隼瀬の記憶
2006年 9月
まだ皆夏休みボケも残る中、休み明けすぐの四高2年F組では、今秋に控えた文化祭「四高祭」へ向け、クラスの出し物について話し合いが行われていた。
「じゃあ今んところ出たのがお化け屋敷、箸巻き屋、たこ焼き屋、演劇、メイド喫茶と・・・・・・」
学級委員長、咲良が皆から出た意見をまとめて票決を取るが・・・・・・
「じゃあ演劇やりたい人ー・・・箸巻きがいいって人ー・・・あら、どれも拮抗か」
それだけ意見が出たという事は、やはりそれだけ票も分かれると言うわけで、一番得票が少なかったメイド喫茶以外の4つが同数投票となり、咲良が頭を抱えていると、隼瀬がある提案をする。
「いいんちょ、これ逆に一番票少ないメイド喫茶にしたら?」
その提案に一瞬、教室はざわつくが咲良は隼瀬の言葉に乗り気である。
「そっか、そうね・・・こうなったら少数決て形で・・・うん、隼瀬ちゃんの言う通りそれで行こう!それに隼瀬ちゃん、言い出しっぺなんだけんあんたもやってね」
「え?」
ちょっと待ってと言う間もなく、クラスというか校内でも有数の美形男子な隼瀬がそちら側で参加すると決まって、主に女子達から歓喜の声が上がって、もう決定事項となり隼瀬ももう何も言えない。
昼休み
「ちょっと咲良、隼瀬なともかくなんで俺までメイドさんやらにゃんとね」
いつものように4人でお弁当を食べながら、あの後についでみたいに自分もメイドさんやれと言われた事をごちる充希。
「だって充希、本物知っとるたい」
「あーね・・・てかあんたも冬未ちゃんも僕達のメイド姿そぎゃん見たい?」
「「見たい」」
「充希、絶対かわいかし」
「なん、隼瀬のが!」
冬未と咲良がうちの子の方が可愛いと言い合いになって、当の隼瀬と充希は居た堪れない気持ちである。で、午後の授業も終え、アパートに帰って、どこから出してきたのかメイドのコスプレ衣装を隼瀬に着せてみる冬未。
「やべえ、隼瀬可愛いすぎ・・・」
昔から暁美と隼瀬姉弟揃って美形だとは思っていたが、改めてこうして女装させてみて、本当に女の子にしか見えない彼にまたときめく冬未である。
「恥ずかしいて・・・」
「なん、かわいかたい。それにあんた普段からかわいいかっこしとるし」
「普通の服とコスプレと一緒じゃなかろだん」
「向こうの世界でもそぎゃんとせんだったと?」
「冬未、こん前からちっと思いよったばってん、向こうの世界てなんね」
「え?あんた記憶が・・・」
「?なんいいよっとね」
「(あれ、ばってん言葉遣いとかあん時からずっと・・・・・・)私があんたにプロポーズした日、覚えとる?」
「うん、覚えとるよ」
「あん時あんたなんかおかしい事なかった?」
「んね、いつもんごつ冬未が迎え来て、そんで喫茶店で・・・・・・」
そこで完全に隼瀬の記憶が統合された事に気付く冬未。
「・・・・・・そっか、まあよか。てかメイドさん以外の衣装もあるばってん着る?いや、着よか」
「強制?!」
「なんか色々見たくなったし。今のあんた見よると私の内なる男の部分が出てきたし」
「そぎゃんといつも出よるたい」
「なん・・・ほら、これ着て」
そう言って、少し際どい衣装を隼瀬に着せる冬未。
「これただのあんたの趣味たい!」
「そうよ、それにあんた毛の処理もちゃんとして、元々お姉ちゃんと一緒で肌綺麗だし映えるね」
「ばってん恥ずかしいたい・・・」
そう言って恥じらう隼瀬にムラッと来つつ、しっかり写真を撮って咲良に送り付けてからいつもとは違う営みを堪能する冬未であった。
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