第017話 おねだり上手

 ──帰宅。

 旦那様へ、いまの出来事を始めから終わりまで報告。


「……というわけで、なんとか追い払ってきました! 田んぼ荒らし!」


「お手柄でした、サラさん。いまの話を聞く限り、カレー屋の彼、米へのこだわりは本当は薄そうですね」


「えっ、どうしてですか? 稲を荒らそうとしたから、ですか?」


「もちろん、それが一番ですが。サラさんを『トカゲのバケモノ』と呼んだのでしょう?」


「……はい」


「水耕をリスペクトしている者であれば、そこで出てくる名前は爬虫類ではなく両生類。イモリかサンショウウオ、あるいはオタマジャクシのはずです」


「な、なるほど……」


「恐らく『あくまでカレーライスの一部』として、米にこだわっているのでしょう。彼を来るのを見た従業員も、『田んぼには目もくれず、事務所へ一直線に向かっていた』と言っていましたので」


 はあああ~。

 確かに、本当にお米へこだわりがある人なら、稲や田んぼの状態をよく見ますし、そこに棲んでいる生物も知ってますよね。

 わたしや従業員さんの話だけで、そこまで見抜くなんて……。

 さすがは旦那様です!

 いえ、もしかすると……。

 あのカレー屋さんと話してる時点で、その性根を見抜いてたのかも……。


「……ともあれサラさん、大切な稲を守ってくれて、ありがとうございます」


「ど、どういたしまして……。ロディさんが大切なものは、わたしにとっても大切ですから……」


「なので今後、危ない目に遭いそうになったら、まず僕を呼んでください。サラさんは僕にとって大切な人なんですから、まず自分を守ることを考えてくださいね。これでも案外、腕っぷしは強いですから」


 ひいいいぃ……ありがたきお言葉!

 どうしてこんな口説き上手な人が、いままで手付かずだったのぉ!?


「案外だなんて、そんな……。ロディさんがたくましいのは、よく知ってます……。アハッ♥」


「……おっと失礼。そういう意味で言ったのでは、なかったのですが。ははは……」


「そのたくましさ……。今夜も感じさせてもらって……いいですか♥」


「おやおや。サラさん、意外とおねだり上手ですね。それでは一緒にお風呂から……いきますか?」


「……はい♥」


 あああぁ……!

 ロディさん、毎日肉体労働で疲れてるのにぃ!

 夜のおねだりは、三日に一度って決めてたのにぃ!

 昨日もシてもらったばかりなのにぃ!

 で、でも……。

 稲を守ったお礼……と、いうことで?

 アハハハハッ♥

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