文化祭



隼瀬達がみやこを長女として迎え入れてはやひと月が経った頃、彼らの通う四高の文化祭「四高祭」の日がやってきて、彼ら2年F組のメイド喫茶はほぼほぼ隼瀬と充希目当てのお客様もといご主人様で大盛況だ。



「おかえりなさいませご主人様、ご用事をどうぞ」



「じゃあメイドさんで」



「私はただのメイドですし、それに里には許嫁が・・・」



しかし隼瀬も充希も、当初は嫌がっていたのがノリノリで元々容姿も声も可愛い方なのもあって、それがまた生徒間の口コミで広がり、次のご主人様を呼び続ける。しかしそんな愛想を振りまくメイド2人の本物のご主人様は複雑な様子だ。



「咲良、あいつら文化祭の空気にかこつけて私達のもんにベタベタ・・・」



「深雪のやつ、充希の腰に手回しよったし」



「もういっぺんちゃんと釘刺しとかんとね」



「なんなら本当に刺す?」



「それよかかも」



咲良と冬未が控え室でそんな物騒な話しをしていると、隼瀬と充希が戻ってきてやめなさいと釘を刺す。



「もう、あくまで僕達仕事としてやっとっとだけん」



「そうそう、ただの営業。あん子達にこぎゃん事なんかできんたい」



そう言って、2人同時に自分のご主人様に激しく口付けて、続きは後でと微笑んでホールに戻る隼瀬と充希。冬未と咲良はそんな小悪魔みたいな彼氏にただ呆然とするばかりだ。



「はあたん・・・」



「冬未がとろけモードや・・・ま、私もか・・・」



そして用意していた食材や飲み物も全部なくなって早めの営業終了後、我慢の限界を迎えた咲良と冬未はそれぞれの彼氏の着替えも待たずに人気のない所へ連れていく。



「冬未・・・?」



「あんたのご主人様は私・・・だろ?」



「なんね冬未ちょ・・・ん・・・」



先程冬未が飲んだコーヒーの匂いが隼瀬の口の中を埋めつくしていく。



「隼瀬、しよっ」



「しよってあんた、誰が来るか分からんし・・・・・・」



「大丈夫、芙美子先生にもここはもう使う人おらんて確認済よ」



「先生も僕達に協力的すぎ・・・てか僕普通に制服に着替えたいとばってん」



「だめ、今日はメイドのはあたんでして」



「こん変態・・・」



「ふふ、それ褒め言葉よね?」



して、なんやかんやあって冬未も満足した後、他のクラスなどの出し物を見て回る2人。



「まさかこのかっこんまま文化祭回るとは・・・」



「なん、かわいかけんよかたい。あ、智恵ー!たこ焼きちょうだい」



「400円ね。お、噂には聞いとったばってん隼瀬ちゃんかわいすぎだろ」



ちなみに咲良が隼瀬の事をちゃん付けで呼ぶようになってから、同じクラス以外の女子達も私も私もと真似しだして、更に最近は冬未が「結婚したらあの子葛西隼瀬になるけん」とか吹聴して回っているので、智恵も最近まで斎藤くん呼びだったのが隼瀬ちゃん呼びになった。いや、何してんだ冬未。



「営業中とかはともかくこぎゃん普通の時まで恥ずかしいばってん、冬未がこれがよかって・・・・・・」



「ふふ、隼瀬ちゃん冬未の言うことはなんでん聞いてやるもんね。ばってん本当可愛い・・・冬未、よか嫁もろて羨ましか〜」



「へへへ、だろ?」



「いや、嫁て・・・ってあれ、1舟よね?智恵ちゃん、これ多くない?」



「可愛いメイドさんにサービスサービスぅよ」



「それ懐っ・・・ま、まあそういうことなら・・・ありがとう智恵ちゃん」



「こちらこそ、眼福よ。じゃ、お幸せに〜」



そして、校庭のベンチに座ってたこ焼きを食べる隼瀬達。



「はいご主人様、あーん」



「あーん・・・あんた結構ノリノリたい」



「なんかもう今朝からずっとこのかっこだし慣れてきた。冬未の趣味のキワキワのやつに比べたら普通に服だし」



「智恵も言いよったばってんほんなこてあんたかわいすぎよな・・・」



「ふふ、冬未ないつも褒めてくれるけん好き。ばってん冬未も僕からしたら世界一可愛いとよ?」



「っ、その上目遣い反則だろ・・・」



「だって僕冬未よりこまかし自然とこうなっとたい」



「そこがまた・・・」



また理性が吹っ飛びそうになりながらも、ここは自重して今日の日程が終わって帰宅した後、存分に自分だけのメイド隼瀬を堪能する冬未であった。

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