住宅街のフランス料理店(3)
その店員の女の人は、そっとコーンポタージュを机に置いた。
私はテーブルナプキンを膝に掛け、ポタージュを口に含んだ。料理の味には詳しくないが、バターの味が濃いことは分かった。それにしても、店員は何も喋らない。フランス料理では、料理名を言ってからサーブする習慣は無いのだろうか。それとも、料理の名前など聞かず、料理の味だけを理解せよ、というものなのだろうか。壁の向こうの厨房で油が跳ねる音を聞きながら、そんなことを思った。
ポタージュを食べ終えた頃、ライスと肉料理が運ばれてきた。机に皿が乗る音だけが響く。
肉料理はメインに鶏の手羽元の赤ワイン煮があり、緑の野菜がいくつかと、マッシュポテトが添えられ、その上にはエリンギ、エノキ、舞茸の素揚げが乗っていた。油の跳ねる音の正体はこれだったのか。
再掲するが料理の味は分からないので、美味しく召し上がったことだけをここでは述べておく。マッシュポテトもバター味が強く、寝不足の胃には、少し重たかったかもしれない。手羽元は骨の周りまで丁寧に肉を取って食べた。最後に、隠し包丁の入ったミニトマトを軽く焼いたものを食べ、水を少し飲んだ。
(続く)
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