6話
今日であの日から10年経ちます。
私ももう25歳になりました。
中学高校を卒業し、大学にまで入れてもらえました。
好きな仕事に就くことも出来ました。
今の両親には本当に感謝しかありません。
始めは戸惑いもありましたがこの生活にもすぐに慣れました。
今は一人暮らしをしています。
一人暮らしを始めたのが働きだした頃なのでだいたい2年前ぐらいですか。
始めた当初はホント楽しくてワクワクの毎日だったのですが、それも少し経てば寂しさに変わりました。
実家がとてもあたたかい家族だったものですから。
寂しさを紛らわすために夜な夜な見ていたネット掲示板で文通交換相手募集板なるものを発見したのです。
これだ!と思いすぐに書き込みました。
色々返信は来たのですがどれもピンとこなかったりで。
ああやっぱりこんなところに書き込むんじゃなかったとか思っていました。
でもたくさんの返信の中でおひとり誠実そうな方がいらっしゃったのでこの方なら続くかなと思い手紙を送ることにしました。
そこからもう2年。
何気ないやりとりだけですがこんなにも続くものだと思っていませんでした。
私は職業柄勤務体系がまちまちなので返事を週に1回しか書けないのですが、彼はすぐに返事をくれます。
本当にまじめな人です。
この人になら私の本当のことを話してもいいのかなって思いました。
まずは何気ない事から書き始めて。
家の近くにカフェが出来たことを伝えよう。
あとは、今週は夜勤が多くて大変だったと。
でもこと仕事が好きだし、やりがいがあるのでこれからも頑張りたいです。と。
ああ緊張してきたな。
その後も何気ないことを書き続けました。
よし、書こう。
『あなたに聞いてもらいたいことがあります。
あなたならこんな話も信じてくれると思うから。
私は実は一度死んでいます。
その時になぜか同時刻に別の誰かに生まれ変わりました。
だから今の私は心は昔の私で身体は別人です。
こんなこと信じろっていう方が変だと思います。
だからあなたの胸の中にとどめておいてくださいね。
では、また。』
よし、書いた。
送ろう。
これで変な奴だと思われてもう返事が無くなっても仕方ないよね。
でも初めて誰かにこのことを伝えられました。
それだけで何か心の奥がスッとした気がしました。
返事、返ってくるかな。
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