第5話 笑わない珊瑚 その4

 突然よそよそしくなった珪斗と珊瑚の関係はなにも解決しないまま週末が過ぎ、週が明け、神社での封緘から一週間が過ぎた。

 小春日和に恵まれた週末は珊瑚が珪斗の部屋を訪れることはなく、顔を合わせたのはクラックの封緘作業の時だけであり、昨日の月曜も、やはり、最小限の会話だけで封緘を終えて解散していた。

 そして、今日も珊瑚は無言のまま、珪斗のずっと前を歩いている。

 物理的にも精神的に遠い後ろ姿に珪斗はため息をつくと、気を紛らわせるべく、通り過ぎつつあるかたわらの市役所を見上げる。

 ここ和岳市はけして都会ではない。

 少し市街地を離れれば一面に田畑が広がり、山林があり、海水浴のできる海がある。

 そんな自然に囲まれた“地方都市未満の田舎町”であっても、市役所というのは市の中心に位置するものであり、その周辺は市一番の都市づらをしているのが常である。

 和岳市役所の周囲も同様に市内随一の“都市部”を装ってはいるのだが、そのとなりには場違いなほどの面積を持つ緑の丘が広がっている。

 それは市民公園――ではなく、古墳である。

 “和岳原古墳”と名付けられたこの古墳は六世紀頃に作られたどこにでもある珍しくもないものだが、ろくな観光資源もたいした文化遺産も持たない田舎町にとっては数少ない“貴重な史跡”であった。

 とはいえ、その由来や縁起について珪斗は知らない。

 あえて語るような特色がないのか、学校の授業では“軽く触れるていど”の扱いでしかなかったのだ。

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