The Second Day (1)

「事件解決したし、今日は一杯飲む?」

「ん〜・・・・・・そうだね。じゃぁ、セブンで買って行こうか」

「はいはい〜」

「そう言えば栞って酒癖が悪かったような・・・・・・?」

「ん?そうだっけ?」

「・・・・・・」


本人はおそらく記憶にないだろうけど、ウチはちゃんと覚えている。

この前も結果的にウチで酔い潰れて一晩リビングで寝てたことを。

他にも色々有るけど、栞の人権のためにこれ以上は話さないでおこう。


「さてさて、帰ろ」


セブンで買い物を終え、事務所の方へ急ぐ。

ちなみに事務所がウチの家でもある。


「あれ?」


事務所の前に来て気が付いた。

来客だ。


「お、珍し」

「そういうこと言わないで。傷付く」


地味に傷んだウチの心の傷をなだめながらその扉の前に居た人に声を掛ける。


「あの、原田愛好探偵事務所ウチに何か用ですか」

「・・・・・・あ、えぇ。そんなところです」


その人はこちらに気がつくと笑顔で返答する。

この笑顔・・・・・・どこかで・・・・・・。


「どうぞ中に」


いつの間にか事務所の鍵をウチの懐からひったくった栞が事務所の扉を開けながら言う。

――――ったく、いつの間に奪ったのよ?


「ありがとうございます。ですけれど、鍵をひったくるのは良くないと私は思いますよ」

「あ、すいません」


栞がなんの感情もこもってない笑顔で謝る。

ウチが気付かないのに依頼人側の人が気付くなんて・・・・・・。


「栞、お茶を出して」

「は〜い」


奥の部屋へ慣れた手付きで入って行った。

そしてウチとその人はテーブルを挟んで向かい合うようにソファーに座る


「まず、あなたの名前を伺って宜しいですか?」

「はい。私の名前は安城閑華あんじょうしずかです」

「・・・・・・安城・・・・・・!!」

「・・・・・・閑華・・・・・・!?」


なんか漫画にあるようなシーンになってしまった。

ウチはその場で硬直して名字を言い、栞がお盆にコップを乗せた状態で硬直して下の名前を言った。


「はい。依頼というより、少し質問に」

「・・・・・・。質問ですか?」

「えぇ。あ、ありがとうございます」


栞がお茶を置くと軽く会釈をする。

そのまま流れるように栞はウチの隣に座る。


「それで、質問というのは?」

「えぇ。今回、稲という人が殺害されましたよね?」

「え、えぇ。まぁ」

「その人、私が昔担当した事件で既に死んでいるんです。なのに何故生き返ったのかが不思議でしょうがないんです」

「あなただったんですね。過去の事件を担当したのは」

「えぇ。その時のことについて聴きたいですか?」

「はい。是非」


ウチが答えるよりも速く栞が答えた。

ウチはその場で同意を示すように頷く。


「それでは。あれは雨の日のことでした―――――」

(作者注:『安城閑華の1週間』のThe Third Day を御覧ください)


そんなことがあってからあの事件があったのか・・・・・・。

普通に怖い。

どうやって生き返ったの?


