11話
彼が亡くなってしまっていたなんて。
未だに信じられません。
こんな形で文通が途切れてしまうなんて。
こんなことがあっていいものか。
あの日以来自分の心にぽっかりと穴が開いてしまったような気分です。
何もする気が起きません。
でも、
もしかしたら、
彼も私と同じように生まれ変わっているかもしれない。
そして家に帰って手紙を読むかもしれない。
もうそれが唯一の希望でした。
毎週毎週手紙を出して返事を待ち続けました。
もしかしたら返事が返ってくるかもしれない。
でもそんな希望もある日突然崩れ去りました。
手紙が返送されてきたのです。
宛名不明で。
終わった。
彼との繋がりが無くなってしまった。
自然と頬に涙が伝いました。
悲しくてやりきれないとはこういった気持ちを言うのですね。
本当に辛い。
でも私は生まれ変わった身。
生きなければなりません。
彼のためにも。
彼の分も。
幸い仕事がとても忙しくて、彼の死を仕事中は忘れることができていました。
今日も朝からバタバタで走り回っています。
「今日の具合はどうですか?」
「んーまあまあじゃのう」
「しっかり食べて下さいね」
「あんまり食欲がないんじゃ」
そんな他愛無い会話をしながら仕事を続けます。
えーっと、次の部屋の患者さんは。。。
っと。
あ!
「あ、青山さん!意識が戻ったんですね!良かった!!」
この患者さんは1週間ほど昏睡状態でした。
やっと目が覚めたみたいです。
良かった良かった。
あれ?
なんでそんな変な顔で私を見るのでしょうか。
「青山さん、具合はどうですか?」
患者さんは何も言わず怪訝そうに私のことをジロジロと見続けるのでした。
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