The Fourth Day

昨日ほったらかしたままの書類をまとめるべく、事務所の方へ行くと既に栞が眠い目を擦りながらまとめてた。


「あ、おはよー瑠果るか

「早いねしおり

「目覚めたから少し早めに起きただけだよ。瑠果こそ早いじゃん」

「まぁね。色々考えてたら起きちゃって」

「へぇ」


栞は再び書類に目を落とす。

ウチは栞の前に座ると、残った書類の半分を取る。

お互いに沈黙という名の集中が訪れる。

ウチは沈黙を破ることが出来ないし、栞は破る気すらなさそう。

書類を見終わったのか、スマホにイアホン繋いでゲーム始めた。

というのも横にしたから。

栞がそうする時は大抵ゲームだからなぁ。

ウチは残り数枚となった書類に目を通すと、パソコンを開いて昨日作った時系列順に並べたワードに今回の捜査で分かったことを付け足す。

それと、今日は田島に聞きに行くことがありそうだね。

原田っちに電話しとこ。

スマホを持って席を立つと栞から少し離れた位置に来て電話をかける。

2,3コールすると出てくれる辺り優しいよね。


『はい。原田』

「あ、石川です。原田警部、今いい?」

「え!?原田っち!?」


栞はイアホンを無造作に外すとウチのスマホに耳を近づける。


『全然構わんぞ』

「今から田島さんの事情聴取は可能?」

『可能は可能だが・・・・・・。何故だ?』

「色々浮かび上がってきた点があるので」

『分かった。じゃぁ、今から来てくれ。待ってる』


そう言うと原田っちは電話を切った。


「瑠果、行こうか」

「ジャケットまで着てウキウキだね。待って。ウチも準備する」


軽く髪を整えてジャケットを羽織ると外に出た。

栞が小刻みにジャンプして寒さを忘れようとしてる。

まだ幼いなぁ。

目をキラキラさせて何かを仕掛けようとしているときの顔だ。


「ねぇ、久々に勝負しない?」

「え?」

「警視庁まで」


競争というのはそのままの意味だ。

単純な体力作り。

ウチ、あんま走るのは好きじゃないんだけど・・・・・・。

仕方ない、ここは走ってあげますか。


「分かった分かった」

「やった、じゃぁ瑠果先走ってていいよ。事務所の鍵閉めてくるから」

「いいの?」

「いいからいいから」


ウチと栞の走力は五分。

つまりウチに先行させれば栞が圧倒的不利になることは違いない。

でもまぁ、栞はなんか企んでそうだから先に走らせてもらいましょうか。

ウチは全力ダッシュで警視庁めがけて走る。

警視庁までこのスピードで行けば3分かからない。

しかもほとんど信号がない上、ウチが勝負で手加減するわけがない。


「一体何を考えてるのか・・・・・・」


警視庁が見え、そこに向かって一直線。

最後の難関、信号を渡って後方に栞が居ないのを確認して勝利を確信した。


「着いたー。流石に疲れる・・・・・・」

「遅かったね〜、瑠果」


ん?

なんか居る!?


「え、え、え、栞!?」

「ヘヘン。さすがに私が勝つよ?もう少し距離が短かったら危なかったけど。信号の都合も良かった」

「栞、あんたまさか・・・・・・」

「その通り。車で来た」

「・・・・・・卑怯者」

「ん?私何で勝負って言ってないけど?」


あの発言でよく言ってないって言えるよ。


「とりあえず、原田っちのところに行こうか」

「そだね」


今のことは忘れて切り替えて行こう。


 ◇◇◇◇◇


「よう、来たか。速かったな」

「ま、まぁ」

「瑠果と競争したからね」


あぁ、もう。

その事は今はいいでしょ!?


