第29話
悲鳴のもとに駆けつけたとき、そこには凄惨な光景が広がっていた。
「嘘……」
舞依が息を呑む。
一人の裸の女子生徒に大勢のプテラゴブリンが群がっている。
凌辱されているのだ。
「あっ、いやあああああっ! 助けて!」
悲鳴を上げる彼女のもとに俺は駆け寄った。
そして、魔法剣を一閃させ、プテラゴブリンを殲滅する。
ぐったりと倒れ込む彼女を俺は介抱する。
小柄な黒髪の少女は目に涙を浮かべていた。
「あたし……初めてだったのに……」
嗚咽をもらす彼女に俺はなんと声をかければよいかわからなかった。
舞依もつらそうに目を伏せる。
俺が回復魔法を一通りかけると、彼女は気を失ってしまった。
「こんなの……あんまりです」
舞依がつぶやく。
世界は理不尽だ。愛華が死んだことだけでなく、俺はこれまでに知り合いの冒険者が死んだり凌辱されたりするのを何度も目にしてきた。
「冒険者をするってことは、こういう目に合うかもしれないってことだ」
「わかってはいます。でも……この子、あたしのクラスメイトなんです」
「知り合いだったのか。それは……つらいな」
舞依は唇を噛んでうなずく。
もし俺の知り合い……舞依や実菜たちが凌辱されれば、俺も冷静ではいられないだろう。何度も見てきたとはいえ、慣れるものではない。
とはいえ、やるべきことはやらないといけない。俺は少女を背負う。
あたりを見ると、倒れた少女の装備があたりに散らばっている。
「舞依、この子の装備を回収しろ」
「え?」
「たぶん、ダンジョン脱出までこの子は目覚めないし、目覚めたとしても戦力にはならない。だから、おまえがこの子の装備を使え」
「は、はい! でも、この子、盾役じゃないですけど……?」
「防具は使えるし、何より武器は意外と使い物になるぞ」
少女はおそらく黒魔道士役で、杖は破壊されている。
ただ護身のための左手用ダガー……いわゆるマインゴーシュがある。
「舞依は大盾に細剣の装備だったが、マインゴーシュも回避のためにはかなり役に立つからな。長剣とマインゴーシュの組み合わせは試してみてもいいと思う」
「そうなんですか……? 盾役って名前のとおり盾が必須だと思っていましたけど」
「結局、攻撃が受け流せればいいわけで、その意味ではマインゴーシュは有用だ」
後衛の護身用に使われる短剣だが、マインゴーシュには回避能力を高める魔法もかかった魔導具の側面も持つ。
凌辱された子はいいところのお嬢様だったのか、このマインゴーシュはかなり高級品だ。
舞依は納得した様子でマインゴーシュを拾おうとした。
ところが、その際に身をかがめたせいで、ただでさえ丈の短いスカートから下着が丸見えになる。
赤いショーツと白い太ももや尻に、俺はどきりとした。
<ぱ、パンチラ!>
<舞依ちゃん、サービス精神豊富だよな>
<わざとじゃないだろ>
<わたしも橋川さんにパンツをお見せしてもいいんですけど……>
俺も慌てて舞依に声をかける。
「ま、舞依!」
「? なんですか、進一さん?」
「その……おまえ、下着が見えているぞ」
俺の言葉で、舞依はみるみる顔を赤くした。
そして、慌てて姿勢を正して、スカートの裾を押さえる。
「や、やだっ! 進一さん、見ました?」
「悪いが見えてしまった。あと……動画にも映ったと思う」
「は、恥ずかしいです……!」
まさかの全国にパンチラを配信してしまったわけで。
舞依はちょっと涙目になっていた。
そして、俺を上目遣いに見る。
「先生もあたしのパンチラに興奮しました?」
「ガキの下着姿に欲情するわけないだろ」
「でも、少し顔が赤いような……?」
「気のせいだろ」
俺の言葉に舞依はふふっと笑った。
「そういうことにしておきます。でも、配信に映っちゃうのは恥ずかしいですけど、先生が見たいなら、いくら見ていただいてもいいんですよ? 二人きりのときに」
舞依はそう言って、からかうように笑った。
<あとがき>
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