第024話 誤算!

「──あっ!」


 記事の中に……わたしの写真!

 わたしの顔が……半分だけ写ってる写真!

 それも……サンショウウオのときの!

 な、なぜ……?


「えっ? えっ? わたし、ロディさんに言われたとおり、真っ先にカメラ奪いましたけどっ!? どうして写真がっ!?」


「恐らく奪った拍子に、サラさんのいずれかの指が、カメラのシャッターを切ったのでしょう。ジャンさんも記事内で、同じ見解を示していますね」


「ええええ~っ! そんな偶然、あるんですか~!?」


「ま、かなりピンボケですし、顔右半分のアップですし、大きな問題はないでしょう。くっきり写っていたら、生物学者やマスコミが殺到したでしょうが」


 ううぅ……。

 騒動にならないのなら、一安心ですけれどぉ……。

 悪い写りでマスコミデビューは、ちょっと……もやもや。


「ところでサラさん。この記事を読んで、僕は重大なうっかりに気づいたんです」


「誤算の次はうっかり……。なんでしょう?」


「かわいい奥さんの写真を、まだ撮っていなかったこと、です。なのでカメラのフィルムも買ってきました」


「しゃ、写真って……。この、人間の姿の……ですか?」


「そうです。いつもそばにいてくれる人を、写真で見返す必要もないか……と思っていたのですが。この新聞にサラさんの写真が載っているのを見たとたん、先を越されてしまったという後悔の念が生まれまして」


「先を越されたのは、サンショウウオのほうの写真ですけど……。アハハ……」


「ま、そういうわけですので。これからちょくちょくサラさんを撮っていこうかと。それではカメラを持ってきますので、ここで待っててくれますか?」


「ええっ!? いますぐ撮るんですかっ!?」


「……いけませんか?」


「いっ……いけませんっ! わたしにとって、人生初の一枚ですから! 万全のコンディションのときにお願いしますっ!」


「ははっ。サラさんはいつだって愛らしいですよ」


「そう言ってもらえるのは、うれしいですけれど……。これでも女性ですから、急に写真を撮ると言われても無理ですっ! すみませんが今夜は田んぼで寝て、泥パックでお肌を癒させていただきますっ! 撮影はあした、お願いしますっ!」


「おやおや。それは残念ですねぇ」


 ロディさんがわたしの写真を欲しがってるの……すっごくうれしい!

 事務所の机に飾って、お客様に「うちの家内です。かわいいでしょう?」なーんて自慢しちゃったりするんでしょうかーっ!?

 ああああ……久々にロマンス系妄想が捗ってますぅ!

 それから、わたしも……。

 ロディさんの写真欲しいっ!

 あした撮ってもらったら、そのあとでカメラ借りて、ロディさん写しちゃおっと!

 偶然とは言え一度、カメラのシャッター切ってるし大丈夫…………。


「……あっ!」


 そうだっ!

 この風景も、田んぼも、写真に残そう!

 冬になったら眷属の卵、春は幼体、夏は上陸の瞬間も撮っちゃおう!

 農家に嫁いだわたしの日誌…………これからつけていこうっ!

 うんっ!

 あ……っと、小姑のイントさん、忘れちゃうところでした。

 アハハハハッ!

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