第3話「逗留追懐」
私と
少し互いに距離を空けて。バックをそっと置いた。
白色のソファーは廃墟に似つかわしくないほど、綺麗だった。座れば吸い込まれる。何色も染める事のできない白さは、けれどこの異質な部屋に似合っていた。
「何か飲むか?」
「……まともなもの、あるの?」
私は旧友に質問を投げながら、頭蓋骨と周囲を見た。
「到底、まともな飲み物があるとは思えないけど」
「腐った水しかない」
「そんなもので、もてなそうとしないで」
「そりゃ、残念」
と、
「3年ぐらいか、お前と会ってないのは」
夏なのに、黒いジャケットに中は白のノースリーブ。袖を通さず、羽織ったジャケットから見える死人のように白く細い腕。着ているジーンズは、細く長い脚を強調させていながら、少しダメージが入っている。中学生の時代もこんな感じだったかな、と想い出す。
灰色に染まった髪色と血のように紅い唇。
昔からの男勝りな口調が更に懐かしい。
煙草を取り出した
「変わってないね。
「3年ごときで人はそんなに変われない。変わったとしたら、中身が元から無い奴だ。後付けで中身のない器に、仮初の液体を注いで自分ではない何者かになろうとしている奴だけだ」
「そうかなあ」
「……世間話ってわけじゃあ——」と
「
「お前は私の恋人かよ」
くつくつ、と
「噂になってた」
「ああ……こいつらか?」
壊れた
「今度は誰を殺したの?」
「おいおい。こっちは高校いかずに家業を継いでんだ。それに答えたら依頼者のプライバシーってもんがあんだよ」
「わざわざ友人が顔見せに来てるんだから、少し情報もらってもいいと思うんだけど。ケチ」
「ケチって言われてもなあ」
そんな彼女が、あの頃を微かに想い出させる。
「覚えてる? 中学生の頃の話。ここに1度、2人で来たよね」
「正確には3人だろ。……おい、やっぱ世間話じゃねえかよ」
「酷い言いようね。想い出話じゃない」
「世間一般じゃあ、それも世間話っていうんじゃねえのか?」
「人を殺す
私はくすり、と笑った。彼女もまた微笑んでいる。
「やっぱり
「
彼女の顔には安心感が漂っていた。それは私の顔をみて懐かしむ想いなのか。
「私にとっては、お前とのまともな想い出はここしか覚えてなくてな」
「もしかして……呰百合も会えると思ってた?」
「……まあ、その」
彼女は頬を少し染めている。
誤魔化す様に人形のように細い人差し指で頬を掻く。
「少しだけ、な……」
「へえ。案外、可愛いところあるんだね。
「うっさい」
こちらを向いてやけになった
あのさ、と
「お願いが、あるんだよ」
「お金なら貸さないわよ」
「そうじゃねえよ。てか、まだ高校生だろ。借りねえよ。むしろ貸してやるよ」
「友人には借りたくないな。困ったときは胸貸して?」
「ハッ。私に貸せる、胸はない」
堂々と私の方を向いて、自分の胸を指し示す呰百合の胸はせいぜいサイズがBだ。私の方が発育は良い。彼女のそんな姿に私は微笑んでいた。
「で、お願いって?」
「今日、ここに泊まれるか?」
「え?」
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