてね。暁美と隼瀬の間があいたつはそぎゃん理由。お母さんもお父さんもずっと黙っとってごめんなさい」



そう言って2人で頭を下げる孔と美香。確かに動揺はしたが、それでもずっと今の母も自分を大事に育ててくれたのは事実で、何より好きな人も産んでくれて何も謝って欲しくないと言う暁美。



「「暁美・・・」」



「私に本当のお母さんがおっても、今のお母さんがお母さんだもん。私の世界一好きな男ば産んでくれた人でもあるし」



その言葉に思わず双眸を崩す両親。そして、2人とも今の姉弟の関係を血の繋がり云々に関わらずとも何も否定せず応援してくれて、暁美も頭が上がらない。して、暁美はせっかくだからと父に本当の母親の話を聞く。



「ねえ、私ば産んでくれたお母さんてどぎゃん人だった?」



「そうねえ、体は弱いけど結構無理してなんでんしちゃう人でね、思いやりも強くて・・・その辺やっぱ暁美も似とるね」



「え、なんか隼瀬っぽいと思ったばってん」



「あー、まあ隼瀬もあんたに似とるしね。ほんで毎日明るくして・・・」



30年近く経った今でも話していると色々思い出すと込み上げてくる孔。そんな父親に暁美は無理しなくていいよと声をかけるが、それでも孔はその彼女が残してくれた娘である暁美にはちゃんと話しておきたいからと続きを話す。



「結婚して暁美ができた時も楽しみだねって毎日お腹さすって・・・病院の先生にお産耐えられんかもしれんて言われた時も絶対産みますって、僕にも「たかちゃん、私死んでも産むよ」って本当に・・・・・・」



当時の事を思い出し、号泣する孔。そして暁美も自分を守るために亡くなった母親に思いを馳せ涙する。



「お父さん、お母さんの最期の言葉はなんだったと・・・?」



「「たかちゃん、私の事は忘れてもいいけどあなたにはこの子がいるって忘れないで」って・・・そう言って笑ってそんまま心電図止まって・・・・・・」



「凄い人ね・・・自分が死ぬって分かってお父さんが前向けるようにそぎゃん・・・・・・」



「ほんとね・・・自分も暁美の成長した姿いっぱい見たかったはずてからね・・・」



そして皆ひとしきり泣いた後、その暁美の実の母親、恭子の墓前に暁美に話したよと報告しに行く孔を見送って、今の母親と話す暁美。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る