第三章 記憶と思い出

 僕は病院に入院すること二日目、明日でようやく退院することが出来るようになり、僕はうれしさの反面毎晩忘れてしまっている過去の記憶を夢で見ることが増えた。

誕生日会や誰かとのデート、僕はその相手が誰かは分からないが、そのような夢を見ることが増えた。

一体誰の思い出なのだろうと思いながらも、内心もしかしたら自分のではないかと期待しながらも、毎朝目覚めては病院に入院中は、記憶ノートに日々あった出来事を記入して毎朝目覚めるとみるようにしている。

そんな入院期間中も、過去の記憶は今もまだ、記憶を思い出すことも、新しい出来事も記憶することも出来ない状態で僕はいた。

僕は今日も一人病室でぼーっとしながら、たまに家から持って来てもらった本を読んで、暇で退屈な時間を過ごした。



 翌日ついに退院の日、僕は先生と少し話してから昼前には病院を出た。

ようやく自由に出来ると思うと、退屈だった病院生活から解放され、僕はとても心がウキウキして居た。それに今日病院を退院したので、また明日からまた大学へ通う日々が始まる。

学校での記憶は全く無いが、それで自分なりに少しでも楽しい大学生活を送るために、僕は家に帰ると、とりあえずここ数日、パソコンに打ち込めず記憶ノートに書いていた、記憶をパソコンでWordに書き込んでいき、気づくともう時刻は十四時を回っていた。

とりあえずデータへの書き込みは終わった。僕は少しお腹がすいたので、リビングに行くと母親がお昼ご飯として、そうめんを湯がいて僕が二階から降りてくるのを待っていた。

そんな母親に待たなくても先に食べていても良かったのにと伝えると、せっかくだから一緒にいるんだから食べたいじゃんと言って、食卓テーブルに少し遅めのお昼ご飯の準備をする。準備を終えるとテレビを見ながら二人で、お昼のそうめんを食べて、僕は少しテレビを見てまた自分の部屋へと行き、パソコンで動画を見たりして適当に一日を過ごした。



 朝六時少し前には目が自然と覚めた。

そして、気がついたときにはなぜか涙を流していた。

きっと夢で見た何かだろうと僕は思った。

だけど僕はその夢が何だったかは覚えていない。

僕はとりあえず涙を拭き、スマホを見ると、リマインダーの通知が来ていて、パソコンを確認パスワードは0314と書いてあった。

僕はパソコンに電源を入れ、パスワードを入れロックを解除する。

するとパソコンの通知がピコット表示され、その後メールソフトに赤く一と数字の印がついた。僕はパソコンにメールが届くなんて、きっと今までなかったはずと思いながらも、何のメールだろうと思い、メールソフトを立ち上げ届いているメールを開く。

するとそこには

〈早く目覚めなさい、翔太。

あなたはまだこれからーーなのだから。

だから私はあなたに力を授けます。

早くーーーーにーーなさい〉

と書いてあるなぞのメールが届けられていた。一部文字は文字化けをしているため、全ての文字を読むことが出来ず、重要な部分が分からなかった。だから僕は、一体何だろうと思いながらも、特に気にすることもせず、【橋倉翔太の毎日確認データ】というファイルを開き、中に入っているデータを全て読み終えてリビングへと行く。

