The Fifth Day(1)

≪Change the View≫ 三人称視点


深夜2時22分。

動き出す影が2つ。


「行くよ」

「はーい」


小声で動き始めたのは探偵とその助手。

名前は探偵の方が石川瑠果るかで助手の方が大田しおり

いつもと同じようにワイシャツにネクタイ、ズボンと黒のジャケット。

行く先は警視庁。

彼女らもまた、冥界について何も知らないのである。

過去には安城閑華について話したが・・・・・・。

今回の死神のターゲットは、彼女らのようだ。

死神は前回の屈辱を覚えている。

一撃で葬らなければならない、と。

死神とて人ではないが、勉強する生き物である。

いや、生き物と呼んでいいのかは別として。


「ねぇ、なんか今日、霊感を感じるんだけど」

「怖いこと言わないでよ。ウチ、ホラー無理なんだって」

「ごめんって。でも本当に霊感感じるんだよね・・・・・・」

「怖いから」


死神はその発言を聞き、距離を取る。

そして動揺していた。

今までプロの殺し屋相手にもアサシン相手にもバレなかった自分の存在がバレかけたのに動揺しているのだ。

警視庁に着いた2人はそれぞれ原田警部に挨拶をすると、朝早いがヘリで飛び立つこととなった。

生憎にも昨日の夜から降り始めた雨が今は土砂降りとなっており夜間飛行には向かない天気だ。

また、風も強く、最悪の天気と言えるだろう。

だが、彼女らは飛ぶのだ。


「原田t・・・・・・警部。そんな顔しなくてもいいじゃん」

「そ、そ。そんなんじゃまるでウチらが死に行くみたいじゃん」


まさにそのとおりである。


「いやいや、こんな危ない中飛ばせて心配しないわけ無いだろ。なんかあったらすぐに連絡してな」

「分かってるって」

「恥とかは気にするな。まぁすぐに連絡してくれると信じているが」

「まぁね。些細なことでも連絡するよ。日の出が見えたとか」

「そんなんで連絡せんで良い!」


的確なツッコミが入る。

死神は軽くフッと笑う。


「じゃ、行ってくる。今回は富◯急行く暇なさそう。ってことで行ってくる」

「そうだな。雨だしな」

「グヌッ!?」

「バレバレだ」

「そういう事は分かってても訊かないやつでしょ」

「ハハハ。早くいかないともっと風が強くなるぞ」

「瑠果、乗って」

「・・・・・・はい」

「かなり嫌々に乗るな」

「まだ話し足りないから。まぁ行ってくる」

「いってらっしゃい」


原田警部に送られて飛び立つ3人。

石川、大田、そして後部座席に乗っている死神だ。


「不気味な空だなぁ。というか風に流されてるなぁ」

「それ、大丈夫なの?墜落しない?」

「そんな心配すること無いって」


大田は操縦桿を握ると右に旋回する。


「う〜ん。雨風がつよいなぁ。視界が悪い」

「それはしょうがないでしょ。というか誰だよ、こんな天気の中深夜に飛び立とうって言ったの。お陰で寝不足なんだけど!?」

「まぁまぁ。どうせ行くのは同じなんだから。瑠果は寝てていいよ」

「あ、じゃぁお言葉に甘えて」


石川はシートを傾けて寝始める。

操縦桿を握り直した大田は石川が寝たのを確認すると速度を上げ始める。

さて、この先は誰もが想像できる展開だ。

雷雨の風の強い日。

そんな中金属の箱が空を高速で飛ぶ。

そう、それを意味するのは―――――死神の怒りの一撃。


「―――――え?」


雷。


「――――――!!」


白い光に包まれ・・・・・・。


ドゴォォォォォォン


遅れて響く雷鳴。

わずか数秒の出来事であったが・・・・・・。

その威力はヘリの稼働力を殲滅させるには十分の威力であった。


「クソッ」

「ん〜・・・・・・どうした栞〜?」

「墜ちる」

「え?」

「しっかり何処かに捕まって」


大田はヘリの扉を全開にして眼下を眺める。

眼下には黒く染まった海が広がっていた。


「瑠果、起きた早々悪いけど、死ぬ覚悟はできてる?」

「え?・・・・・・マジ?」

「マジです」


死神は鎌を振り上げた。

雷で死ななかったのも大したものだ、と嘲笑ちょうしょうした。

この上空4000メートルの高さから落ちたら確実に死ぬか苦しむかの2択。

逆に飛び降りなければヘリと共に運命をたどるのみ。

死神は確実に殺れる方法で標的ターゲットを殺す。

その方法は問わない。

人知を超えた力を有している。

例えそれがまだ未熟な少女達だとしても。


「えっと・・・・・・V=gtだから・・・・・・距離4000メートル・・・・・・」


死神は笑う。


「28秒くらいで今10秒くらい経ったからあと18秒だね」

「流石。ギリギリで飛び降りるよ」


その理由は簡単だ。

水は一見着地が楽そうに見える。

