冬未の宝物
こちらの隼瀬もなんだかんだすぐに違う世界に馴染んで、2週間ほど経ったある日。学校へ着くと何やら転校生が来るらしいとの事でざわついておりまさか・・・と思った隼瀬の予感は的中した。そしてその隼瀬の予感を親友も感じ取る。
「まさか転校生て冬未ちゃん?」
「うーん、いいんちょ、芙美子先生(彼らのクラスの担任の下田芙美子先生)から話聞いとっとよね」
「そうよ、冬未よ」
「やっぱり・・・」
「ばってん隼瀬、なんか嬉しそうね」
「にゃ、にゃんいいよっとね充希」
「隼瀬ちゃん、冬未大好きだんね」
「そら彼女なんだけん・・・」
隼瀬の希望によってちゃん付けで呼んでくれるようになった咲良にも指摘され、みるみる顔が赤くなる隼瀬である。と、隼瀬の予想通りに冬未が芙美子に連れられ入っきて、挨拶をする。
「えー、白梅学園から来ました、葛西冬未です。私が何者か、簡単に言うとこのクラスの斎藤隼瀬くんの婚約者です。皆さんこれから仲良くしてください」
その挨拶に主に女子達は色めきたったり、密かに隼瀬を狙っていた子は歯噛みする。そして、やはり冬未は転校生という事で恒例の質問攻めにあう中、先程の冬未の自己紹介から隼瀬にもクラスメイト達の注目が集まる。
「へー、斎藤くんと葛西さんは幼なじみなんだ」
「うん、誕生日も好きなもんも昔からずっと一緒よ」
「わぁ、なんか運命的〜」
「隼瀬、お前イケメンのくせにこぎゃん婚約者までおるとかこのこの」
「へへへ」
で、ひとしきり盛り上がった後、午前の授業も終わって昼休み、隼瀬と冬未、充希と咲良は4人でお弁当を食べながら話す。
「え、それ冬未じゃなくて隼瀬ちゃんが作ったと?!」
「うん、まあこっちの世界の記憶でも冬未に何か作ってもろた事にゃあし」
「すげえ、さすが逆転世界の隼瀬ちゃん、女子力たけえ」
ちなみに充希にも既に隼瀬の事情は説明してある。それで更にちなむと、こっちの咲良と充希も既に充希の告白で交際中である。
「えへへ、てかいいんちょも凄い料理上手いとね」
「あ、これは実はこっちも充希が・・・・・・」
なんとどちらも彼氏側が作っていると判明し、結局隼瀬のあっちの世界にいるのと一緒じゃんと笑う一同。
「いやあ、それにしても冬未が隼瀬ちゃんのためだけに転校してくるとはねえ」
「だってこいつ可愛いし狙う女いっぱいおりそうだし、実際中学ん時もねえ、みっくん覚えとっど?」
「あー、隼瀬が優しいもんだけん一緒に帰ろうて言われたら断らんすぎてお姉ちゃんぶちギレ事件ね」
「え、なんそれ。隼瀬ちゃんのお姉ちゃんがその子達にキレたん?」
「うん・・・僕もびっくりしたよ。「あんた達この子には許嫁がおっとだけん軽い気持ちで手出すなよ」って、あぎゃんキレた姉ちゃん初めて見た」
「だいたいあんたもあんたたい。女の子も下心はあってからいっちょん警戒せんで!」
「だってそん時まだそぎゃん恋とか分からんかったし・・・実際にそぎゃん関係になった子はおらんかったし」
「それがすぎゃーよね、隼瀬。ほんなこて冬未ちゃんしかそういう対象に見えとらんとね。てかお互いか」
「「まあ・・・」」
と、冬未がブレザーのポケットからある物を取り出して、咲良と充希に見せる。
「なんそれ?」
「あー、それね」
「みっくんには前見せたばってん、咲良、これね、12年前に隼瀬が私にくれた手製の指輪・・・ずっと私の宝物」
「おぉ、隼瀬ちゃん男子にしてはマセとんね」
「まあ当時は僕もよう分からんで結婚とか言いよったばってん・・・これからはもう本気よ」
そう言う隼瀬と冬未の間に簡単には切れそうにない糸のようなものが見えた気がした咲良。だとすると、向こうの世界でも2人はこうやって結ばれているのだろうかと、そしたら自分と充希はどうなっているのだろうかと、頭のいい彼女はそんな事を考える。
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