第28話

「それに、あたしも一応武器を持ってますし……少しはお役に立ちたいです」


 舞依はとっさに手近な剣を持ってきたらしい。ただ、いつもの大盾と細剣の組み合わせではなく、攻撃役用の普通の長剣だ。


 それでは盾役の舞依としては実力が半減してしまう。防具もないし。

 それに、仮に舞依がフル装備だったとしても、プテラゴブリンとの戦いで瞬殺されてしまったように、残念だけど俺と一緒に戦えるほどの実力はない。


「無理をしなくてもいいよ」


 俺はなるべく優しく言ったが、舞依はしょんぼりとしたような表情を浮かべる。


「やっぱり……あたしは足手まといですよね」


「そんなことは言ってないさ」


「嘘。いつも先生に助けられてばかりですし……さっきだってゴブリンにも触手のモンスターにも負けて、ひどいことされそうになって……先生に迷惑をかけてばかりです」


「秋原は触手から俺を守ろうと飛び出してくれたろ? あれはすごく助かったよ」


「本当ですか?」


「ああ。ありがとう、秋原」


 俺の言葉に、舞依はぱっと顔を輝かせる。

 小悪魔なギャルっぽく見えて、舞依も素直で良い子だ。

 

「そもそも俺はトラウマのせいで集団では戦闘できないしな。だが、秋原に一つ頼みたいことがある」


「! なんですか?」


「証明用の魔法を使っておいてほしい。俺は戦闘に集中するから」


「御意! お任せください!」


 舞依がおどけて言う。女子高生四人組のなかで一番明るい性格なのも舞依の特徴だ。


「助かるよ」


「あと、実菜みたいに魔力を捧げるご奉仕もいつでもやりますから」


「あれはご奉仕ってわけじゃないんだが……」


「実菜にキスしてましたよね?」


「好きでしたわけじゃない」


「なら、嫌々ですか?」


「そういうわけじゃないが……」


 ふふっと笑って舞依が俺に近づく。

 そして、後ろ手を組んで前かがみになる。ただでさえ大胆なチア服から舞依の胸がこぼれ出そうな形になる。

 

「あ、秋原……」


「実菜とキスして気持ちよさそうにしていたくせに」

 

「気持ちよさそうになんてしていない」


「あたしもほっぺたにはキスしましたから、次は唇ですね」


 そう言って、舞依は自分の唇をぺろりと舐めて、妖艶に微笑む。


<舞依ちゃん、ホントにエッチだよな>


<こんなJKと二人きりなら俺なら襲っちゃいそうだ>


<橋川さん! わたしはもっとエッチで巨乳ですよ!>


 コメントが次々という。そういえば、この固定ファンの女性も同一人物だとすれば、JKらしいのだが……。


 それはさておきもちろん舞依にキスするわけにはいかない。


「言っただろ? ガキは相手にしないって」


「ガキじゃないです! 実菜や智花ちゃんと違って、あたしはもう大人なんですよ?」


 ふふっと舞依は笑った。まあ、たしかに実菜や智花と比べたら、身体的にも精神的にも大人かもしれないが……。

 俺からすれば子供、というのは変わりない。


「ねえ、進一さん。ご褒美がほしいんです」


「ご褒美?」


「はい。触手のモンスターと戦ったときのことで、あたしを褒めてくれましたよね? あれのご褒美です」


「美味いステーキでもおごってやろうか?」


「あ、それも魅力的なのでお願いします! 進一さんと二人きりでご飯なんてデートですね」


 舞依の考えていることとたぶん違うと思いながら言ってみたのだが、ちゃっかりと舞依は言う。


「まあ、おごってもいいけどな」


「ありがとうございます! それはそれとして、あたしのお願いは別なんです」


「というと?」


「実菜はキスしてもらいましたし、玲奈は名前で呼んでもらっているでしょう? どちらかの特権があたしにも欲しいんです」


「玲奈を名前呼びしているなんて、よく気づいたな」


「それはもう、ずっと進一さんのことを見ていますから」


 くすくすっと舞依が言う。


「もちろん、あたしのおっぱいに触ってくれるとか、そういうのでもいいんですけど」


「それはナシだな……」


「なら、最初の選択肢のどちらかをお願いしたいんです。厚かましいとはわかっているんですけど……」


 上目遣いに舞依が俺を見る。少し不安そうだ。

 余裕ぶっていながらも、拒絶されるかもと思っているんだ。そんな表情をされたら断れない。


「まあ、名前で呼ぶぐらいならいいが。あー、舞依?」


「! ありがとうございます!」


 舞依がとてもうれしそうに満面の笑みを浮かべる。

 こんなことぐらいで喜んでもらえるなら嬉しいけれど。


 舞依はおそらく……俺に少なからず好意を持ってくれている。

 だが、その感情に今の俺は応えられない。


 一人でしか戦えない半端者の冒険者。婚約者の死から立ち直れていない男。

 そんな人間がずっと年下の少女を幸せにできるはずもない。

 

 俺は舞依の師匠だ。彼女を一人前の冒険者にすることこそが、俺に求められていることだと思う。


 そんなとき、ダンジョンの遠くから悲鳴が聞こえた。


 俺と舞依は顔を見合わせる。


「行くぞ!」


「はい!」


 もしほかに冒険者がいるなら合流したい。

 それが舞依の覚醒のきっかけになるとは、このときは思いもしなかった。











―――――――――――

いよいよJK冒険者も一人が戦力に……!?


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