文字数制限のある短編作品の主人公は、能動的であることが有利に働く傾向にある。というのは、どうしたって文字数を切り詰めなければならない短編において、様々な導入をかっ飛ばすことができるからだ。
では本作はどうだろう。もう、行動力の塊である。
普通の人間がA→B→Cと、手順を踏むのに対して、この主人公はA→X→Eと飛躍的な発想でお話をガンガン動かしていく。Axe。つまり冗長な展開に斧をたたき込むような所業だ。
ただ突飛なことをしているわけではないのが、いちばんのポイントだ。その上で『復讐』という誰にでも共感できるテーマを軸に据えているからこそ、この作品は振り落とされることのないジェットコースターのようにじゅうぶんすぎるエンターテイメント性を担保している。地の文がずっと面白いのもすごい。短編という狭い世界を縦横無尽に暴れ回ってくれ鈴香、と思わずペンライトを振りたくなってくる。ハッピーバースデー、鈴香!
己のファーストキスすらも『必要経費』と言い放つこの女の生き様を、ぜひぜひみんなにも読んでもらいたい。
(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=みかみてれん)