第027話 傷跡フェチ(のネコ)
──水無月二日(ちょっと曇り)
きょうはお日様出てないから、撮影はちょっと控えめに。
よっぽどいい被写体がない限り、シャッター切るの我慢我慢。
ロディさんは好きなだけ撮っていいって、言ってくれたけれど……。
おうちのお財布事情を考えるのも、主婦のお仕事!
……………………。
……わっ、水田でイモリが、自分の体くらいのミミズ飲み込んでるっ。
手足じたばたさせて、身をぐねぐねよじって……。
ああやって獲物を体の中で潰しながら、時間かけて最後まで飲み込んじゃうんですよねー。
サンショウウオのときはなんとも思わなかったけれど、人間目線で見ると、踊ってるみたいでちょっと面白いなぁ。
に……二~三枚、連続で撮っちゃおうかな……うずうず。
「……サラ? 最近カメラに夢中のようですけれど、ロディの昼食の準備、すんでいますの?」
「あっ、イントさん。おはようございます。今朝はおうちにいませんでしたね?」
「先に質問に答えなさいな。質問に質問を返すのは、愚か者の振る舞いです」
うっ……顔合わせたら即小姑ムーブ。
お尻の穴の写真、さっそく反撃に使っちゃいますよっ!?
「あ……はい。ちゃーんと食パンもチーズもトマトも、カットしてますよ。火を通すのは例によって、ロディさんにお任せですけど……はい」
「まったく、ナリは人間なのですから、いいかげん火にも慣れなさいな。わたくしなんてフェーザント家へ迎えられてから、すぐに火に慣れたものです」
ううぅ……。
どーせ、冬場にストーブの前陣取ったとか、そういう話でしょー!
ネコは家事しなくていいから、気楽ですよねー!
「それで……イントさんは、朝はどちらへ?」
「これでもまだまだ、一花も二花も咲かせられる身ですからね。朝まで帰したくない……という殿方には困っておりません。それ以上の詮索はおよしなさいな」
「へ、へえぇ……お盛んですねぇ。相手に困っていないというのなら、ロディさんのお父様の写真……見なくてもいいですよねぇ? ちらっ?」
「えっ……!? クラウスさんのお写真っ!?」
「夕べ、ロディさんが子どものころに撮った写真をお借りしたんですけど。その中に、お父様の写真が何枚もありましたよー。ガタイがよくて、右頬に長い傷があるワイルドな人でしたけど、目元はロディさんに似てて、優しい印象でしたね」
「右頬に傷……。まさしくクラウスさんっ!」
「そう言えば、一緒にお風呂に入ってる写真もありましたっけ。ロディさんは撮影者なので、残念ながら写ってないんですけど」
「クラウスさんの入浴姿……ごくっ! ちょっとサラ、そのお写真、すぐにお見せなさいなっ!」
「ネコさんはネコさん同士で、仲良くしてるといいんじゃないですかー?」
「うぐぐぐっ……! わたくしは水が苦手なので、あなたと違って、フェーザント家の人と入浴できなかったのですっ! ですから写真を見るくらいは、罰は当たらないでしょう!?」
「へー。火を苦手な人は責めるくせに、自分が水を苦手なのは主張するんですねー。それってちょっとズルくないですかー、義妹さん?」
「ンぎいいぃいいぃ……! わっ……わかりました! しばらくの間、あなたへのお説教は控えますっ! ですからクラウスさんのお写真、見せてくださいなっ!」
「はーい、取引成立ですっ!」
アハハッ♪
ロディさんの写真、意外なところで役に立ちました。
古い写真を見返すと、いいことあるのかもですねー。
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