「と、とりあえず、既に準備してある」


ウチのオーラを感じたのか苦笑いしながら原田っちは招く。


「ここだ。時間は15分。それくらいあれば十分だろう」

「ありがとうございます」

「事情聴取って、一応もう事件は解決だろ?他に調べることは無いはずだが・・・・・・」

「色々気になって調べたらホコリのように出てきまして」

「ほう?」

「まぁ、聞いててくださいよ」


ウチは栞を残して中に入る。

中で取り調べをしていた警察官と入れ替わった。


「・・・・・・今度は何です?」


重く垂れ下がった前髪から除く眼光。

それは確実にウチら捜査側を軽蔑している目線だった。

また、その目線には私は無関係ではないけどこの殺しはやってないという強い意志が含まれていた。


「・・・・・・今からするのは過去の話です。ですから覚えてないなら覚えて無くて結構です」


おそらく心当たりがあるのだろう。

ビクッと肩を震わせる。


「数十年前、中学生5,6人が殺害される事件が起きました。そこにおいて、稲さんの遺体を、いや葬儀で埋葬せずに裏であなたが引き取ったと元住職から聴きましたが・・・・・・それは何故ですか?」

「・・・・・・私の身の安全を保証してくれるなら話します」

「もちろん。警察の名にかけて」

「それは信用して良いのですか?」

「はい」

「では・・・・・・あの日、私はとある人によって呼び出されたのです」

「とある人?」

「名前は本当にわからないんです。本当です・・・・・・」

「分かりました。じゃぁ、その人をXとして下さい」

「はい。Xに稲を埋葬前に引き取り、私に送るように言われました」

「・・・・・・何故ですか?」

「知らないです。でも、その数週間後に稲が生き返ったのを見て、その人が只者じゃないと分かりました」

「その後、あなたは?」

「その後私は高校、大学と卒業し、今の職業に。それであの場所に私はXに呼び出されていたんです。それは本当です」

「なるほど。分かりました」


そろそろ15分か・・・・・・。


「ちなみに、Xについて何か知ってることはありますか?」

「特に無いです。私がXに接触したのも3回です。1回目は葬儀の前、そして稲の遺体をわたし、この前の久々の電話です」

「分かりました。ありがとうございます」


ウチはそう言うと取調室を出る。


「瑠果〜。おつかれ」

「流石、石川ってところだな」

「まぁ、色々情報があったから。栞の書類まとめのおかげでもある」

「へへへ、奢って」

「嫌です」


なんですぐ奢ってになるの?


「それじゃ、栞。帰って書類まとめ再び」

「は〜い。じゃぁまたね、原田t・・・・・・警部」


何回目だよ原田っちって言いかけたの。


「ん、またな。また何かあったら言ってくれ。ヘリの要請はもうしないけどな」

「必要だったらまた頼むね」

「なんでヘリが毎度必要なんだよ」

「気分?」

「(気分でヘリを使うな・・・・・・)」


原田っち、なんか言ったかな?

よく聴こえなかった・・・・・・。


「それじゃ、ウチらはこれで」


栞が行きに乗って来た車に乗り込むと事務所に向かって発信した。


 ◇◇◇◇◇


「何をまとめればいいの?」

「今回の事情聴取で分かった点と、浮かび上がってきた疑問点」

「おっけ。じゃぁお互い作業に移ろう」


栞と書類を分担するとウチはPCを開いて照らし合わせる。

栞は自分の手帳を見てやってる。

約2時間後。


「「終わった〜・・・・・・」」


一旦ブレイクタイムということで。

ウチは最近発売されたス◯ラ3を。

ス◯ッチのスティックが壊れてやりにくいけど。

栞の方はスマホで◯神を。

そして休憩は1時間半。

お互いに時間を忘れていたのが原因ですね。


「で、お互いに情報を共有しようか」

「そうだね。私から。まず分かった点は黒幕が居る。その人はとてつもない科学力もしくは裏世界のなにかがある。浮かび上がってきた疑問点は何故稲さんなのかってとこ」

「右にほとんど同じ」

「他になにかあるの?」

「何故稲さんなのか、と同じでなんで田島さんに頼んだのか」

「確かに同じようになんで、ていうのが浮かび上がってくるね」

「ねぇ、私思ったんだけどさ・・・・・・この事件って・・・・・・」

「そうだね。奇遇にもウチもそう思った。この事件・・・・・・」


「「相当ヤバい」」


「フフフ・・・・・・一緒にいる時間が長いから同じように考えるんだね。具体的には黒幕の存在だね」

「だね。黒幕だけじゃなくてその実行法も。人権なんておそらく無視。それを解くのが私達の役目だよね?」

「そう。でも突入とかは原田っちたちの仕事。あくまで解くまでが、ね」


ウチらはお互いの顔と役目を確認すると、捜査に尽力を尽くすべく机に再度向かった。




≪The Fourth Day was Finishing, And To The Next Story...≫

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る