充希の決断



前回、親友カップルを新居に誘った隼瀬達。そして、放課後皆お腹空いているだろうという事で冬未がご飯の支度をしようとしたところ、彼女のそのダメな方の腕前を思い出す充希と、その充希から聞いた話から咲良も揃って冷や汗をかきつつ、隼瀬の顔を見る。



(大丈夫、多分・・・)



(隼瀬ちゃん、多分って何?!)(お前隼瀬!親友をなんだと!)



「ちょっとあんた達、そぎゃん困った顔して失礼ね。私も隼瀬と2人暮らしするって決まってから任せきりだとあれだけんて、色々勉強しとっとだけん!」



「あ、最近うちのお母さんとコソコソしよったつはそれか」



「そうたい、うちんお母さんより料理上手いし。隼瀬も、私にとっても家庭の味だし・・・」



「なら・・・ばってん冬未、僕もなんか手伝おか」



「んねんね、せっかく咲良達来とっとに私達2人してほったらかしてどぎゃんすっか。ほら、隼瀬も大丈夫て言いよるけん安心してあんた達も待っときね」



「「はぁ・・・」」



本当に大丈夫かなとも思うが、とりあえず隼瀬を信じて、冬未が支度するのを待つ咲良と充希。



「で、いいんちょと充希は同棲とか考えとっと?」



「ま、まあ・・・」「半分駆け落ちんごた形になるばってん」



「あ、そっか充希の親が?」



実は充希は地元で有名な大グループ企業八幡ホールディングスの御曹司であり、いわば庶民の咲良との関係について親からは色々言われているのだ。だが充希はそんな自分の生まれた家が好きではなく、そんな出自を知っても特別扱いなど全くしない冬未や隼瀬と仲良くなった経緯がある。そして、この歳になって本気で好きな人が出来て、いよいよ彼は決断しようとしていた。



「うん、幸い咲良の親も辛いならそんな家出なさいって言うてくれとるし、あれん時は隼瀬達ば頼るかんしれんばってん」



「そらもう困った時は助くっとが親友だけん。それにいいんちょ、色々あっても充希ば守ってやってね」



「う、うん・・・それが私の、妻としての役目だけん」



その咲良の台詞に、少し冬未に似たものを感じる隼瀬である。と、ここで冬未が支度していた料理、野菜炒めと豆腐サラダが運ばれてきて皆で食べる。



「冬未、ほんと上手くなったね」



「へへ、まあ隼瀬にはかなわんばってんね」



「普通にうめえ」「冬未ちゃんのくせに」



「みっくんちょっと黙れ」



「まあ僕としたら結婚した後も別に僕がするごつすればよかて思いよったばってんね」



「ばってんなんでん任せきりなわけいかんたい。今だって料理だけじゃなくて、家事全般なんでんしてもろて流石にいかんなって・・・・・・」



「冬未・・・」



「咲良、俺達も2人暮らし始めたら任せきりはやめてね」



「え、あー、うん・・・・・・」



その咲良の顔にこいつ実はそのつもりだったなと見通す一同である。そして皆でいっぱいご飯を食べた後、充希と咲良を見送って、隼瀬と冬未は2人で将来の話をしていた。



「隼瀬、こっちの世界に慣れてきたちゅうてもやっぱあれだし、あんならこっちでも私が働いてあんたは・・・・・・」



「いやいや、流石にそら・・・生活だって僕がちょっとバイトとか続けたっちゃ微々たるもんだし、冬未1人の収入でどうすっとね」



「なんとかなるごつするけん。それになんか、そぎゃんしたいて思ったし、私も就職有利な資格取っとるし、それにまだ手つけとらんお姉ちゃんの渡してくれた金もあるし」



「まあ確かにそらそうね・・・ばってんお義父さんとお義母さんなどぎゃん思わすか・・・」



「いや、それがそのうちん親も隼瀬が私のために無理したりするよりはて・・・あんたの親も私に対して我が子んごつしてくれとるごつ、うちん親もあんたに対してそぎゃんだろ?だけん、なんさまお父さんも賛成してくれとっけん」



「そっか・・・ばってんなんかこっじゃ僕が冬未ばちゅうより、結局僕が冬未に貰われるて感じたい」



「ま、私は元々そんつもりだったし。こっちの世界の普通がどうとか、隼瀬はなんも気にせんで私についてくりゃよか」



「冬未・・・なんか凄いかっこよく見える」



「ばか、そぎゃんといつもだろたい」



「なんいいよっとねバカ冬未」



「ふふ、あこなって・・・」



そして今夜も隼瀬は狼と化した冬未の餌食になるのであった。

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