夢喰い

橘しずる

第1話

 白一色の中にいる

 音もなく、静寂だけが支配する世界

 

 楽しい夢をよく見ていた……優しい家族と過ごす夢や友人と過ごす夢……いろいろ見ていたと思う

 ある時を境に、闇が色を食べる夢を見るようになった

 ある時……私の親が他界してから、49日の法要を迎える頃からだった……私は叔母夫婦に引き取られて社会人になっていた

 私の親は双子の姉を猫可愛がりして、特別扱いしていた

 私は中学生まで、居候扱いで、家政婦扱い……見かねた叔母が養子縁組をした

 叔母夫婦が進学させて、社会人として生きていけるようにしてくれた

 社会人一年生の時に姉が他界した……親が甘やかしし過ぎた為にわがままな性格になり、無理難題ばかりを親に要求するようになった為に父方の身内に預けてしまった

 姉は厳しくされるのが嫌で身内の家を出て行こうとした矢先に交通事故にあった

 姉が他界したことで、親は安堵したのだろう……姉の葬儀に現れることはなく、私と叔母夫婦で姉を見送った

 親が他界したことを聞いたのは社会人三年目の時だ……

 孤独死のような亡くなり方をしたそうだ

 まもなく、49日になろうとしている

 

 

 

「寂しいよ……寂しいよ……」

 遠くから声がする

 私は光の中にいる……色とりどりの色が乱舞する中で、一点を見つめていた

 霧のように黒いものが私に向かって来る……色は黒いものに呑まれながら、消えていく

 身体が動かない……「寂しいよ……寂しいよ……」

 黒いものが私に向かって語りかけているよう思った

 次第に黒いものが辺りを包み込んだ

 黒いものの中に親と姉が苦悶の表情で、私を捕まえようとしている

「お前が幸せになれると思うな……さぁ、一緒に逝くんだよ」

 三人は私にまとわりついてきた……不気味な笑い声をあげながら、黒いものの中に引き込もうとする

 刹那、まぶしい光が私を照らし、黒いものは消えた………白一色の世界の中に私はいた……音もない世界だった

 色と言えば、白と黒だけが見える………親の49日の法要に私は事故に巻き込まれてしまった

 

「良かった……」

 叔父が安堵の表情を見せる

 叔母は私の傍らで眠っていた

「私……」 

「法要会場に向かう途中で、車に轢かれてな 」

 叔父が説明をしてくれた

「もう大丈夫よ……ゆっくりと休みなさい」

 目覚めた叔母が目を潤ませる

 今は家庭を持ち、つつがなく暮らしている

夢の中に亡くなった家族は現れる事はない…私は夢すら見なくなってしまった 

 

 

 

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夢喰い 橘しずる @yasuyoida

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