リビングに行くとそこには母親がすでに朝食を作って食べていた。

僕はおはようございますと声をかけると

「翔ちゃん、今日は珍しいね、おはようなんて先に言うのは」

僕はそうなのかなと思いながら食卓テーブルの椅子に座ると、味噌汁とご飯、それに目玉焼きを母親は持ってきて

「ほら、ご飯食べな」

と言われ僕は朝ご飯を食べ始めた。

ご飯を食べながら、朝のニュース番組を見ていると

「今日は大学まで連れて行くね」

と母親は言った。

僕はありがとうと言って、朝食を食べ終えると、大学へ行く支度をすませると、母親が運転する車に乗り、大学へと向かった。

 大学へ行く間、僕らは特に喋ることはなかった。

ただ世間話のように、今日は良い天気だねなど、そんな世間話をするくらいで、後は音楽を聴きながら学校へと送って貰った。

大学に着くと学校の入り口に行くと

「翔、おはよう」

と言って近づいて来る男性がいた。

僕はおはようと言い近づいてくる男性は僕に

「それじゃ今日は二限目と三限目に講義があるから、それが終わったらもう今日の講義は終了だぞ」

そう言って彼は二限目の講義が行われる教室に僕を案内し、また後でと言って彼は離れていった。

僕はきっと彼が安藤君なのだろうなと思いながら、二限目の講義を受け、講義が終わり片付けをしていると

「それじゃ、次は教室が変わるから案内するよ」

と言って僕をまた彼は呼びに来ては、次の教室へと連れて行ってくれた。

僕は最後の講義の場所に案内して貰った後に、

「安藤君今日はありがとう」

と言うと彼は別にそんなの言わなくても良いのにと言って、講義が終わったらここで待っていてくれないかと安藤君は言った。僕は分かったと言うと、お昼一緒に食べようと言ってまた後でと言い彼はどこかに行ってしまった。

今日は二限目と三限目の講義を僕は受けた。

大学の講義はなかなか難しい。

僕は一日一日の記憶が無いため、毎日新しい話しをされても、一体何の事を言っているのか全く分からない。それに今自分が何の勉強しているのすら分からない。でも僕はその分からないをなんとか乗り越えながらも、前回メモをしているノートを見ながら、なんとなくだが話しについて行っている。そんな大変な講義を今日も終え、やっと三限目の講義が終わり、教科書やノートをカバンに入れていると

「お疲れ様、翔」

そういって安藤君が僕の所へと来て言った。

僕はお疲れ安藤君というと

「その君付けやめてくれるかな、なんだかきもちわりいよ」

彼はそう言って笑う。

僕は分かったと言って

「それじゃ一緒にお昼ご飯を食べに行こう安藤」

すると彼はそうだなと言って、大学の食堂へと向かった。

食堂に着くと僕らは食券機で何を食べるか悩みながら、僕は黒豚とんかつ定食で安藤は味噌鯖定食にして食堂の係の人に食券を渡した。

すると、すぐに味噌汁とご飯、そしておかずが渡され、僕たちは空いている席を探し、二人でご飯を食べながらゆっくりと話した。

特にこれと言って盛り上がるようなこともなかったが、安藤君が基本的に話し続けてくれたので、僕はとても助かった。

 ご飯を食べ終えると、僕は大学を後にした。

特にその後何か用事があるわけでもないが、少しまた頭痛がし始め僕は早めに家に帰ることにした。帰りは母親が仕事のため、帰り方もいまいち分からないので、スマホの地図アプリを使って、大学のバス停から、家の近くのバス停まで移動し、家の最寄りのバス停からは、少しばかり歩いて、家に帰った。

そんななれない道を1人で歩いている途中、また突如僕にすごい強い痛みの頭痛が襲ってきた。

僕はまた動くことも出来ずに地面に倒れ込みまたどんどんと意識が遠くなり始める。

僕は一生懸命に意識を保とうとするが、到底そんなことは出来ず目の前は真っ暗闇へとなっていった。



意識が戻るまで約一週間昏睡状態だったらしい。僕は眠っている間また誰かの思い出を見ていた。誰かと一緒に遊園地に行って楽しんだり、大学の文化祭や就職活動をしたりなどしたりした様々な思い出を見た。

未だ僕がまだ体験をしていない事を、僕はこの一週間夢で見ていた。

そして僕は一体何だったんだろうと思いながらまた経過観察のため病院に二日間入院を余儀なくさせられた。

入院中ふと思った事があった。

それは記憶というものは、とても不可思議なものだということ。

自分の都合の良いように記憶したり、都合の悪い記憶は覚えないようにしたり、記憶の一部を美化することが、とても不思議なものだと僕はそう思ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る