第3話 恵那と連絡先交換
僕は、訓練後にログアウトすることにした。
ログアウトは、基本的には宿屋が推奨となっている。
アバター自体は、残ってしまうらしい。
その為、セーフティが働く宿屋や個人キャンプ、ギルドホームなどが推奨とされている。
まあ、現状では初心者には宿屋しかログアウト先がない。
僕は、宿屋へと向かう。
宿屋は、冒険者ギルドから然程離れていなかった。
◇
翌朝。僕は、学校へ向かっていた。
結局、昨日はログアウトした後にそのままカプセルVR機器で寝落ちした。
その所為か、身体が痛い。
ゲームをして寝落ちなんて今までよくしてきたはずなのに、今日に限っては異常に身体が痛い。
たぶん、慣れない椅子で寝た所為だろうな。
僕は、ぎこちない歩き方で学校へ向かう坂へと差し掛かった。
「よう、颯介!おはよっす」
「ああ、衛。おはよう」
ちょうど、昨日と同じくらいの位置で衛が声を掛けてきた。
まあ、大体この坂のあたりでいつも会う気がするな。
「ん?颯介。お疲れか?」
「あはは、昨日寝落ちしちゃってさ」
「ああ、慣れない椅子で寝たからか」
「うん、多分そんな感じ」
僕は、首を回したりしながら歩いていく。
衛は、そんな僕を見ながら笑っていた。
「んで?あのあとどうしたんだ?」
「そうだよ、聞いてくれよ」
僕は、昨日あったことを衛に話すのだった。
そう、称号を手に入れたことを。
「称号?え、マジか」
「倹約家と堅実だったかな、ほらこれ」
僕は、ゲームデータとリンクさせたスマホを衛に見せる。
彼は、スマホを覗いてくる。
「マジだな・・・そんなのあったのか」
僕らは、昇降口から教室へと向かった。
衛は、腕を組みながら首を傾げていた。
教室に着くと僕は、自分の席へと向かう。
席の方を見ると、浅井さんがスマホを弄りながら席に着いていた。
「浅井さん、おはよう」
「・・・天宮君、おはよう」
彼女が、笑顔で挨拶を返してくれた。
僕は、席に着く。
そこへ、衛が鞄を置いてやってくる。
「なあ、颯介。
さっきの取得条件なに?」
「ああ、そう言えば言ってなかったね。
倹約家がスキルポイントを使用せずにスキルを取得で、堅実はステータスポイントを使用せずにステータスを上昇させるだったと思うよ」
「ん?え・・・なんて?」
衛が、不思議なモノを見るような顔で僕の顔を見ていた。
イケメンの半目とか見たくないんだけど。
なんかむかつく。
「てか、ウェポンとマジックなんにしたんだ?」
「え、選んでないよ」
「は?いやいや選んでないって・・・悪い。
最初から教えてくれないか?」
「ホームルーム始まるからあとでいいか?」
「く、仕方ねぇなぁ」
衛は、そう言って帰っていた。
どっちが仕方ないのやら。
衛が席に帰って行くと、浅井さんが僕の方を向く。
「天宮君、いまのはゲームの話?」
「うん、僕さ。昨日からSLO・・・あ、SECOND LIFE ONLINEってゲームを始めたんだよ」
「え、SLO・・・始めたんだ。
えっと、私もやってるの」
「そうなの、まだ僕初心者だけどよかったらSLOでも仲良くしてくれたら嬉しいな」
「もちろんだよ。
あのね、よかったら今日INするときに連絡くれたら会いに行くよ」
浅井さんは、嬉しそうに明るい表情になる。
あれ?でも、連絡か。
「じゃあ、浅井さん。
連絡先教えてもらえる?」
「うん、えへへ。じゃあ、これ」
浅井さんは、僕にスマホに表示させたQRコードを見せてきた。
僕は、自身のスマホで読み込む。
そして、僕は彼女をフレンド登録してスタンプを送る。
「うふふ、可愛い」
僕が送ったクマのスタンプを見て浅井さんがそう呟いた。
浅井さんは、初めて見た昨日とは随分と印象の違う可愛い笑みを浮かべていた。
「これで、連絡できるね」
「うん、昨日交換しようと思ったのにすぐ帰っちゃったから」
「あ、ごめんね。昨日セカンドモデル同梱版が届く日だったから」
「え!それものすごく競争率高かったんじゃ・・・」
「うん、ショッピングサイトに張り付いてやっと入手できたんだよ。
ファーストモデルの時は、電気屋に行く羽目になって・・・結局買えなかったんだよね、あはは」
僕は、少しあの日の事を思い出した。
あの日、電気屋の前で災難に巻き込まれた女の子のことを。
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