第2話 救世主


あれからどれくらい走っただろう。

 やっと俺たちはスライムの森を出ることが出来た。


 はぁはぁ...マジで疲れた...

 俺は杖で今にも疲れで倒れそうな身体を支えながら呼吸を整えていると、一緒に走ってここまで来た彼女が俺に声を掛けてきた。


「貴方...大丈...夫?」

 そういう彼女の顔には汗がダラダラと流れ、口を大きく開きはぁはぁと荒く息を吐いている。


 いや……お前の方が大丈夫かよ

 そう頭の中でツッコミながらも俺は

「あぁ…大丈夫だ。」

 と、返事を返した。


 よし、さっきから気になっていると思うから、息を整えるついでに俺を助けた彼女の見た目を教えようと思う。

 髪の色は赤で、髪型は腰辺りまでのロング。そんでもって貧乳……良いよなぁ貧乳は。って失敬失敬、つい口が滑っちまった。よし、説明に戻ろう。

 目の色も髪と同じく赤、全体的に赤色の可愛らしい女の子だ、どう見ても俺よりは年下だな。ぐへへ

 

 まあこんなところだ。よし、とりあえずそろそろ息も整ってきた頃だし、彼女に礼を言うか。

「ありがとうな、おかげで助かった。」

 俺はそう言い彼女に軽く頭を下げる。

 ふぅ、やっと礼を言えたぜ。助けて貰って直ぐに礼を言えてなかったのがずっと気がかりだったんだ。すると彼女は、

「えぇ、冒険者同士助け合いは必要な事だから全然良いわ。」

 と、冷静にそう返してきた。


 マジで良い奴だな……これは何かお礼をしなければ……

 彼女は見返りを求めている様な感じでは無かったのだが、俺はこういう時、何か相手にお礼をしないとあとからモヤモヤしてくるタイプなんだ。だから俺は、ポケットの中を探り、中に入っていた4ゴールド(一晩宿に泊まれる位)を取り出して彼女に渡した。


 すると彼女は驚いた様子で、

「え!?もらっても良いの!?」

 と、聞いてくる。

 それに対してはもちろん、

「あぁ、命を助けて貰ったしな」

 と、笑いながらそう答えた。


 すると彼女は、

「私セリヤ、セリア・マーガレットよ。貴方、名前は?」

 と、自分の名前を名乗り、そして名前を聞いてきた。

 

 確かに頭の中ではずっと相手の事は彼女呼びだったから名前知らなかったし、俺も名前教えてなかったな。

 俺はセリヤに、

 「俺の名前はテツヤだ。」

 と、名乗った。(一応補足しておくと、俺はこの世界に来てからは海乃 哲也という名前では無く、テツヤで通している。)


 その名前を聞いたセリヤは、少し怪しむ様に俺を見た。

 なんだなんだ?俺の顔はそんなにブサイクか?まぁ確かにこの世界の人間は美男美女だらけだから俺の顔は劣って見えるかもしんないけどさ。

 しかし、そういう訳でもないらしい。セリヤは少し考えた後、

「テツヤ……あまり聞かない名前ね。色んな地域を回ってるの?」

 と、聞いてきた。


 なるほどな、恐らくセリヤはここらで聞かない名前と見たことの無い顔、だから俺の事を旅人か何かと勘違いしているんだろう。しかし残念だな。俺は旅人では無く、家無しの底辺冒険者だよ。


「いや、俺はここら辺に住んでる冒険者だ。まぁ住んでると言っても、毎日宿に泊まってる家無しだがな。」

 俺はそう苦笑いをしながらセリヤに言った。


 するとセリヤは、

「え!?じゃあ毎日、ゴールド払って宿に泊まってるの!?ただでさえゴールド無さそうなのに」

 と、驚いた様に失礼な事を言いやがった。


 無意識なんだろうが凄く馬鹿にされてる気がするぜ……ってかゴールド無さそうって俺の顔を見ながら言ったよな!?そんなに貧乏臭い顔かよ!?

「はぁ……」

 俺はセリヤには見えない様に小さくため息を吐くと、

「今日は助けてくれてありがとな、じゃ、また。」

 そう杖を持っていない方の手で軽く手を振り、その場を立ち去ろうとした。


 はぁ、今日分の宿代はセリヤにあげたし、スライム討伐クエストも出来なかったから今日は久しぶりの野宿だな。家無しは辛いぜ全く。

 そんな事を考えていると後ろにいたセリヤから、

 「ね、ねぇ!」と声が掛かった。なんだ?まだ俺をけなし足りないか?


俺は後ろに振り返り、

「まだ何か用か?」

 と言うとセリヤは少し恥ずかしそうに頬を赤らめて、

「あの...テツヤが良いなら...家来る...?」

 そう言った。――ってマジで!?


 マジで良いのか!?俺なんかが異性のお家にお邪魔しちゃって良いのか!?今の俺の顔はまるで死にかけの所を神様に救われた様な――そんな顔だろうよ!


「マジで良いのか!?」

 俺はセリヤに再度確認をする。

 その言葉にセリヤは恥ずかしがりながらも、こくんと頷いた。

 よっしゃぁぁ!人生初!異性のお家にお泊まり!!

 こうして俺は、セリヤの家に泊めてもらう事になった。

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