5話
小鳥の鳴き声で目が覚めました。
死ねた。痛みなんて何もありませんでした。
天国だ。
天国にも鳥がいるんですね。
生きていた世界と何も変わりません。
これであの地獄のような日々から解放される。
それだけで心がホッとしましたが、両親には本当に悪いことをしてしまいました。
でもこうするしかなかった。
ふと気づく。
なんだ、天国なのに私はベッドで寝ているじゃないか。
外では鳥が鳴き続けています。
暑いな。
死んでも汗は吹き出るのですね。
ベッドから起き上がりました。
想像してた死後の世界と全然違うな。
どうやらここは女性の部屋みたいだ。
どこかの家でしょうか。
死んだら何をすればいいんだろう。
とりあえずそこにあった手鏡をふと見てみました。
え。
誰?
鏡には知らない女性。
あれ?私?
知らない女性の口も同時に動いています。
自分の顔を触ると知らない女性も顔を触ります。
え?何これ?どういうこと?
私死んだんじゃないの?
気が動転しました。
私が私じゃなくなっている。
死んだら天国では別人になるのでしょうか。
とりあえずテレビをつけてみました。
朝のニュース番組。
いつもと変わらない様子。
あれ?日付??
今日?
テレビから聞こえてくる日時は私が死んだ日でした。
どういうことだろう。
今まで生きていた世界と天国の時間はそのまま続いているのでしょうか。
しばらく呆然としていると部屋の外から声が。
知らない人の名前を呼んでいます。
その声はどんどん近くなってきました。
声の主が私の部屋のドアを開けました。
「なんだ、起きてるなら早く下に降りて朝ご飯食べなさいよ」
見たことのない女性。
私の母ぐらいの年齢でしょうか。
私は目を丸くして女性の顔を見ていました。
「ボーっとしてないで、どうせ昨日夜更かししてたんでしょう」
女性に連れて行かれるように私は部屋から出ました。
朝ご飯を食べながら分かったこと。
どうやらこの女性が天国での私のお母さんみたいです。
天国でのお父さんは先にご飯をたべていました。
生きていた世界では私は一人っ子だったんですが天国では1歳年下の弟もいるみたいです。
そしてこれが一番びっくりしたのですが私、天国でも中学3年生なんです。
すごくないですか?
死んだのに生きていた時と同じ。
生きていた時と同じ?
いや、違う。
名前が違う。
家族も違う。
おうちだって小さな一戸建てだし。
お父さんもサラリーマンっぽいし。
お母さんもちょっとふとっちょだし。
いや、違わない?
私が違う?
私だけが違うのかも?
もしかして私。
生まれ変わってる?
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