第11話
日が暮れ始めた王都。
メインの通りからは離れていても、20万人もの人間が生活する巨大都市、深夜でもなければ人通りはあるはず。普通ならば。
「あーーめんどくせーなー。なーんか乗り気になんねーんだよなぁ」
緑色の髪をした伊達男が欠伸をしながら路地の階段に寝転がる。
「…… お嬢の…… 頼みだ……」
近くにいるフルプレートアーマーを着た大男が言葉少なめに答える。
「んな事いってもなぁー、たかだか学生を痛めつけるのに俺たち使うかぁ?もう昔と違って金級になったんだぞ、金級!」
「…… 旦那様…… 恩ある……」
「いやぁ、そりゃあ…… そうなんだけどよ。お前はいいのかよ、ラルフ? 」
「……」
「はいはい。無視ですかーっと」
緑髪の男とラルフと呼ばれた大男が話していると、黒いローブを着た女性がフラフラと歩いてくる。
「ん? マールが帰って来たな。ん? なんか様子が変だな?」
緑髪の男が女性を見つけるが、女性はフラフラと焦点が合ってないような目で歩いて来る。
「おーい! マール、どうした? 大丈夫か?」
「…… レン、ト? あれっ?いつの間に戻って来たんだっけ?」
「おいおい大丈夫か? これから一仕事だってのに。具合でも悪いのか?」
マールと呼ばれた女性は急に目が覚めた様にハキハキし始めた。
「ん、ううん。大丈夫、ちょっとボーっとしてただけ。それよりも対象の馬車に惑わずのアミュレットを付けてきたわ。これで対象は迷わずにこの道を通る筈よ。」
「ボーっとしてんのが大丈夫かって話しなんだが…… まぁ大丈夫ならいいけど。じゃあ、作戦通り、馬車が来たら俺が執事くんを小突いて、ラルフが護衛の騎士、マールは対象のお嬢ちゃん。」
「…… 了解」
「はーい。うーん、でも女の子の顔に火傷させろってちょっとかわいそうよね、オデコにちょこっとだけでもいいかな?」
ラルフとマールはそれぞれ返事をするがマールはちょっと困った様に顎に手を置く。
「まぁ、一応やっとけばお嬢もそんな文句いわねーだろ。」
「良かったぁ、女の子虐めるのかわいそうだしねー。でも、なんだか凄い魔法使うらしいから、もしかしたら本気出しちゃうかも。ふふっ」
レントがぶっきらぼうに言うと、顔を輝かせて嬉しそうに手を叩く。
「お前が本気出したら街が火の海になるからやめてけれ」
〜〜〜〜〜〜〜〜
「レント、来たよ! サーチに掛かった。あと5分しないで来るよ!」
「はいはい、了解っと」
マールが対象の接近を知らせると、レントはやる気無さそうに、彼の得物である短槍を肩にかける。
やがてやって来た豪奢な馬車。侯爵家の馬車に相応しい装飾がされている。
道の真ん中に立つレントの前でゆっくりと馬車が止まる。
「ちょーっとすんません、ここ通行止めなんですわ。」
あやしい目出し帽を被ったレントが通せんぼするが、御者の男性は見つめるだけで何も言わない。
「あん? もっしもーし?」
すると馬車から執事服を着た少年が降りて来る。
「失礼、こちらの道が通行止めとは聞いてなかったんですが、何かあったんでしょうか?」
「んーー、いやぁ、あったってか、これからあるって感じかなぁ」
ヘラヘラと要領を得ないレントの物言いに、マールとラルフが横から出てくる。
「やっぱアンタに任せるんじゃなかったわ、話し進まなそう。アタシ達ねお仕事でアナタ達にちょっとお仕置きしないといけないの。ごめんねぇ。大人しくしてれば直ぐに済ますから、ね、目を瞑って数数えてればいいからぁ。へへへっ。」
「おい、お前が危ない奴になってんじゃねーか!」
メッフィをみて鼻息を荒くするマールにレントがツッコむ。
「なるほど。では、私達のお相手をしてくれると云う事ですね?」
メッフィが言うと馬車から仮面を着けた騎士と、メイドが降りて来た。
「メイド?あれっ?いたっけ?」
「まぁったく、ちゃんと調べてなかったのかよ?」
マールが疑問を口にするとレントが呆れる。
「それでは、私達はあちらでやりましょうか。」
「ヤルヤルーー」
「おい、お前じゃねーだろ! 」
「うぅっ、ショタぁ……」
離れて行くレントとメッフィを見てマールは大袈裟に悔しがる。
「…… お前…… こっち」
ラルフが顎でしゃくると仮面の騎士クロードがついて行く。
「はぁ、じゃあアタシはお嬢ちゃんだけどメイドちゃんも戦えるの?」
「リディアお嬢様はわたしが守りますわぁ!」
大きな丸メガネをした、いかにも守られる側のオドオドしたメイドが応える。
「ココ、大丈夫? 無理はしないでね?」
いつの間にかメイドの後ろに対象の令嬢が立っていた。
(なに!? この美少女!? 推せる! このメイド胸でかぁっ!? やばぁ! ん? あれ? このメイド…… 足が透けてるっ?)
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