第四章 現在につながる

 僕が倒れて意識が戻ってから二日目、今朝もなぜかまた不可思議な夢を見た。

誰かとの初めてのキス、誰かとの結婚。

僕はこの夢に出てくる人が誰なのか、全く思い出せないまま、考えているうちに昼を過ぎることもある。

そんな日々悩んでいる僕に、一人の女性が僕に近づき言ってきた。

「最近おかしな夢を見て、悩んでいるそうだね、翔太さん」

僕はこの人は一体誰なんだろうと思い

「すいません、どちら様でしょうか?」

と訊いた。すると彼女は僕に

「私には名前はないからなぁー」

と言い

「それじゃ、とりあえず私の名前はソラとでも呼んでください」

「はぁ、それではそう呼ばせていただきます」

「それでソラさんはどうして、僕がおかしな夢を見ているって知っているんですか?」

知っているのは限られた人だけなのに、そうやって見知らぬ人が僕が変な夢に悩まされている事を知っていることに驚き聞いた。

すると彼女は笑って

「それは私があなたの案内人だからです」

と言った。

僕は彼女が言った案内人とは、何なのか分からないので聞くと

「私はある人物から、あなたを生かすように頼まれたのです」

彼女はそう言って、戸惑っている僕に話しを続ける。

「あなたは今眠っている間は別の世界に居ます。わかりやすく今居る世界をAと呼び元々生活している世界をBと呼びましょう。あなたはAの世界に居ます。Aの世界に貴方は最近長く滞在し過ぎていて、このAの世界であなたに残されたタイムリミットは後一週間。そのタイムリミットを過ぎると、あなたが生活しているBの世界でも、そのタイムリミットは影響してきます。主にこの世界にずっといる時間が累計百六十八時間を過ぎると、貴方は消えてしまい、Bの世界でも貴方は消え去ります。だからそうならないために、私は貴方の元に派遣されたのです」

僕はそうやって話すソラさんの言葉が分からず、とりあえず質問をしていった。

「えっと、まず消えるってどういうことですか?」

「消えるということは、死を指します。つまりこのAの世界とBの世界の両方で貴方という存在が死んで消えてしまうのです」

そう淡々と話す彼女の話を僕は一旦最後まで聞き、そんな馬鹿な話しがあるわけないじゃないですか言った。

すると彼女は

「それがあるのです、今からよく見ておいてください」

彼女は部屋の壁をすり抜け

「ほらね、部屋の壁なんか綺麗に好き抜けるんですよ。それに見てください。あそこに貴方が病室で寝ているの見えますか、あそこで寝ている貴方は、Bの世界の貴方、つまり本来あんたが生きている世界です。今はこのAの世界つまり生と死の狭間の世界に居るので、こうやって見ることも出来るんです」

「それに今居る世界は、生と死の狭間の世界。だからこの世界で眠っている間に見ている夢は、実際の生きていた時に起こった出来事や、通常ならば貴方が体験する未来の出来事を見ているのです。そして、最近貴方は、未来の夢を見始めた。それは、もうじき貴方に死が近づいている証なのです」

僕は彼女の話と、今さっき見たので僕は確信して、これは本当の話かもしれないと少し思い

「分かりました、あなたの話した事を信じます」

すると彼女は僕に素直でよろしい、と言って何か他に質問はありますかと言った。僕は質問なんですけどと言って

「死ぬっていうことは、本当に帰られるんですか」

と質問したら、ソラさんは

「それは貴方次第ですね、今まだ貴方は記憶を取り戻しきっていない、それに記憶を取り戻そうと変に意識したりしていて、生と死の狭間の世界で過去の記憶にふれ、そのまま未来の記憶にまで触れてしまっている。今貴方が見てきた記憶は約二十六年分。後六十年分の未来の記憶を見てしまうと、貴方に残された時間はもうありません。だから早くこの失った記憶を取り戻すしか、今は貴方が生き残る道はないんです」

ソラさんはそう言った。

僕はそうなんだと唖然としたが、とりあえず現状を一旦冷静に飲み込み、ソラさんに最後にもう一つ質問をした。

「僕が記憶が無いことと、思い出そうとするととても強い頭痛がすることとは、何か関係しているんですか?」

彼女はハイと答えた。だがそれ以上は答えられないといい、本題へと話しが移った。

「今からあなたには一週間以内で元の世界の事を、一部思い出してもらいます。例えばこの間から見ている過去の思い出の夢の内容を見たと思いますが、その夢はあなた自身が元の世界で体験した記憶が夢に出ているのです。そしてそこに出てくる人の名前を一人でも思い出せたら、あなたは元の世界へと戻れます」

彼女はそう言って、僕にまじまじと説明をした。

僕はその説明を聞きある疑問が一つ沸いた。

「思い出すって、どうしたらその、思い出しきるのですか?」

彼女は僕に

「それは安心してください、そこをサポートするのがこの私です。これから一週間あなたの記憶は私と交わした会話や鍵となる記憶は消えません。それに夢に出てきた場所に実際に行くと、結構思い出し切るのですよ」

僕はなるほどと思い彼女の言った夢の中で出てきた場所などに退院してから行くことにした。

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