第一章[ミリゴ編]

第1話 出会い


初めてレベルアップしたあの日から、俺は薬草集めクエストでは無く、スライム討伐のクエストをする様になっていた。

 理由は、薬草集めクエストよりも貰える報酬が多いというのもあるが、何より薬草を集めるよりも効率的にレベルアップをする事が出来るからだ。


 初めて一撃でスライムを倒したあの日、俺は少し自分に自信を持てたんだ。今まで出来なかった事が出来る様になるって嬉しいだろ?

 そうだなぁ――例えるとすれば、全然出来なかった計算問題を、公式を理解して解く事が出来た時に感覚が近い。

 まぁ計算問題とスライムはまったくの別物だけどさ――

 そんな感じだ。


 さて、じゃあ早速今の状況を説明していくとするか。

 今日も俺はスライム討伐の依頼を受け、スライムの森に来ている。

 初めてレベルアップした日から何度もスライムを討伐したから今はもうレベル5にまで上がった。

 どれくらいの強さかって言うと、スライム2、3体なら

 一撃で同時討伐出来る位の強さだ。


「最近はスライム位なら楽勝になってきたな。」

 俺はスライムを探しながらそう呟いた。

 俺はもうレベル5だ。先程言った通りスライム相手ではもう負ける事は無いだろう。

 まぁ、その分レベルは上がりにくくなったがな。


 ――それにしてもスライムが居ないな。

 さっきからずっと話を聞いてるお前らなら分かると思うが、

 今日はまだ一度もスライムが出てきていない。


 おかしいな。

 いつもなら木の影から飛び出してくるはずなんだが――


 それから俺は更に奥に進んだが、やっぱりスライムは居なかった。

「おっかしいな」

 そう言いながら俺は杖を持っていない方の手で頭をいた。

 そしてふと周りを見渡してみると――


「ん?」

 道の脇に立っている看板が目に入った。

 看板には、「これより先、スライム以外のモンスターの出没事例あり。」と、書いてある。


 なるほど……要するにこの先にはスライムよりも強いモンスターがいる可能性があるって事だな?

 じゃあ行こうじゃないか!


 こういう時はちゃんと考えてから行動するのが一番なのだが――この時俺はスライムよりも強いモンスターと戦ってみたい。という好奇心に突き動かされ、特に何も考えずに先へ進んだ。


 それから十分程歩いていると、ある開けた場所に着いた。

 形は、直径十メートル程の円形だ。


 そして、地面にびっしりと生えている草が燦々と照りつける太陽の光を反射していた。


 そんな景色を見た俺は、

「綺麗な所だな」

 と、口から声が漏れる。


 多分俺はここにいきなり神様が現れたとしても驚きはしないだろう。それくらい綺麗で神々しい景色だった。


 そしてこの時俺は。という事を完全に忘れてしまっていた。


 しばらくその景色に見惚れていると、不意に後ろの辺りからガサガサと音が聞こえた。


 なんだ?

 その音で俺は我に返り、後ろにある茂みを見た。

 すると、その茂みの中で何かがガサガサと動いていたのだ。


 ちょっと待ってくれよまじ怖いんだけど!!

 だってこういう時って悪いパターンしか俺知らないもん!


 俺はそうまるでライオンに追い詰められたシマウマの様にガクガクと震えていると――

「しゃァァァァ!」

 突然その茂みからソレは飛び出してきた。

 そしてその姿を見た瞬間俺は文字通り絶望した。


 そこには、全長五メートルはあるであろう大蛇が居たのだ。


「うわぁぁぁ!」

 その姿を見た俺はそう叫んだ。

 というかこんなの叫ぶに決まってる!だって前の世界じゃ考えられない大きさなんだよ!もうこれ龍だろ龍!


 化け物と対峙した俺は急いで来た道を戻ろうとする。しかし――


「うおッ!?」

 焦っていたせいで上手く足に力が入らず、俺は転んでしまった。

 そんな俺に対して、大蛇は舌をべろべろと出したり引っ込めたりしながら近ずいてくる。


 やばいやばいやばい!コレマジで死ぬって!

 俺は後ずさりしながら何とか大蛇を追い払おうと必死で魔法を放つ。しかし、手に上手く力が入らず、放った魔法は全て違う方向に飛んでいった。


「ちょっとマジでタンマ!ごめんって!」

 頭が真っ白になった俺は、遂に大蛇に対して謝罪を始めた。

 しかしもちろん、言葉が通じる訳もなく大蛇は、


「しゃァァァァァァァ!!」

 大きく口を開き、俺に飛びかかって来た。


 マジでやめてくれぇぇぇぇ!

 俺は言葉にならない悲鳴を上げた。というか死んだと思った。しかし、次の瞬間声を上げたのは


「はぁぁぁ!」

 突如として森から飛び出してきた彼女は、俺を追い詰めていた大蛇の背中を手に持っている剣で斬り裂いたのだ。


「しゃァァァァァ!?」

 いきなりの攻撃に大蛇は悲鳴を上げる。


 なにが起こったんだ...?

 大蛇に噛まれる寸前、目を閉じ死を覚悟していた俺はいきなりの展開に唖然としていた。

 そしてそんな俺に突如現れた彼女は、


「早く!今のうちに逃げるわよ!」

 と、俺に急かすように言う。

 その声で正気に戻った俺は、

「あ、あぁ!」

 彼女にそう返事をして、二人で来た道へと逃げた。

 

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