だが、皆も知っての通り、ある一定以上だとその硬度もコンクリートより固くなる。

そのため、一瞬で体を粉砕される。

最高秒速が280メートル毎秒に達する中、彼女たちは図ったかのようなタイミングで飛び降りた。

ものすごい動体視力である。

そしてその場で爆破と爆風が巻き起こる。

水しぶきの嵐が起こる中、彼女らは見事合流できた。

死神は嘲笑う。

そしてフッと微笑むと”大した奴らだったよ、お前らは”と言いながら鎌を振り下ろした。

が、死神は違和感を覚えた。

手応えが、ない。

辺を見渡すが居ない。

そして死神は溺れたのか?

と思った。

死神は帰るべく踵を返して視界に映ったものに驚いた。

向こうに居るのは――――――。


「お〜行け行け〜」

「ウチはボートじゃないっつの」

「まぁまぁ、そんな事言わず」


石川がものすごいスピードで泳ぎ、その上に大田が乗っている絵面としては最高に面白い。

だが、死神は屈辱を覚え、”またいつか、絶対に殺す”と言い残して帰って行った。



≪Change the View ≫ 石川瑠果視点


疲れた・・・・・・。

栞はウチのことなんだと思ってるんだ。

ボートじゃないっつの。


「原田っちに電話したら呆れられた」

「・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」


栞のせいで落ちて栞にこき使われてこうなっているのにどうしてこんなにメンタル強いんだろ。

不思議でしょうがない。

てか帰りどうするのよ・・・・・・全く。

体力回復してきたところで聞きに行こう。

田島さんが言っていたその住職に聞きに行く。

その調査については事前に原田っちがやってくれたからもうウチらがやる必要性はないね。


「い、行くよ・・・・・・」

「あれ、瑠果どうしたの?」

「(・・・・・・あれ、もしかして自分のせいという自覚がない?)・・・・・・何でも無いよ」

「じゃ、行こっか」

「そうだね・・・・・・」


ウチらは原田っちからもらった地図を参考にして歩き始めた。



「どちら様ですか?」

「私達、警視庁から派遣されたこういうものですが」

「あぁ、あぁ。遠いところからよくいらっしゃいました。どうぞ中に」

「ありがとうございます」


中から結構年を取った男性が出てくる。

彼の名前は加藤。

そして3日前に行った加藤、とは違う加藤。

というのも、葬儀を実行するときにだ。

中に入ると私達は早速質問を始めることに。


「数十年前に起こったことなんですけど、あなたは住職を務めていましたね?」

「はい」

「その時に遺体をすり替えてほしいという要望が1件ほどあったはずです。それについて教えてほしいのですが心当たりありますか?」

「ん〜?」

「こちらに資料は用意してあります」


ウチは懐から紙を取り出す。

実は最初からヘリが墜ちるかもって想定しといてよかった。


「少し待ってくれ」


そう言われてウチらは彼が読むのを待つことにしました。


「あぁ、よく覚えてる。これは。話したほうが良いかね?」

「えぇ。事件解決につながると思いますのでお願いします」

「分かった。私が彼の葬儀を受け入れて数日後、田島という人が訪ねてきたんだ。それも尋常じゃない様子で。内容は遺体を入れ替えてほしい。私は耳を疑った。今までそんな事を言った人は居なかったからだ。何に使うのか訊いても知らぬ存ぜぬ。私は金の交渉で了承した。それがまずかったのかもしれんな。その後は言われた通り葬儀で入れ替えて渡したというわけだ。これで十分かね?」


私達は驚きのあまり固まっていた。

先日の書類まとめである程度情報が頭に入っていたからだ。

それを考えると、それをした人の目的は――――――。

そしてそんな事を有無を言わさずに実行できるのは――――――。

あの人しかいない。

そしてそのまま放っておくと次に出る行動は―――――!!!


「「―――――――!!!」」


ウチと栞の行動が重なった。

一刻も早く行かなければ。


「「あ、ありがとうございました。私達はこれで失礼します!!!」」

「お、おう。気をつけてな」


ウチらは一目散に家を飛び出すとその人の家に向かって走り出す。

栞はその黒幕に、ウチは原田っちに急いで電話する。


”只今電話に出ることが出来ません。ピーという発信音の後に・・・・・・”


「「クソッ」」


お互い電話に出ないようなので、ウチらは更に速度を上げた。

大事になってないと言いけど・・・・・・。

そう祈った。




≪The Fifth Day (1) was Finishing, And To The Next Story...≫

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