第011話 憧れの、あの三択!

 ──カラン……カラン……♪


 ……ああ、愛しの旦那様のご帰宅!

 それを玄関で出迎えるは、新妻の最上の喜びっ!

 ドアの施錠、いますぐ解きますね…………。

 ……って!

 うああ……うあぁ……ああぁ……うがあっ……ふぐぬううぅううっ!

 もぉ……人間の指ぃ!

 関節が複雑すぎて、ドアのロック解除も一苦労ううぅ!


 ──カチッ……ガチャッ♪


「ただいま、サラ」


「おっ……おかえりなさいませっ、ロディさん」


「ふふっ……うれしいものですね。帰宅時に、かわいい妻が出迎えてくれるというのは」


「えっ……? あっ、そ……その……。わたしもこうして、ロディさんをお出迎えできて……うれしいですっ♥」


 よ……よしっ!

 ドアを開けるのにバタついたのを除けば、ここまで順調っ!

 あとは、あの……。

 あの秘奥義「新妻三択」を、ここ玄関で披露するのみっ!

 小姑ネコ……イントさんから一応アドバイスも受けて、備えは万全っ!


「あ、あの……。ロディさん?」


「ん?」


 お食事……超ヘタクソだけど下ごしらえ頑張った!

 お風呂……薪と着火剤準備済みっ!

 ……覚悟完了っ!

 い……いざっ!


「野良仕事で、汚れていると思いますから……その……。お、お風呂にしますか? それとも、先にお食事にしますか……?」


「…………」


「……………………!」


 ……ぎゃああぁああぁああーっ!

 「それとも」を、二択の段階で使っちゃったぁ!

 「それとも」は、お風呂とごはんの二択のあとで、「それとも……わ・た・し?」の第三の選択肢として付け加えるのがセオリー!

 何度も妄想した、あの憧れの三択……不発っ!

 盛大に不発っ!

 死にたいっ!

 再生力抜群のボディーだけれど、いますぐ死にたいっ!


「……ははっ、そうですねぇ。サラさんがどういった夕食を用意してくれたのか気になりますから、まずは夕食……ですね」


「あ……はいっ! イントさんのご指導を受けて、下ごしらえ頑張りましたっ!」


「……イントの?」


「あっ、いえ……その……。下ごしらえ中、ずっとそばにいてくれたので、励ましてもらえたような気持ちになりまして……はいっ!」


「ははっ、なるほど。おこぼれを狙っていたのかもしれないですね」


 ……そんなかわいいものじゃなくって。

 ロディさんの好みは、あーだこーだ。

 自分のゴハンの好みは、あーだこーだ。

 初めての包丁仕事を、小姑の口うるさい指導の下で、立派にこなしましたっ!


「あっ……じゃあ、ロディさんがお食事の間、お風呂焚きますね? わたしは湯船が冷めてから、いただきますので」


「いえ、その必要はありません。夕食は一緒に摂りましょう。そして、お風呂も一緒に入りましょう」


「えっ…………?」


「きょうは僕ら夫婦の、最初の夜。食事も、風呂も……寝室も、当然一緒です」


「で、ですが……。わたしは熱いお風呂には、入れませんし……」


「季節柄もう、水風呂も気持ちいいですしね。熱いお湯の代わりに、サラさんが背中を流してくれると、うれしいんですが」


「は……はいっ! ロディさんのきょう一日の汗と泥……。しっかりと、落とさせていただきますっ!」


「頼みます、ふふっ。僕は僕で、サラさんの体をしっかり洗いますから」


「えっ……♥」


「下着……やっぱりちょっと合ってなかった気がしまして。ですから今度は正確に、サイズを把握しますよ」


 そ……それって、ロディさんが……。

 全裸のわたしを、あちこちさわさわしてくるってことっ!?

 で、できればせめてあと一、二カ月猶予をいただければ……。

 バストアップ運動とかで、ちょっとはマシになると思うんですけど~!


「それに僕の体も、サラさんにチェックしてほしいですしね」


「……はい?」


「異種族の夫婦ですから、夜の夫婦生活の相性も、把握しておきませんと。体の相性がよければ、よいのですけれど……」


 えっ?

 ええっ?

 えええええっ!?

 ロディさん……も、もしかして……。

 物質的にも精神的にも、今夜わたしを丸裸にするつもりですか~~~~っ!?

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