第3話 恵那と連絡先交換

僕は、訓練後にログアウトすることにした。

ログアウトは、基本的には宿屋が推奨となっている。

アバター自体は、残ってしまうらしい。

その為、セーフティが働く宿屋や個人キャンプ、ギルドホームなどが推奨とされている。

まあ、現状では初心者には宿屋しかログアウト先がない。


僕は、宿屋へと向かう。

宿屋は、冒険者ギルドから然程離れていなかった。



翌朝。僕は、学校へ向かっていた。

結局、昨日はログアウトした後にそのままカプセルVR機器で寝落ちした。

その所為か、身体が痛い。

ゲームをして寝落ちなんて今までよくしてきたはずなのに、今日に限っては異常に身体が痛い。

たぶん、慣れない椅子で寝た所為だろうな。


僕は、ぎこちない歩き方で学校へ向かう坂へと差し掛かった。


「よう、颯介!おはよっす」

「ああ、衛。おはよう」


ちょうど、昨日と同じくらいの位置で衛が声を掛けてきた。

まあ、大体この坂のあたりでいつも会う気がするな。


「ん?颯介。お疲れか?」

「あはは、昨日寝落ちしちゃってさ」

「ああ、慣れない椅子で寝たからか」

「うん、多分そんな感じ」


僕は、首を回したりしながら歩いていく。

衛は、そんな僕を見ながら笑っていた。


「んで?あのあとどうしたんだ?」

「そうだよ、聞いてくれよ」


僕は、昨日あったことを衛に話すのだった。

そう、称号を手に入れたことを。


「称号?え、マジか」

「倹約家と堅実だったかな、ほらこれ」


僕は、ゲームデータとリンクさせたスマホを衛に見せる。

彼は、スマホを覗いてくる。


「マジだな・・・そんなのあったのか」


僕らは、昇降口から教室へと向かった。

衛は、腕を組みながら首を傾げていた。


教室に着くと僕は、自分の席へと向かう。

席の方を見ると、浅井さんがスマホを弄りながら席に着いていた。


「浅井さん、おはよう」

「・・・天宮君、おはよう」


彼女が、笑顔で挨拶を返してくれた。

僕は、席に着く。

そこへ、衛が鞄を置いてやってくる。


「なあ、颯介。

さっきの取得条件なに?」

「ああ、そう言えば言ってなかったね。

倹約家がスキルポイントを使用せずにスキルを取得で、堅実はステータスポイントを使用せずにステータスを上昇させるだったと思うよ」

「ん?え・・・なんて?」


衛が、不思議なモノを見るような顔で僕の顔を見ていた。

イケメンの半目とか見たくないんだけど。

なんかむかつく。


「てか、ウェポンとマジックなんにしたんだ?」

「え、選んでないよ」

「は?いやいや選んでないって・・・悪い。

最初から教えてくれないか?」

「ホームルーム始まるからあとでいいか?」

「く、仕方ねぇなぁ」


衛は、そう言って帰っていた。

どっちが仕方ないのやら。

衛が席に帰って行くと、浅井さんが僕の方を向く。


「天宮君、いまのはゲームの話?」

「うん、僕さ。昨日からSLO・・・あ、SECOND LIFE ONLINEってゲームを始めたんだよ」

「え、SLO・・・始めたんだ。

えっと、私もやってるの」

「そうなの、まだ僕初心者だけどよかったらSLOでも仲良くしてくれたら嬉しいな」

「もちろんだよ。

あのね、よかったら今日INするときに連絡くれたら会いに行くよ」


浅井さんは、嬉しそうに明るい表情になる。

あれ?でも、連絡か。


「じゃあ、浅井さん。

連絡先教えてもらえる?」

「うん、えへへ。じゃあ、これ」


浅井さんは、僕にスマホに表示させたQRコードを見せてきた。

僕は、自身のスマホで読み込む。

そして、僕は彼女をフレンド登録してスタンプを送る。


「うふふ、可愛い」


僕が送ったクマのスタンプを見て浅井さんがそう呟いた。

浅井さんは、初めて見た昨日とは随分と印象の違う可愛い笑みを浮かべていた。


「これで、連絡できるね」

「うん、昨日交換しようと思ったのにすぐ帰っちゃったから」

「あ、ごめんね。昨日セカンドモデル同梱版が届く日だったから」

「え!それものすごく競争率高かったんじゃ・・・」

「うん、ショッピングサイトに張り付いてやっと入手できたんだよ。

ファーストモデルの時は、電気屋に行く羽目になって・・・結局買えなかったんだよね、あはは」


僕は、少しあの日の事を思い出した。

あの日、電気屋の前で災難に巻き込まれた女の子のことを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る