第032話 皆既月食
「レームさん、どうして今時分ここへ……って!? 見られたっ! わたしの正体……見られちゃった!」
「けっ……鈍い女だな。アタシが『口うるさい小姑』って言ったの、スルーかよ」
「……はい? イントさんは、確かに口うるさい小姑ですけれど……?」
「「はああぁ~」」
あっ……なんですなんですっ!?
顔の高さ合わせて、ダブルで溜め息って!
イントさんなんか、軽蔑丸出しのジト目!
「……サラ? 彼女がわたくしを『口うるさい』と言ったのは、すなわちわたくしと会話ができる……ということですわ」
「あっ……! じゃあレームさんももしかして……人間じゃ……ないっ!?」
「そのようね。正体はまだ聞いていませんが、サラ……。あなたと同じほどの、巨大な生物の存在を感じます」
「わ、わたしと同じ大きさって……。この体と……ですか?」
サンショウウオのわたしの体は、口先から尻尾の先までだいたい二〇メートル。
それと同じくらいの大きさって……レームさん、いったい何者っ!?
「……なあ新妻さん、アタシと勝負してくんねぇか? ロディさんを賭けて」
「……はい?」
「アンタが人間じゃないのは、出会ったときから薄々感じてた。そしてこの小姑さんから、正体も聞いた。要するに……だ。人間の夫婦としての、正式な手続きを踏んでねぇ女。内縁の妻か、通い妻か……ってとこだ」
「むっ……! わ、わたしたちはちゃんと、キスを交わして夫婦の宣誓を執り行いましたっ! 立派な夫婦ですっ!」
「でもアンタに戸籍はねぇ。書類上ではロディさんは独身。その点アタシは、人ならざる者でありながら、どーゆーわけか戸籍持ちでねぇ……。アンタがいなくなりゃ、独身男と独身女のフツーの夫婦の出来上がり……ってわけさね。ハハッ!」
「むむむむぅ! さっきからもったいぶった言いかたばっかり! レームさんに本性があるんなら、その姿で話をしてくださいっ!」
「いいぜ。ただし、アタシが真の姿を見せたときが、勝負の始まりだ。勝ったほうがロディさんの妻の座に就く。それじゃあ……
──ダッ!
あっ……レームさん、イントさんを手放して高々とジャンプ。
満月をバックに、横向きの黒いシルエットを見せて……。
────ぶわわわわっ!
わっ!
レームさんのシルエットが一気に巨大化!
一瞬で満月が消えたっ!
真のレームさんが……わたしと同じ段へと落ちてくるっ!
──バシャアアアッ……ザバアアァアアンッ!
「レ……レームさんっ! その姿って──!」
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