[KILLER(1)]

 メンバーとスタッフの連絡用LINEに送られたなずなからのメッセージ。



「皐月の代わりとして推薦したい子がいるの。早宮果乃っていう元アイドルの子」



 メッセージに引き続き、なずなからYouTubeのURLが送られてくる。


 それをクリックすると、「キャンディー・クルーズ」というアイドルのライブ映像に飛ばされた。



「……これって……大椿妃芽花?」


 サムネイル画像を見て気になった私は、動画の概要欄を見る。すると、キャンディー・クルーズは、大椿妃芽花と早宮果乃の二人から成るという。


 なずなが勧めるメンバー候補は、いわゆる「じゃない方」だということだ。



「アイラッシュらしいじゃん」


 アイラッシュは、「訳あり」の女の子の集まりである。


 過酷な現実に直面したことのある子でなければ、おそらく長続きしない。



 一人きりの部屋である。


 私は音量を気にせずに、動画を再生する。



――なるほど。



 ライブ映像を見る限り、パフォーマンスは合格点である。


 動画は5年前のものであり、ルックスは当時とは変わっているかもしれないが、VRアイドルであればルックスは関係ない。



 再びLINEの画面に戻ると、すでにメンバーの一人から「いいね」と絵文字で反応がつけられていた。



 そして、なずなからは、「みんなに紹介したいから、今日、レッスン場に連れて行くね」とのメッセージが追加で届いている。



 なずなの人選に、私は不満はない。


 他方、気になっているのは、なずなの思惑である。



 



――嫌な予感がする。


 なるべく早い段階で、なずなの意向を確かめる必要があるだろう。


 さもなくば、また皐月のようなことが起きかねない。



 



 決して、皐月に個人的な恨みがあったわけではない。



 むしろ、偶然「秘密」を知ってしまった皐月には、心から同情している。


 しかし、皐月が「アイラッシュに復讐する」と言った以上、手を打たないわけにはいかなかった。



 私は、皐月を睡眠薬で眠らせ、お風呂場で皐月の手首を切ったのだ。


 そして、皐月が準備していた、復讐のための「遺書」も握り潰した。



 私は、アイラッシュを守るためには鬼にも悪魔にもなれるのである。



――アイラッシュを守るため、というのは少し違うかもしれない。



 私は、のために、皐月を殺したのだ。



 私は、その人のために、アイラッシュで天下を取ると決めた。


 その邪魔をする者に対して、私が手段を選ぶつもりは微塵もない。


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