「それはねぇ、きっと彷徨った霊が死にきれなくてもう一回現世に帰って来たんだよ。ほら、瑠果の後ろにも・・・・・・・・・・・・」

「ギャァァァ」

「ハハハ、冗談」


ウチ、本当にホラーは無理なんだって。

心臓に悪い。

寿命が縮んだ・・・・・・。


「あのー・・・・・・?」

「あぁ、すみません。えっと、それで一体何を聞きに来たというのですか?」

「そうでしたね。本当に稲さんは死んでいたのかということと、もう一つは依頼を」

「はい。依頼ですね」


栞はしっかりとメモを用意する。


「もし、稲さんが本当に昨日生きていたとしたならば、どうやって生き返ったのかの調査をお願いします」

「わかりました。栞、書いた?」

「はー・・・・・・い。書けました」


栞が書いたのを確認すると、お互いの連絡先を確認して安城は帰って行った。

すると、栞が何処からか取り出した缶ビールを机に並べる。


「ま、今日は飲もう」

「そ、そうだね」


その笑顔に嫌な予感が走ったのは気の所為ということにしておこう。


 ◇◇◇◇◇


朝起きると頭が痛かった。

風邪ではない。

ウチはかなりお酒に強い方だが、栞の方が遥かに強い。

そして酒癖が悪い。

そう言えばもうお分かりだろう。

散々飲まされもうその先は記憶にない。


「イテテテテ・・・・・・」


重い体を起こして事務所へ向かう。

気を入れ替えて行こう。

うっ、頭痛い。


「おはよー」


元気そうでいいなぁ。

ウチはもう頭痛くてなんて言えばいいかわからない。

『おはよう』なのか『おやすみ』なのか。


「あれ、瑠果、調子悪そうだね。どうしたの?」


どうしたの、じゃねぇよ。

今ウチが調子悪いのは昨日の夜、栞が飲ませたせいでしょうが。


「あぁ、うん。ちょっと、うん」


なんて言えるはずがなく。


「とりあえず、調査に行こうか」

「そう、だね、ウッ」


マジで頭痛い。

よくあんなに呑気に準備できるよね。

準備をすること約15分。

髪型のセットに10分を費やした。

触覚ありの前髪に後ろはポニーテール。

これくらいならいつもなら5分あれば出来るんだけど・・・・・・。

そしてジャケットを羽織って外に出る。

昨日の雪で足元が滑りやすいから気をつけないと。

まず最初に行くのは警視庁。

過去の事件データーが残ってるはずだから。


「最初に行くのは勿論警視庁だよね?」

「はい。過去の事件データーを見に行く」

「だよね〜原田っち居るかな〜?」

「(今日に限ってテンション上がらない・・・・・・)」

「ん?何か言った?」

「何も?」


何も言ってないことにしとかないと原田っちのこと嫌いって認識されそうだな。

別に恋愛対象としてみているわけではなく。

――――って、そんな事をここで話す気は皆無だ。


 ◇◇◇◇◇


「昔の事件データー?」

「そうそう。あるでしょ?」

「もちろん。あるけど、どの程度昔のやつだ?」

「稲さんが前回殺された時のこと」

「その事件データーなら今捜査一課が持ってる。というか持ってくる」


原田っちはウチらの話を聴くと、そのまま一課の方へ歩いていった。


「ちなみに、どういうデーターが出てくればパーフェクトなの?」

「何を以てパーフェクトというのだろうか・・・・・・。まぁ、前回の死因としたいの保管場所さえ分かればオッケー」

「なるほど。それなら速く分かりそうだね」

「まぁ、そしたら死体の保管場所へ凸るけど」

「凸るんだ」


栞が苦笑いする。

まぁ、今はそんな気力ないんだけど行くしか無いか。


「持ってきたぞ〜」


ファイルを持ってきたのをウチはそのままひったくる。


「「え〜っと、死因は・・・・・・」頸動脈損傷による出血死」


ウチより先に栞がその場所を見つける。

次は死体保管場所。


「遺族によって引き取られた、と」

「じゃぁ、そこに行けばいいんだね。住所は?」

「あとでメールで送るから」


原田っちはそう言うとスマホを取り出す。

普通は機密情報だから公開できないけど、事情が事情だからわかってくれてるね。


「栞、今から行くって言ったらもちろん行けるよね?」

「瑠果こそ。朝から調子悪そうだったから」


それは半分以上瑠果のせいでしょ。


「じゃぁ、駅に向かいますか」

「車出そうか?」

「いいよ。電車のほうが早いし」


正直、車より電車のほうがいいし。


「おし、じゃぁ駅に向かっとけ。メールしとくから」


そういうことでウチ達は駅に向かった。

メールが届き、親切なことにどうやって行けばいいのか書いてくれてる。

流石原田っち。

電車に揺られること約40分。

駅を降りて徒歩10分ほど。


「はい。どちら様で?」

「私、探偵ですが、今ある事件を追っているもので情報をいただけないでしょうか?」

「えぇえぇ。勿論です」


ありがたいことに潔く受け入れてくれた。


「まずお訊きしたいことは、稲さんは警察から遺体をもらってどうされたんですか?」

「そうですね・・・・・・。確かその後すぐに葬式を」

「なるほど。その後はもちろんお墓に?」

「はい。そうです」


ウチと栞は顔を見合わせる。

というのも、そこで埋葬してしまえばもう二度と出てくることは出来ないからだ。


「後、しばらくして稲さんについて訪ねてくる人は居ませんでしたか?」

「居なかったと思います」

「そうですか・・・・・・ありがとうございました」


ウチと栞は外に出ると手帳に情報を書き込む。


「でも、おかしくない?」

「ね、ウチも思った。埋葬されてるならもう外に出れなくない?」

「ね。じゃぁ、どうやったんだろ」

「それを調べるのが私達の役目ってところじゃない?」

「そうだね」


正午に近づきつつある時計から目を離すと、雲の切れ間から太陽が覗いていた。




≪The Second Day (1) was Finishing, And To The Next Story...≫

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