第031話 星遊び

 ──水無月五日(晴れ)夜、満月


 ……昼間の一件があって、今夜は寝室別々。

 わたしはサンショウウオの姿で、水田のベッドで夜空見上げて星遊び中。

 森の沼でもやってた、星と星を線で繋いで形を作る一人遊び。

 星を繋げて作った星……。

 難易度高めなハートマーク……。

 見える範囲で作れる、一番大きな四角……。


「……………………ううぅ~」


 うーん……やめやめっ!

 人里は、お空が丸見えでキリがないっ!

 この星遊び、枝葉の隙間から見える、限られた夜空でやるから成立してたのね……ふぅ。

 そもそも人里の遊びが楽しすぎて、この星遊び、もう刺激がな~い!

 わたしもいよいよ、人間の生活に染まっちゃったなぁ……。


「……レームさん。事故起こさずに、ちゃんと帰れたかなぁ?」


 あのあとレームさん、無事に呼吸整えて……。

 「結婚祝いだ!」って、新鮮な魚介類たくさん置いてってくれたけど……。

 帰り際の顔、めいいっぱい頬吊り上げて、いかにも涙我慢してるふう。

 気の毒だけれど、わたしもロディさんも、なにもしてあげられない……。

 いや、ロディさんにはあるのかもだけど、それはわたしにとってしてほしくないこと……だよね。

 失恋って…………怖いなぁ

 なるべく経験したくない……。

 っていうか、もう結婚してるから大丈夫。

 ……ああでも、わたしが妻としていたらなかったら、ロディさんから離婚されたりするのかも……?


「サラ! 妻未熟罪につき、ここに離縁を宣誓する──!」


 ……なんて。

 いまのセリフ、ロディさんの低音イケボイスでなら、一度聞いてみたいかも……。

 ……いやいや絶対聞きたくない聞きたくない、うん。

 そもそも妻未熟罪って……なに?


「……サラ、いるんでしょう? 泥から出てきてくださらない?」


「あらっ? この小姑ネコボイスは……イントさん?」


「……なんですのそれは。まあいまはとにかく、わたくしの救出を急ぎなさいな」


「救出……ですか?」


 救出って……どういう状況?

 声は……わたしがいる棚田最上段の、その上の土地から。

 でも、イントさんの声の位置が、いつもより高い気がする。

 ちょうど……人間の顔の高さくらい。

 とにかく一度、泥から全身出さなきゃ……。


 ──ザザザザザザザザ……ザバアッ!


「もぉ、なんですか……イントさん。人に見られないよう、なるべく全身出したくないんですけどぉ……って! レームさんっ!?」


 上の土地に、行商中と同じ格好のレームさん!

 その右手には……首根っこ掴まれて、ぶら下げられてるイントさん!

 これって……どういう状況っ!?


「よーお、新妻さん。小姑がいて大変だな。ハハッ!」

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