第034話 水田の大決闘

 シャチの武器と言えば……やっぱり牙!

 だからわきから、背後に回り込んで攻めるっ!

 水田の泥の上なら、わたしのほうがすばやく動けるはず──。


 ──バシッ!


「つっ……! いった~い!」


 ──はずだったのにぃ!

 背中……上から思いっきり叩かれたぁ!

 おまけに爪みたいなので引っ掻かれて、すっごいヒリヒリするぅ……ふえぇ!

 レームさん先制の……平手打ちっ!?

 ううん、いまのは……尾鰭っ!


「……アタシの牙恐れて、後ろに回り込む気だったろ? でも残念。アタシの尾鰭は、牙よりも性悪でねぇ! ハハッ!」


 えっ……?

 わわっ、レームさんの尾鰭……おろし金みたいに毛羽立ってる!

 まるでネコの舌みたいにザラザラ……。

 尾鰭以外は全身ツルツルなのに、ど……どういうことっ!?


「この尾鰭のとげかい? こいつはセイウチ、クジラ、ダイオウイカ、漁師……なんかと戦ったときに受けた傷跡が、硬質化したモンでねぇ。この棘で、敵をズタズタに引き裂くのさっ! ハハハッ!」


 ひええええっ!

 そ……そんな凶悪な尾鰭、痛いに決まってますっ!

 それに、戦歴凄すぎですっ!

 わたしが戦った中で一番強かったの、せいぜい百キログラム級のイノシシ……。

 桁が違いますっ!


「さあ、今度は牙の威力も見せてやるよっ! いくぜっ!」


 ひいいいいぃーっ!

 レームさんが口の中見せて、正面から這って迫ってくるぅ!

 あのズラッと並んだ牙に噛まれたら……絶対痛いっ!

 いくらサンショウウオの再生力が強くても、痛いのはいやぁ!

 一応わたしの口にも牙あるけれど……申し訳程度だし~っ!

 な、なにかわたしにも武器、武器~っ!


「……あっ!」


 た、たしかが、そこの石積みの隙間に……!

 ん……あった!

 ありましたっ!

 一か八か勝負ですっ……でええぃ──!


 ──ザシュッ!


「つうっ……なっ!?」


「て……手応えアリですっ!」


 いつかカレー屋さんが、棚田を荒らしにきたときに落としていった鎌!

 そのまま地面に置いてたら危ないと思って、そこの石積みの隙間に差しておいて……そのままにしてましたっ!

 ちょっと錆びてるけれど……ないよりマシですっ!

 包丁さばきで鍛えた刃物さばき……お見せしますっ!

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