第10話 村長のお礼


「本当にここで合ってるのか?」

 そこは、村長の家とは到底思えない、ボロっちい家だった。


「とりあえずノックしてみましょ」

 セリヤがそう言う。

「そうだな」

 俺はセリヤが言った通り、見るからに壊れそうな扉をノックした。

 すると、しばらくして扉が開き、老人が出てきた。

 この人が村長か、優しそうな人だな。

 村長は、俺達の姿を見ると、

「おお待ちしておりました。どうぞ入って下さい」

 笑顔で俺達を迎え入れた。


 中に入ると直ぐにリビングがあり、奥に台所、左側にトイレ、右側には恐らく寝室であろう部屋がある。という間取りだった。

 やっぱり外見通り全体的にボロっちいな。

 俺がそう思っていると、村長は優しい声で、

「飲み物を出しますので椅子に座って下さい」

 そう言い、リビングの真ん中に置いてある椅子を引いた。


「あぁ、わざわざ悪いな」

「いえいえ」

 俺とセリヤは言われた通りに椅子に座った、セリヤと隣同士でだ。


 俺は椅子に座ると、「ふぅ」と息を整え、ふと家全体を見渡す。今は村長しか居ないみたいだな。

 昨日助けた少年Bは、遊びにでも行ってるのか。元気なのはいい事だな。

 そんな事を考えていると、村長が飲み物を運んできて俺達の椅子に座った。


「どうぞ、飲んで下さい」

 村長がそう俺達に飲み物を渡すと、セリヤは直ぐに、

「ありがとうございます!」

 元気よくそう言い、コップいっぱいに入った飲み物をガブ飲みした。

 コイツそんなに喉乾いてたのか。確かにケーキワンホールを飲み物無しで食べてたもんな。


 俺もそんなセリヤを見ながら飲み物を飲んだ。

 お、これお茶か!異世界に来てから飲む機会が無かったから、てっきりこの世界には無いのかと思っていたが、あったんだな。うん、やっぱり美味いぜ。


 俺が久しぶりに飲んだお茶に感心していると、村長が、本題を切り出してきた。


「では早速話に入りたいのですが、まずちゃんとお礼を言わせて欲しい。本当にありがとう」

 そう言って頭を下げる村長。

 それに対してセリヤは、

「全然大丈夫よ、私達は冒険者、人を助ける事が仕事なんだから」

 笑顔で村長にこう返した。


 これに関しては俺も同感だ。力が無い人たちの事は、力のある冒険者が守らないといけないと思う。まぁ、何でもかんでもするって訳じゃないがな。


 セリヤのセリフに感動した村長は感動した様に、

「貴方達はすごく優しい冒険者だ、お礼と言ってはなんだが受け取って下さい」

 そう言い、机に一つの袋を置いた。


「これは何が入ってるの?」

 セリヤが袋の中身を聞く。すると村長は、

「少ないですが20ゴールド程入れています。これで美味しい物でも食べてください。」

 そう言った。


 え?マジで!20ゴールドだぞ?20ゴールド!これでいい装備とか買えるじゃねぇか!

 俺は笑顔でセリヤの方を見た。


 しかしセリヤは手を前に突き出して横にブンブン振り、

「いやいや、ゴールドなんて悪いわよ」

 そう言い、渡された袋を村長の方に移動させた。


 え、なんでぇ?こういうのは貰った方が良いだろ!変な所で真面目だなコイツ。

 俺は何とかセリヤにゴールドを受け取らせる為に、

「このゴールドは村長さんの気持ちなんだし、貰っとこうぜ?」紳士のような声でそう言う。

 ん?なんだ?ゴールドが欲しいだけだろって?いや、誰だってゴールドは欲しいだろ!


 すると、俺のセリフに押されたのか、セリヤは少し申し訳なさそうな顔をしながらも、

「まぁ、それもそうね、じゃあ貰っておくわ」

 そう言い、村長の方に手を伸ばした。

 それに対して村長は、

「はい、改めて息子を助けて頂き、ありがとございました」

 そう、俺達に改めて感謝を述べ、セリヤの手にゴールドの入った袋を渡した。


「ありがとう」

 そう言ってゴールドの袋を受け取るセリヤ、俺はそれを見て、机の下で小さくガッツポーズをした。

 よっしゃ!ゴールドゲットだぜ!、よし!今日はクエストするのやーめた!


 俺がそんな風に喜んでいると、俺達二人を交互に見てから村長が、

「お礼をする事が出来て良かった。これからどうしますか?まだ居てくれても構いませんが」

 そう俺達に聞いてきた。


「どうする?テツヤ」

 俺の方を向いてそう聞いてくるセリヤ。


 まぁ、正直ずっとここに居てもやることも無いしな。

 あと早く今日貰ったゴールドを使いたいし。

 だから俺は、

「ここに居てもやる事無いし、帰るか」

 セリヤにこう言った。


「じゃあ帰りましょうか」

 セリヤもそう俺の意見に賛成する。

 コイツ本当にどっちでも良かったんだな。


 俺は、椅子から立ち上がり、最後に

「ありがとうな村長、この街の人間はみんな親切で良い奴だな。」

 そうお礼を言った、これは嘘でもなんでもない、心の底から思っていた事だった。

 

「いえいえとんでもないです、ではお気おつけてお帰り下さい。」

 村長はそう俺に対して優しい笑顔でそう言った。


 そして俺達を見送る為に椅子から立ち上がろうとした――その時、いきなり玄関の扉がノックされ、返事を聞く間もなく扉が開いた。


 そして扉から若い男性が身を乗り出す様に入ってきて、

「村長はいますか!」

 荒い呼吸をしながらそう言った。


 はぁ……またなんか始まるよこれ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る