第012話 初めての朝チュン♪

 ──チュンッ♪

 ──チュンッ♪ チュンッ♪


 ……スズメの鳴き声。

 スズメは、人里に朝の到来を告げる野生の小鳥。

 味は、まだ知らない……。

 わたしが棲んでた沼の周りにはおらず、代わりにこの時期は、ホトトギスが日の出のずっと前から、辛気臭い鳴き声発してる。

 人里の朝は…………鳥の鳴き声すらも明るいんですね、ロディさん♥


「くううぅ……。すううぅ……」


 ベッドの隣りには……タオルケットの中でまだ寝てる、全裸のロディさん。

 そういうわたしも、羽織ってるのはローブだけ。

 つまり、その……。

 わたしたち夫婦は、異種族でありながらも、交尾をきちっとやり終えて……。

 つつがなく、初夜を終えまして……えへへ……♥

 冷たい沼に棲んでたわたしには、ロディさんの体……すごく熱かったわけですが……。

 なにぶん生命力の塊なわたしですから、ロディさんの激しい求愛行動を、すべて受け止められました。

 疲れたり、ちょっとだけ痛かったりも、したけれど……。

 同じくらい……ううん、その何倍もの、満足感と幸福感がありました。

 イントさんは、わたしの体を「結婚できるかできないかのギリギリの容姿」と言ってましたが……。

 わが旦那様は、特に気にする様子もなく、むしろ気に入った様子で、何度も何度も…………きゃっ♥

 あっ……夜遅くまで頑張ってくれた旦那様に、朝ごはんを用意してあげないと!

 起こさないように、そーっと……そーっと、お部屋の外へ……。


 ──カチャ……バタン♪


 ……ふう。

 人間の指、動かすのまだまだ慣れないなぁ。

 包丁を握ったりは、なんとかなるんだけど……。

 ドアノブを回すとか、鍵のロックを外すとか、細かいものをつまんだり回したりするのが苦手……。

 でも、でも……。

 ロディさんがベッドの中で、指の股全部くっつけて両手握ってくれたあれ、すっごく気持ちよかったなぁ……♥

 ああいうのって確か、恋人繋ぎって言うはずだけど……。

 恋人すっ飛ばして、夫婦繋ぎしちゃった!

 アハッ!


「夜通し叫んでたのに、元気そうねぇ……サラ」


「あっ、イントさん。おはようございま……………………?」


「カエルが鳴くのは当たり前だけれど、サンショウウオも鳴くのね。初耳よ」


「きききき……聞こえてたんですかっ!?」


「家の外までは漏れてないから、安心なさいな」


「うううう~! ロディさん言ってくれれば、声我慢したのにぃ……」


「彼も聞きたかったんでしょ。にしてもまぁ……モテるくせにいままで恋人作らなかったの、こういうのが好みだったからかしら……」


 な、なに……イントさん。

 わたしの全身、ジロジロ見て……。

 なんかロディさんが、特殊性癖持ってそうな言いかたしてるし~。


「……ま、彼が気に入ったのならいいでしょう。サラ、今朝はお味噌汁の作り方を教えるわ。早く着替えてらっしゃい」


「あ……はいっ! よろしくお願いしますっ!」


 あの声を聞かれたのは、超恥ずかしいけれど……。

 でもこの家にイントさんがいてくれて、本当によかった!

 いろいろ教えてもらわなきゃ、わたし本当になにもできない子だったもん!

 小姑様様さまさまですっ!


「あ、あの……イントさん。よろしければエプロン着けるのも、手伝ってもらえませんか? わたし、紐を結んだりほどいたりが、ぜんぜんできなくって……」


「わたくしのこの手で、手伝えるとお思い?」


「あっ……。す、すみません……。イントさんのこと、当てにしすぎました」


「……ふぅ。人間には『猫の手も借りたい』なる言い回しがありますけれど、いまのあなたが、まさにそれね。フフッ……」


 あれっ?

 イントさん……いまちょっと笑った?

 なんだかんだで、協力してくれるし……。

 この先、仲良くなっていけそうな気がしてきましたっ!

 はいっ!

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