回復職の悪役令嬢/ぷにちゃん
【10周年イベント】
「うわっ、なんつー攻撃してくるんだ!! HPが一気に半分なくなったんだが!?」
「〈ハイヒール〉! イベントボス、めちゃ強!!」
吹っ飛ばされた前衛を見て、私はすかさず支援をかける。HPが回復したのを確認し、周辺を見る。ボスの取り巻きで出てくるイベントモンスターの数は、あまり減っていない。
「範囲攻撃するから!」
「頼む!」
〈アークメイジ〉の声に、私は〈女神の一撃〉をかける。これは次の攻撃力が二倍になるスキルだ。モンスターのHPもだいぶ減っているので、次である程度は片づけられるだろう。
今、私がやっている『リアズライフオンライン』は10周年を迎えた。
そして開催されているのが、この10周年のアニバーサリーイベントだ。イベントモンスターが出てきて、イベントアイテムやレアアイテムをドロップしてくれる。モンスターの難易度も初心者から上級者まで楽しめるようにいくつかの設定があって、高レベルのイベントモンスターは経験値もかなりおいしい。
ほかにも、記念アバターや、経験値やドロップアイテムの増加、特別クエスト、イベント期間中に討伐したイベントモンスター数ランキングなど、盛りだくさんだ。
――ということで、私は仲間と一緒に高レベルのイベントダンジョン〈アニバーサリー!!〉に
パーティ単位のランキングもあるので、私たちはいつも以上に燃えに燃えまくっているのだ。ありがとう運営! おめでとう10周年!! これからも20周年30周年100周年と続いていってください。
「よーし、ボスを倒したらもう一周……」
私が元気よく次に行こうとしていたら、ふいに「起きろ!」と呼ばれる感覚に襲われた。もしかしたら、現実で誰かが私を呼んでいるのかもしれない。
せっかく楽しいところなのにと思っていると、ふいに私の視界が変わった。まさか、無理やりリアズリンクを切断された――!?
「お師匠さま! 朝ですにゃ」
「――……タルト」
「どうしましたにゃ?」
私は大きく息を吐いて、夢だったのかと脱力する。リアズが10周年のときの夢とは、なんとも懐かしいね。
……あのときの私はきっと、今の私がリアズの世界にいると知ったら驚くだろうね。だけど同時に、歓喜するだろうな……。
そんな風に思っていると、タルトが「どうしましたにゃ?」と私の顔を覗き込んできた。どうやら喜怒哀楽が顔に出ていたみたいだ。私は「大丈夫だよ」と笑ってベッドから起きる。
……そういえば、ここ数日はレベル上げばっかりであんまり休めてない。
「よし、今日は午前中は狩りをして、午後はちょっとした遊びをしよう! 息抜きも大事だからね!」
「遊び、ですにゃ?」
タルトが首を傾げると、ぴこりと猫耳が揺れた。
***
「よっし、〈ぷるぷるゼリー〉ゲット! これで一六個めだ!」
「ふふーん、私はもう一九個だよ!」
ケントとココアがドロップした〈ぷるぷるゼリー〉を競う横で、ティティアが「二人ともすごいです」と言って自分が手にしている五個のゼリーを見つめた。
私たちは今、普段の狩りの息抜きに〈プルル〉狩りをしている。これはソロ戦で、制限時間内に一番〈ぷるぷるゼリー〉を集めた人が優勝というゲームだ。最初は「楽しいのか?」と
ちょっと保護者目線になってしまった(笑)。
ケントは剣を使い、ココアは弱めの攻撃魔法を使いつつ、近くにいる場合は杖で
……今のところ、ココアがトップみたいだね。
これは私も頑張らねば! ということで、制限時間にした一時間、本気で〈プルル〉を探し続けた。
そして結果は――。
「いやー、私とティティア様にかかればこんなものですよ」
「わたしはあまり集まらなかったんですが……」
優勝者は153個集めたリロイだった。勝手にティティアとチームになっているけれど、リロイ一人で優勝できる数だ。なお私は142個で二位でした。
まあ、リロイがティティアに尽くしているのは今に始まったことではない。たぶん気にしたら負けだろう。
「ということで、優勝賞品は
「ありがとうございます」
みんなで拍手をして、商品を渡した。これは毎日行列ができているお店のお菓子で、とってもとっても美味しいのだ。
……きっとティティアに食べさせるんだろうなぁ。
そんなことを考えて、思わず遠い目になってしまった。いや、主人思いなのはとてもいいことだとは思うけどね。
「くそー、次は俺が勝つぞ!」
「私だって負けないよ!」
「特訓しておきますにゃ!!」
ケント、ココア、タルトはすでに次回の勝負に向けて闘志を燃やしていた。これは次回の開催も決定だね。
次回のドロップ競争も楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます