第12話
「アタシ両方いけるタイプなのよ。こんなにカワイコちゃん達ならちょっと楽しませてもらおうかしら? うふっ」
マールが獲物を狙うような目つきでココとリディアを交互に見ると
「ひゃっ、なんだかゾワッとしたわ! ココやっちゃってー!」
「? なんだか良くわからないですが、リディアお嬢様はわたしが守ります!!」
ココは魔方陣を構築、展開する。ココの得意属性は水、足元から水が溢れ出しココの前で水球を形造るとマールへ向かっていく。
「へぇ、水属性かぁ、相性でいうとアタシの分が悪いわねぇ。でもね、相性が悪くても魔力量の差があればゴリ押しもいけるのよっ!!」
マールは喋りながら飛んできた水球に対処する。ココの顔よりも大きな水球だったが、マールが手のひらから更に火球を出すと水球にぶつかり水球を蒸発させる。
「こんな感じ。じゃあちょっとぐらい火傷してもらおうかしら。」
にこりと笑うとマールの周囲に幾つもの炎の矢が現れる。あえて火力を抑えているのか一本一本は小さめだが、優に30本は超える数が浮かんでいる。
「じゃあ、先ずは動けないように脚から狙うからねぇー。ちゃーんと避けるか防ぐかしてねー。」
言うが早いか、周囲に浮遊する炎の矢が次々と射出されていく。
「きゃあっ」
間一髪、飛んで来る炎の矢を避けつつココが走り回る。
「んー? やっぱりあの子の足が透けて見える気がするなぁー?」
マールの周りから次々と射出されては次々と補充されていく炎の矢。
威力は弱いらしく着弾した石畳みも軽く表面を焦がす程だが、人体に当たれば火傷は免れないだろう。
ココは逃げ回りながらも徐々に霧を発生させていく。
だんだんと周囲が視界不良になっていく。
「なーるほどー。霧で隠れて不意打ちかなぁ? なかなか考えるねぇ。だ、け、どっ!」
マールが腕を払うと熱を孕んだ熱風が霧を文字通り霧散させる。
すでにマールの近くまで後方から接近していたココは驚いて立ち止まる。
「みーつけたぁ」
楽しそうに笑い、ぐるりと顔だけココのいる後方に向けたマールから炎の矢が殺到する。
「きゃあっ!!」
避けきれず数発を脚に受けてしまう。
「そこで大人しくしててねー。そしたらもう痛い事はしないからさぁー。もう1人のお嬢ちゃんも捕まえなきゃだからねー。」
「くぅっ、リディアお嬢様は傷つけさせません!!」
痛みに耐えてココが立ち上がりと、黒かった瞳が金色に変わっていく。
周囲に邪悪なオーラが漂い始め、今までなんとか象っていた生前の輪郭が朧げになっていく。
「なっ、なに? やっぱり幽霊だったの? レイス? まさかファントム?」
ココの体から恐怖のオーラが吹き荒れる。見たものを恐慌状態に陥らせるそのオーラは魔法抵抗力のない者だと精神に異常をきたし全力で対象から逃げる程の恐怖を受ける。
マールはまだアンデットに対しての知識があり、自身が高位の魔法使い、魔術師だった事もありなんとか抵抗できているが、通常なら彼我の力量差を瞬時に判断して逃げの一手を取るべきところが、ココの可愛らしい外見の為警戒レベルが下がり切っていた。
「やばい、何!? この魔力量半端じゃないわ!! なんでファントムがこんな所にいるのよ!?」
マールの疑問は尤もで、本来ゴースト系上位種であるファントムは地縛霊であり、一定の場所から動けない。
しかし、マールは勘違いしていた。メッフィが悪戯に創り出したのはファントムではなく、アンデット系、最上位種 死霊たちの王リッチだった。
「リディアお嬢様はわたしが守りますぅ!!」
ココはいつも通りに水魔法を使おうとすると辺り一面に大量の水が現れる。
「はぁ? やっばぁ! やばい! やばい! ファントムなんて1人じゃ勝てないわよ!?」
マールは漸く逃げる事を選択し、目についたリディア達の馬車を奪って逃げようと御者の乗る御者台に手を掛けると
バチっと軽く弾かれる様な衝撃を受けると馬車にかけてあった幻術が解ける
「ひぃっ!? デュ、デュラハンっ!? あ、あ? 思い出した! アミュレット着けた時にも……」
驚愕するマールの後ろから大量の水の塊が飛来してきていた。
人を余裕で包み込む大きさの水球に飲み込まれ踠きながらマールは意識を手放した。
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