異世界第一王子転生
感佩
第1話 腐り果てた人生
思えば、結果が全ての人生だった。小学生の時にテストで初めて100点をとった時に親に褒められて嬉しかったのは覚えている。それでもっと勉強するようになって100点を連続でとり続けた。満点を取る度に褒められて嬉しかった。中学受験は満点ではなかったが、地域一の進学校に合格したので褒めてもらえた。実際問題、満点をそういつまでもとり続けられる訳も無く、中学二年生の時に一度満点を取り逃してしまった。そのテストでも頑張って勉強したので悔しかったが、頑張った俺を親は褒めてくれるだろうと考えていた。しかし、親の口から出てきた言葉は「もっと頑張って満点取りなさい。」だった。それを言ったときの親の目はとても無機質なものだった。
それからである。カンニングペーパーを作り、満点を取り、ケアレスミスで満点ではなかったテストは必死に隠蔽し始めたのは。不幸か幸いか、隠蔽の才能はあったようだ。それからである。人の顔色を異常に窺うようになったのは。
高校に入ってからは部活をしなかった。部活に入った後一位を取り続ける事は不可能だからだ。それは勉強においても同じだった。圧倒的天才の圧倒的努力に凡才のこの身は通用しなかった。育て上げられた完璧主義と周りの目を気にする性格は俺を大いに苦しめた。完璧な自分という理想と凡才な自分という現実の乖離に葛藤し、周りの目を気にして八方美人な人間関係を築く為についた嘘は、日常生活と精神面に絡みついた。ツヅラフジのように。
大学は少し楽だった。薄く広い人間関係がとても楽だった。ただ、完璧主義の「完璧にできないならやらない」という性格的な側面は、自身から積極性を奪い、いつしか何にも挑戦出来ない人間へと仕立て上げた。それでも、何とか卒業までこぎつけた。
本当の地獄は会社に就職してからだった。密な人間関係で誰からも好かれるように立ち回り、ミスは極力減らす。最初の数か月はそれでも持った。しかし、肉体、精神共に疲弊し、ミスが多くなった。ミスは周りに悪い印象を与えると思い必死になって隠した。隠し続けて完璧人間を演じ続けた。反動として、帰宅すると気絶したかの様に眠りについた。休日もほとんど動けなかった。いつの間にか起きていたり、いつの間にか寝ていたりして夢と現実の区別がつかないまままどろんでいた。そんな生活が続く訳がなく、今日会社で隠し続けたミスが芋づる式に見つかった。見つかった瞬間に逃げ出して、家まで帰ってきてしまった。
別に親を恨んでいる訳でも無い。単純に疲れてしまった。周りの目を窺い、完璧を演じる生活に。嫌気がさしてしまった。変わるきっかけが無い日々に。きっかけを求めるだけで行動しない自分に。目の前の縄で作られた輪に首を掛ける。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
更新頻度は凄く遅いと思います。
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