友人の家族

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夫の希望を分かっていた利佳子。

だがそれに応える時間も気力も無いのが現実だった。

夫婦の営みに対するとある思いがそうさせていた。

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どう返事をするべきか迷っていた。

なぜなら彼の希望を知っていたから。

叶えられるならば、応えてあげたい。

だけど、それは今の自分にはできなかった。



夫が利佳子に問う。


「利佳ちゃん、うちってこれから子どもどうする?」

「どういう事?晴(はる)がいるじゃない?」

「そうなんだけどさ、利佳ちゃんは何人が理想なのかなって…」


そういう事か。

そもそも私は子どもどころか結婚すら元々望んでおらず、このまま独身者として一生を終えても良いと考えていたほどだ。

それが、まさか自分が家庭を持つこととなるとは思っても見なかった。

それらを幸せな現実として望む者からすれば何とも贅沢な考えなのだが、それはそれで有り難く訪れた日々を迎え入れ、今は初めての育児に奮闘している。


「私はこの子だけでもう充分よ。もういらない。」

「そう…今は忙しいもんね。晴ちゃんもいるし、そうだよね。」


利佳子は夫の希望を察していた。

彼はもう一人、娘の下に弟や妹を作る事を望んでいるいるのだろう。


しかし、私はそう考える事が今はできなかった。

幼い頃に離婚した両親。

後に実父が再婚し新たな家庭を持ち、自分ではない子を授かったと聞いた時、利佳子は無性に悲しくなった。

実際、それまで定期的に顔を合わせていた父との時間も、以降徐々に少なくなり、いつの間にか会う事は無くなっていたのだ。



利佳子はふと後頭部に手を添えられると、夫の顔が近付く。


「んっ、待って…」

「ダメ?」

「これから引き継ぎの資料作らないと…」

「まだ日はあるだろ?…したい。」


次の春から大学へ編入する利佳子は、職場を去るための準備に取り組り掛かっていたのだ。

しかし、利佳子の都合などお構いなしに迫る夫の欲は、どうやら抑えられないらしい。

性欲どころか男性との付き合いも、身体の経験すら少ない利佳子にとって、このような行為は無くても生きて行けるものなのだ。

夫との身体の関係だって、恐らく片手で収まるほどの回数しか経験のないまま子どもを授かり、そして現在に至る。


「んん……」

「愛してる…利佳……」


快人は付いたままのテレビを消すと上半身に身に付けていたトレーナーを脱ぎ、利佳子を更に愛した。

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