第033話 寿司食い放題

 ──真のレームさんは、巨大なお魚の姿……!

 ……でもわたし知ってる。

 あれはお魚みたいだけれど、実は別の生き物。

 わたしがサンショウって呼ばれながらも、魚類じゃなくて両生類なように。

 体の上半分は黒、体の下半分は白……。

 お魚のようだけれど鱗はない、ツルツルのボディー……。

 頭から口先まで尖ってて、大きなひれがあちこちに……。

 そう、レームさんの正体は────。


「────レームさんの正体は……クジラっ! 哺乳類!」


「ちげー! アタシはシャチだ! 溜めたわりには外してきたなぁオイ!」


「ちょっ……ちょっと、水面バシャバシャ叩かないでくださいよぉ! この段以外の田んぼでは、稲が育ってるんですからぁ」


「あ、わ……わりぃな。じゃあ、アンタの寝床のこの空き田んぼから出たら、リングアウトで負け……ってことで。いいなっ!?」


「『いいなっ!?』じゃないですっ! この勝負、わたしが勝ってもなんにもメリットないじゃないですかぁ! 一方的すぎますって!」


「男と女ってそんなモンだろ? ロディさんにちょっかい出す女、どーせこの先も出続けるんだからさ。アンタだって、ロディさんのために操を守んなきゃならねぇ。自衛だよ、自衛! 得がねーから守らねーなんて言ってたら、旦那をすぐ掻っ攫われちまうぜ?」


 うううぅ……。

 筋が通っているような、理不尽なような……。

 胸鰭クイックイッさせてるのも、挑発的ぃ!


「ンじゃあさ。アタシに勝ったら、遠出の方法、教えてやるよ。この棚田……ロディさんの土地から出られないんだろ? 眷属のしきたりでさ?」


「あっ……! そういえばレームさん、どうして海から遠いところで活動できるんですかっ!? レームさんって、海の眷属の守り神なんですよねっ!?」


「だからそいつは、アタシに勝ったら……な! オマケだ。寿司食い放題もつけてやるぜっ!」


「寿司食い放題……ごくっ! は、話しても引いてくれそうにないですし……こうなったら受けて立ちますっ! 淡水の田んぼホームグラウンドで、海の生物に負けるわけにはいきませんっ!」


 ……あうっ!

 「寿司食い放題」に背中押されて、勝負受けちゃった!

 えっと……シャチってやっぱり、噛みつきが得意なの……かな?

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