計画始動




夏休み中、旅行から実家へ帰ってきて、姉に存分に甘えた後、一緒にお風呂に入って、また2人同じようなポーズで風呂上がりのコーラをぐびぐびと飲む隼瀬と冬未。



「ぷはぁ、けぷ」「けぷ」



2人して可愛いめなゲップをして、覗きに来た暁美と美香はクスクスと笑う。して、夕飯の時間まではまだ少しという事で、隼瀬達は部屋に戻って2人きり、たまたま見つけたリバーシに興じる。



「あー冬未そこ置くんだ」



「なんね、なんか・・・あ、あぶにゃ、これまた角取らるったい!」



「ふふふ、まちっと全体の盤面見らんと」



「てかこらどっちゃんしたっちゃ(どちらにしても)隼瀬が勝ちなんだけん言わんでちゃよかったろて」



「いやあなんか一応教えとった方がよかかなって」



「ほんと、優しすぎるわ。まあそこが隼瀬ってごた感じで好きばってん」



「冬未もさっきわざと負けたろ?だけんお返し」



「隼瀬・・・まあそっか、幼馴染だんね。互いに嘘とかすぐ分かるよな」



「そうそう。じゃあ10回戦行こか」



しかし2人とも飽きないもので、25回戦までやったところで、暁美がご飯よーと呼びに来て、結局このリバーシ対決は冬未のひとつ勝ち越しで終わった。そして今日は美香がたまたま冬未の大好物のレモンだれの冷しゃぶを作ってくれて、更にテンションが上がる冬未。ちなみに隼瀬も食べ物の好みなどは冬未と一緒なので、彼女の大好物は彼にとっても大好物である。



「「いただきまーす!」」



「うん、いっぱい食べね」



「いやあほんと美味いな、私にとったらおふくろの味ってお義母さんの味なんよね」



「冬未ちゃん、それ絶対春ちゃん本人の前で言いなすなよ。それにあんたいつの間にお義母さん呼びになっとっとね?!」



「大丈夫、分かっとる分かっとる。いや、だってお義母さんになるし。お姉ちゃんはお義姉ちゃんてよりもうお姉ちゃんばってん」



ちなみに隼瀬も既に冬未の両親をそう呼んでいる事を暁美が告げると、あとは籍がどうとかそういう制度上の問題だけで本当にこの子達は夫婦になるべくして生まれてきたんだなと改めて確認させられる美香である。



「まあそうね・・・来年のあんた達の結婚式どぎゃんしよかね」



「「よかよ、せんだっちゃ」」



「そぎゃん言うと思た・・・ばってん親としたらしちゃあと。それに暁美にもあんた達の晴れ姿見せんとしゃがな」



「ばってんお母さん、結婚式てお金いっぱいかかっどたい」



「親族とかみっちゃん達とか近しい人だけしか呼ばんならそぎゃん・・・」



そこまで言って、そうだ!と目を合わせる美香と暁美。直後、ご馳走様とそそくさと部屋に戻った暁美は話に出てきた弟達の親友に電話をかけていた。



『もしもし、隼瀬のお姉ちゃんお久しぶりです』



『久しぶり、みっちゃん。あんね、さっきあん子達の結婚式どうしよかて話になってね、そんでね・・・うん、そう、だけん咲良ちゃんとも話して先生にも相談してね・・・・・・』



『学校で・・・よかですね。そういう事なら喜んで。あの、これ隼瀬達には内緒で?』



『うん、まあバレたらしょんなかばってん、なるべく内密に、はいはい、みっちゃんも体気ぃ付けて、うん、咲良ちゃんにもよろしく、はーいはーい』



数日後 学校



「というわけでして」



充希は暁美から電話を貰った内容を、そのまま担任の芙美子先生に伝えていた。



「学校でね・・・確かに面白いかも。いや、やろうよ八幡くん。さしより校長先生に相談してみて、ダメだったら先生が自腹切って勝手にするけん、絶対やろ」



「先生ならそう言うと思ってました。では、よろしくお願いします!」



「うん、任せね」



そして、この後校長に相談すると意外にもあっさり許可され、芙美子が自腹を切るまでもなく、そのサプライズ結婚式の開催が正式決定。更にはあの2人と充希と咲良の2組の合同式になる事まで決定していた。で、そんな事までは聞かされなかった充希は嬉しそうに咲良に芙美子から隼瀬達の結婚式ができるようになったと聞かされたと告げる。



「学校でか、なんかよかね」



「なんか校長先生の話だと昔も同じ事したカップルがおったんだって」



「へー、それもしかしたら隼瀬ちゃんと冬未どっちかの両親だったりして」



「はは、まさか」



実はそのまさかである。冬未の両親も娘達と同じ幼馴染同士の許嫁という関係で、まさにこの四高在学中に結婚し、この学校で式を挙げていたのだが、その事実は冬未も知らなかった。そして、裏で姉や充希や咲良、先生達によって動きがあるとは露ほども知らぬ隼瀬と冬未だが、隼瀬は隼瀬でサプライズを用意していた。








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