新体制初っ端からやらかした話。

 とうとう始まった新体制。恐怖と不安を抱えて出勤しました。やれるところまでは失敗しないようになんとかこなし、昼食のデザートである果物のカットを任されました。切り方を教わり、慣れない包丁で慣れない切り方を自分なりに急いで取り掛かりました。


「10:30までに終わらせて、片付けもしてね。」


 そう言われた時点で時刻は10:15…え、あと15分で全員分切って盛り付けんの?



 絶対間に合わん!!!!



 そう思っても必死にやりました。時計を気にしながらも頑張ったつもりでした。

 なんとか終わらせたときには、まな板はオレンジの果汁まみれ、時刻は10:40…はい10分オーバーしたーー!!!


「遅くなってしまってごめんなさい!すぐに片づけます!」


 急いでシンクに器具を置き、オレンジを冷蔵庫にしまって、作業台を消毒します。


「本当は10:30までに終わらせなきゃ、次の作業にとりかかれないならね。」


 汚染を避けるため、作業台を消毒しなければ、次の工程に移れません。それは大学でも学んだこと…それは分かっています。言っていることも分かっているんです。私が不器用で、効率も掴めないまま終わってしまったことが原因なのも。


「ごめんなさい。善処していきます。」



 *********************


 休憩に入り、どうすれば今日よりも効率よくできるかを考えながら給食を食べました。家でも練習するしかないなぁ…なんて考えていると、


「…オレンジの数足りない。」


 自分の分をよそっていたリーダーがそう言いました。


 …え、足りない…て、1人オレンジ1/8カットじゃないの…?

 手を止めてリーダーの基へ向かいました。


「私調理室から予備持ってきます。」


 私がやらかしたことだ、自分で片付けなければ…そう思いそう言いました。


「いいよ、私行くから。」


 そう返され、リーダーは走って出ていきました。


 …やらかした…完全にやらかした…

 ごめんなさい、どうしよう、予備を追加して足りるだろうか、迷惑かけてしまった、職員も同じ大きさか確認しなかった私が悪い、後で改めて謝らないと…不安と謝罪、自責に侵食され、残りの給食を食べる気力は無くしました。

 昼食用の休憩室を後にし、残り時間を過ごすための休憩室に向かいました。


「一人で作業させない方がいいですよね。果物も、オレンジとバナナ以外使わない方が良い。間違えたら取り返し付かない。」


 休憩室の扉に手をかけたとき、そう呟くリーダーの声が聞こえました。これは、調理師さんと話してるな…ああ、また手間増やさせてしまった、迷惑かけた、まだ形成されていない信頼を築くためにかかる時間が増えてしまった…ぐるぐると罪悪感と自分への嫌悪が渦巻き、休憩室に入ることが嫌で、怖くて仕方ありませんでした。でも謝らなくてはいけないことは変わりません。意を決して入り、向かい合って座っていたリーダーと調理師さんの傍に正座しました。

 調理師さんは、穏やかに大丈夫だよ、と言ってくれました。優しさが有難いと思うと同時に、その優しさが痛くも感じました。同じ失敗をしないように気を付けなければと強く思いました。そして、姿勢をリーダーに向け謝罪しました。


「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。」


 目を見て言い、頭を下げました。


「大丈夫だよ。」


 そう言ってくださり、顔をあげてお礼を言いました。以後気を付けることも伝えました。でも、


 リーダーは一度も私と目を合わせてくれませんでした。

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